オーバーロード 拳のモモンガ   作:まがお
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帝国の統治

 残っていた肌寒さも消え、街を行き交う人々は暖かな春を満喫していた。

 現在、元リ・エスティーゼ王国の領土では、帝国による穏やかな統治が行われている。

 それが何を意味するか――王国と帝国の戦争は半日とかからず決着したのだ。もちろんバハルス帝国の圧勝である。

 二十万を超える人数が参加した戦争にもかかわらず、死傷者は四桁にも届いていない。ちなみにその犠牲も王国側だけだった。

 フールーダ・パラダイン率いる魔法部隊による空からの爆撃――指揮官のみを強襲するという大胆な作戦によって被害は最小で済んだ。

 そもそも大半の帝国兵――魔法部隊以外は戦ってすらいないので無傷だ。

 帝国との交渉の席で、国王のランポッサ三世は自らの命と領土を引き渡す事を宣言する。そして、それを条件に親族と残った民の助命を嘆願した。

 しかし、皇帝ジルクニフはそれを突っぱねる。

 

 

「貴様の首などいらん。私の手によってこの国が生まれ変わるのを黙って見ているがいい」

 

 

 六大貴族を含めた貴族達は全ての領土と多くの資産を奪われたが、命まで取られた者は少なかった。

 その少ない内の一人は、総指揮官として真っ先に爆撃されたボウロロープ侯。

 そして、裏で王国を裏切り、帝国に情報を流し続けていたブルムラシュー侯だ。

 

 

「もうすぐ私の十九歳の誕生日だ。血生臭い事は遠慮しよう」

 

 

 流石に国のトップがそのままというのは怪しまれたが、取ってつけたような理由――ある意味恩赦に近い形をとり、王族で処刑された者はいなかった。

 それどころか貴族の中には一度帝国の領土となった上で、再び各都市の統治を任される者までいた。

 税は軽減され、横暴な貴族は全て消え、真っ当な貴族のみが役人として要職に残る。敗戦国としては破格の待遇だ。

 元王国民の間でジルクニフは慈悲深い皇帝だと話題になり、爆発的に人気が上がっていくのだった。

 

 

「それにしても、あのような対応で良かったのですか? 王族を処刑せず全て残すというのは流石に…… 鮮血帝と呼ばれた陛下にしては少々手ぬるいかと」

 

「私はそんな血生臭い名前の男は知らないな。せっかくのイメージを壊さないでくれ。今の私は慈悲深い皇帝だぞ? それに――」

 

 

 絶賛大人気のジルクニフは執務室で軽口を叩きつつ、部下とともに仕事に励んでいた。

 部下の物言いは失礼とも言えるが、このくらい言えなくては自分の部下足り得ないと考えていた。

 

 

「――死んでしまえばそこで終わりだ。民の不満を生きながらに受け止めて貰わないとな」

 

「前言を撤回致します。手ぬるさなど欠片もありません」

 

 

 不満は死んだ者より生きている者に向かいやすい。要は国王に死んで責任を取らせず、生きたまま不満の捌け口になってもらったのだ。

 また、ジルクニフが王族や貴族を処刑しなかったのは統治しやすくする為――新たな民に自分のイメージを印象付ける目的もあった。

 他にも自分が帝位を継いだ時、粛清のしすぎで文官の不足に悩まされた事など複数の理由がある。

 

 

「元第一王子が何やら王国の元貴族達、それから帝国の没落貴族と集まって動いている様です。如何されますか?」

 

「ああ、なんという事だ。慈悲をかけたのに裏切られるとは……」

 

「お戯れを、全て陛下の掌の上でしょうに。それで、どの様な対応を?」

 

 

 わざとらしく芝居がかった声を出してみるが、部下は平然と応えるのみだった。

 自分も笑みを消し、淡々と指示を出す。

 

 

「全員捕らえて処刑せよ。口にするのも憚られる罪状を添えてな」

 

 

 戦争に負けたからではなく、罪人として裁くチャンスをくれた馬鹿には感謝しよう。

 これなら慈悲深い皇帝というイメージを崩さず、邪魔な物をまとめて処分できる。

 王国と帝国では扱いが違った為、奴隷制度や幾つかの法については若干の問題が残っている。しかし、それも些細なことだ。元王国民もいずれ慣れるだろう。

 

 

「私の代でどこまでいけるか…… 我が国のこれからの繁栄が楽しみだよ」

 

 

 歴代のバハルス帝国皇帝の中でも、史上最高と言われている皇帝――ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは、着実に元王国領の統治を盤石なものにしていった。

 

 

 

 

 モモンガがこの世界に転移してから丸二年が経過した。

 ゲーム風に考えるなら総プレイ時間は一万七千時間オーバー。廃人もビックリなやり込み具合だ。期間は全く違うが、既にユグドラシルでのログイン時間より長い時間を過ごしている。

 異世界生活三年目ともなると、段々と落ち着いて将来を考えるようになった。

 自分の事もそうだが、やっぱり気になるのはツアレについてだろう。

 

 

(子供の成長って早いよなぁ。俺は骨だから全く変わらないけど)

 

 

 彼女ももうすぐ十五歳になる。この世界ではほとんど成人に近いだろう。

 まだまだ危なっかしく思う時もあるが、ツアレは自立しようと毎日頑張っている。

 精神的にも強くなり、初めて会った時から身長も随分伸びた。

 大人びてきた部分がある反面、自分に対してのあまり変わらない態度を見ると嬉しくなる。

 

 

「どうですかモモンガ様。銅貨です!!」

 

 

 泊まっている宿の一室で、ジャラジャラと容器の中身を見せてくるツアレ。

 えっへんという擬音の似合う胸の張り方で、ちょっぴりドヤ顔をしている。

 帝国に統治されるようになってから、エ・ランテルなど街の治安も良くなり、景気も右肩上がりだ。

 吟遊詩人として活動していたツアレも、今までが嘘のようにお金が貰えるようになっていた。

 

 

「今日も凄いじゃないか。もう立派に吟遊詩人としてやっていけるな」

 

 

 吟遊詩人として初めてお金を稼いだ日、ツアレは今と同じようにモモンガに稼ぎを見せてくれた。

 喜びを共有――いや、自身の成長の証として伝えたかったのかもしれない。

 ささやかな恩返しのつもりか、その日ツアレは料理を作ってくれた。

 初めて自分で稼いだお金で材料を買い、彼女が振舞ってくれたのはじゃがいものシチュー。

 あれが家庭の味というものだろう。エモット家でご馳走になった時と同じように、とても温かい気持ちになったのを今でも覚えている。

 

 

「えへへ、でもまだまだです。一人で暮らしていくにはもっと稼げるようにならないと!!」

 

 

 最近ふと思った。ツアレはもう半分ほど夢を叶えたのではないだろうか。

 彼女の語る物語は人々を笑顔にしている。

 他の誰もが経験したことのないような冒険――自分だけの冒険譚を伝えている。

 冒険者の話を聞くことで、なかば創作に近い物語も作っている。

 あと彼女に足りないのは現実的な部分――生活力だろうか。

 実際今の稼ぎだと、一人で生活するには家賃だなんだと考えると少し厳しいだろう。

 

 

「ああ、そうだな。冒険者を雇ったり、経費を考えるともう少し欲しいかもな」

 

 

 でも逆に言えばそれだけなのだ。

 ツアレはもう読み書き計算などは十分に出来る。これからはどうなるか分からないが、王国だった頃の識字率を考えると、普通にどこでも働けるレベルの学力はあるはずだ。

 普通の仕事と吟遊詩人、二足のわらじを履くという事もあるかもしれない。

 

 

「そこなんですよね。モモンガ様に貰ったマジックアイテムがあるから、楽器とかにお金は使わなくて済むんですけど…… やっぱりネタ集めには少しお金がかかります」

 

「まぁ、どうやりくりするかは自分で考えてみろ。結構重要な事だからな」

 

 

 どのような選択をするかはツアレ次第だ。

 なんにせよ、自分が教えてやれる事はもうほとんどない。

 自分が手助けしなくてもやっていける――ツアレが独り立ちする。

 それはそう遠くない未来のような気がしていた。

 

 

「そうだ、モモンガ様。今度ひょうたん湖に行ってみませんか? その辺りに住む蜥蜴人(リザードマン)が至高のお宝を持ってるそうなんです」

 

「いったいどこでそんなネタを…… まぁいいか。ああ、一緒に行ってみよう」

 

 

 だけどまだその時じゃない。

 だから今はまだ、この冒険を楽しもう。

 

 

「あっ、ラナーさんも誘いますか? 最近よく会いますし」

 

「ラナーなぁ…… あの子自分の国が滅んだのに割と元気だよな? もう王女じゃないから呼び捨てにして欲しいとか、かなりフレンドリーになったし」

 

「お城の中で窮屈な思いをしてたんですかね? それがなくなって自由を満喫してるとか」

 

「私は様付けで呼ばれたままなのに……」

 

「尊敬の証ですよ、きっと」

 

 

 うん、元王女も人生を楽しんでいるのだ。

 世の中やっぱり楽しんだもの勝ちだ。

 モモンガは特に関係のない理由で自分を肯定した。

 

 

 

 

 『八本指』の各部門の長が集まる会議。

 各々が現状報告をしているが、皆一様に暗い顔をしていた。

 

 

「かなり不味い事になった…… 我々は裏から王国を牛耳ってきたつもりだったが……」

 

「操る先がバッサリいなくなったか。表がいないんじゃどうしようもない」

 

「あの皇帝なんて手が早いんだ。麻薬の畑がごっそりやられたよ……」

 

 

 取り締まりが強化され、密輸、金融、賭博の三部門は商売そのものがやりづらくなった。

 麻薬取引部門は販売どころか製造元が潰されつつある。

 今までは貴族と癒着していた為、多少の事は賄賂でどうにでもなった。しかし、その貴族がいなくなったので捕まればそこで終わりだ。

 

 

「こっちもかなり不味いのよねぇ。売れ筋が全部パァだわ」

 

 

 帝国では元々奴隷が認められているが、王国と違って何をしてもいい奴隷――いわゆる違法奴隷に関しては禁止されている。

 メインの商品が売れないのだから奴隷売買部門も傾斜傾向だった。

 

 

「はぁ、無茶な依頼ばっかしてきやがって」

 

「同じくだよ」

 

 

 そして暗殺と警備部門も難しい問題を抱えていた。

 暗殺部門にくる依頼は分かりやすく、皇帝の抹殺だ。しかしそんな事上手くいく訳がない。いくら金を積まれても断るに決まっている。

 警備部門は身内から引っ張りだこだが、単純に人手が足らない。

 今回の会議に警備部門の代表として出席している女――ルベリナも溜息を吐く。

 依頼を受ける度に身内の戦力が減るばかりで、この状況に辟易としていたのだ。

 

 

「ねぇ、ここは各部門が協力して皇帝を殺すべきじゃない? 八本指存続の危機よ」

 

「へぇ、コッコドールも皇帝を暗殺しろとでも言う気? 冗談じゃない。帝国五騎士程度なら私でも殺せるけど、向こうには逸脱者がいるんだよ。王国と違って戦力が違いすぎる」

 

 

 中性的な美貌を持つ男装の女性――ルベリナの冷たい視線が奴隷部門の長であるコッコドールを射抜く。

 しかし――

 

 

「――あの逸脱者に対抗出来る手段があるとすればどう?」

 

 

 その発言により会議の場が騒ついた。

 八本指は王国を拠点とする組織だが、一般人のように馬鹿ではない。各部門のトップである彼らは魔法詠唱者(マジックキャスター)の恐ろしさをきちんと理解していた。

 

 

「流石に信じがたいね…… お前のとこにいる『天剣』でも使うの? あいつは確かに私達『欠けた六腕』に匹敵する。それは素直に認めるよ。でも帝国のフールーダに勝てるような強さじゃないよ」

 

「違うわよ。私もそれくらいは理解しているわ。彼にあげたアレを使いこなせてたら可能性もゼロじゃないけど…… その事は今はいいわ。最近エ・ランテルで使えそうなのを見つけたのよ。正確にはフールーダに勝てるじゃなくて、魔法詠唱者の弱点を突ける男ね」

 

「それが本当ならウチに欲しいもんだよ。それならちゃんと六人――『六腕』が揃うしさ。いい加減名前に欠けたって付けるのダサいしね」

 

「残念ながら彼は別の組織の男なのよ。一時的に協力関係になるだけね。利害の一致ってやつよ。まぁ、ぶっちゃけた話、フールーダは無理でも帝国騎士の何人かはやれるでしょ」

 

「まずは少しずつ戦力を削るわけね」

 

「ふむ、逸脱者に対抗出来る組織など思い浮かばんが……」

 

 

 ルべリナの横で疑問を浮かべる暗殺部門の長に向けて、コッコドールは微笑んだ。

 

 

「――『ズーラーノーン』よ。そこの幹部とちょっと手を組んでみない?」

 

 

 

 

 トブの大森林付近ある開拓村のカルネ村。

 今年の春より王国領から帝国領へと変わったわけだが、村に住む人達の生活は変わっていなかった。

 これからの税が軽くなると聞いて、みんなで喜んだくらいだろうか。そもそも辺境の村は国との関わりが薄い為、トップが変わろうがあまり気にしていないようだ。

 そんな村に一人の移住者がやって来た。

 

 

「今日からこの村の一員としてお世話になります。ガゼフ・ストロノーフと申します」

 

「おお、よろしく、ストロノーフさん。にしてもアンタもいい体しとるね。アングラウスさんより筋肉ある人は初めて見たよ」

 

 

 ガゼフ・ストロノーフ――リ・エスティーゼ王国で王国戦士長の地位にいた男。

 彼は最後の戦争で何も出来なかった。

 帝国の策に嵌り、剣を振るう事すらなかったのだ。

 

 

(あの時、もしも私が戦えていれば何か変わったのだろうか…… いや、思い上がりだな。仮にフールーダ・パラダインと対峙出来ていたとしても、死体が一つ増えただけだろう)

 

 

 皇帝であるジルクニフからは、部下にならないかと直々に誘いを受けたが断った。

 王国が帝国に支配された後も、ランポッサ三世に最後まで仕えて忠義を尽くしたかったのだ。しかし、それは国王本人から止められた。

 王国の武力、力の象徴であった戦士長が近くにいると再び担ぎ上げられる可能性がある。

 もう二度と争いを生まない為、ランポッサ三世は自身の周りから戦力となる者を全て引き離したのだ。

 

 

「これでも元兵士ですから体力には自信があります。生まれは農村ですので畑仕事も任せて下さい」

 

 

 胸の前で力こぶを作って見せ、村長に笑いかけた。

 故郷に帰っても良かったが、元の肩書きのせいで周りも扱いに困るかもしれない。

 その為、ガゼフは自分の事をあまり知らないであろう場所――辺境の村で暮らすことを決めたのだ。

 

 

「それは頼もしい。何か困ったことがあったら相談して欲しい。あと、さっき言ったアングラウスさんも移住者でね。ストロノーフさんと似たようなもんだし、色々聞いてみるといいよ」

 

「ありがとうございます、村長」

 

 

 自分の過去はもう変わらない。

 悔いがないと言えば嘘になるが、これからこの国は良くなっていくのだろう。

 自分は王国に何も貢献する事が出来なかった男だ。きっぱりと諦めて再スタートを切るとしよう。

 こうしてガゼフ・ストロノーフは戦いから退き、この村で再び農民となった。

 

 

 

 

 オマケ〜ガゼフのカルチャーショック~

 

 

「初めまして、俺がブレイン・アングラウスだ」

 

「ガゼフ・ストロノーフだ。よろしく頼む、アングラウス殿」

 

 

 カルネ村で暮らすことになったガゼフは、先輩移住者であるブレインの元を訪ねていた。

 

 

「ブレインでいいよ。そんな畏まることもないぞ。ここはゆるい村だ」

 

「そうなのか。ではブレイン、こちらもガゼフと呼んでくれ」

 

「ああ、よろしくなガゼフ」

 

 

 村長が自分の体を見て驚いていたが、正直自分の方が驚いた。

 一目で分かった。このブレインという男の体は並みの戦士を凌駕している。

 自分の部隊にいた部下よりも鍛え上げられているだろう。

 とても村人には思えない。

 

 

「さて、俺らのやる仕事は大体が力仕事だ。薪割りだったり、畑を耕したり――あとは子供達と遊んだりだな」

 

 

 ガゼフはニカっと笑うブレインを見て、悪い人間ではないと思った。

 村長も親切な人だったし、この村に住む者はだいたいこんな感じなのかもしれない。

 今日はこの村の事を説明してもらいながら、ブレインに付いて仕事を手伝う事になったのだが――

 

 

「ふんっ、ふんっ!!」

 

 

 木を割る音が一定のリズムで鳴り響く。

 力仕事その一である薪割り――ガゼフは隣で斧を振り下ろすブレインの姿を見て、思わず手を止めてしまった。

 一切ブレない体、寸分違わず真っ二つに両断されていく薪、そして何よりも――

 

 

(武技を使って薪割りだと!?)

 

「ん? どうしたんだ?」

 

 

 こちらの視線に気がついたのか、ブレインは手を止めて話しかけてきた。

 

 

「あ、いや、すまない。あまりに綺麗なフォームだったんで驚いた。その、ブレインはいつもそうやるのが普通なのか?」

 

「そうだな、いつもこうしてるぞ。普通だな」

 

「そ、そうなのか……」

 

 

 ガゼフは盛大に勘違いしているが、他の住人は武技を使わない。というか使えない。

 

 

(いや、待て。薪割りだけかもしれない。そんな日常的に武技を使う訳ではないはずだ……)

 

 

 ガゼフは思いとどまり、次の仕事場に向かう――

 

 

 

 

 ――そして、畑を耕すブレインを見て自分の認識を疑い始めた。

 

 

「ふっ、ふっ、ふっ――」

 

(畑でも使うのか!? これは俺も使うべきなのか!? 使い方が間違って――いや、俺は後から移住してきた身だ。こちらの流儀に従うのが筋……)

 

 

 王国戦士長になってから、開拓村の現状など見る機会はなかった。

 最近の農村は進んでいると、ガゼフは変な方向に納得し始める。

 それに加えて仕事に手を抜くなど、真面目な性格のガゼフからすれば許されない。

 しっかりと鍬を握って集中し、武技を使うために気合いを入れる。

 

 

「よし、いくぞ。武技〈四光連斬〉!!」

 

 

 何だかんだで元戦士長も凄かった。

 慣れないはずの鍬で武技を発動し、四つの同時斬撃――斬撃と言っていいかは分からないが、畑には四つの耕した跡が生まれた。

 

 

「おお、凄いなそれ」

 

「ああ、これは俺が作っ――」

 

 

 その様子を見ていたブレインに褒められ、気をよくしたガゼフは解説しようとして――

 

 

「――こうかな。武技〈四光連斬〉」

 

「……」

 

 

 ――ガゼフは言葉を失った。

〈四光連斬〉は自分が磨き上げてきたオリジナルの武技。それを一度見せただけで完璧に模倣されてしまったのだ。

 いや、もしかしたらブレインの方が精度が高いかもしれない。自分よりも綺麗に畑が耕されている気がする。

 

 

「あー、これ使えば四倍仕事が出来るかと思ったけど、体力的にキツイな…… ん、どうしたガゼフ?」

 

「う、うぉぉぉぉっ!!〈六光連斬〉!!」

 

「おおっ!! 流石にそれは真似出来そうにないな。凄い技じゃないか!!」

 

 

 悔しかったガゼフは〈六光連斬〉を使い続けた。

 

 

 

 



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