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【大相撲】

混戦間違いなし!面白くなるV争い

2019年5月11日 紙面から

◇北の富士の大相撲展望

 令和元年、記念すべき最初の本場所が始まる。全員そろってと言いたいところだが、白鵬が休場を発表した。初日の前々日に表明する例が多いが、私はこれで良いと思う。出る気もないのに、出場をほのめかすやり方は、好きではない。出場を期待し、チケットを買う人だっているだろう。今回の白鵬の決断を、私は買いたい。

 そして、変な言い方だが、今場所は混戦間違いなし。優勝争いは、面白くなるだろう。のっけから文句ばかりで申し訳ないが、横審の総見を見る限りでは、進境著しい力士が見当たらない。新大関の貴景勝も特別、変わった様子はなし。とはいっても本場所に強いタイプなので、それほどの心配もないだろう。しかし、新大関の重圧は思いのほか大きいだけに、平常心で取れるか、そのあたりが非常に興味深い。

 それでは、優勝争いを占ってみよう。稽古を見た限り(たった1日)で申し訳ないが、やはり番付通りになるだろう。鶴竜と豪栄道が稽古では強さを見せていた。

 豪栄道の稽古場での強さは定評のあるところだが、引き癖が出ると、勝ち越すのが精いっぱいに陥る恐れもある。それでも先場所、12勝の実績は捨て難い。だから私は勇気を持って豪栄道を優勝候補の筆頭に挙げたい。

 続いて鶴竜と言わせてもらう。理由は、横綱に敬意を払ってと言っては失礼か。稽古通りの相撲が取れたら、そうは負けないと思うのだが。鶴竜も引いて墓穴を掘ることは珍しくない。

 次に、やっと貴景勝の名が出てくる。初優勝が13勝、次の場所が11勝、春場所は10勝と、勝ち星が減っている。これは相手に研究されてきた何よりの証拠。大関は常に10勝以上が要求される。押し相撲一本で大関を維持し、さらに綱を目指すのは、並大抵のことではない。今さら四つ相撲はとても無理だろうが。

 北勝海は右前みつからの出し投げともろ差しで活路を見いだし、横綱になった。これから貴景勝がどう変貌していくのか、大きな楽しみでもある。若さと勢いを買って、3番手としよう。

 もう1人の大関、高安は総見でも全く元気がなく、盛んに腰を気にしていた。どうもしゃんとしない大関だ。10番くらいは楽に勝つ力があるのに、終盤に崩れるケースが多いのは惜しまれる。

 もう1人、大事な力士を忘れていた。先場所、14勝と大勝ちした逸ノ城。内容に問題がなくはないが、左手で上手を引くと、とんでもない力をみせる。今となっては遅いが、いっそのこと春場所千秋楽は、白鵬と対戦させたかったものだ。さぞ、盛り上がっただろう。

 先例がないとか、結びは横綱戦が当然と思わない方が良い。お客さんが喜ぶ取組はどんどん実現すべきだろう。逸ノ城にとって今場所は大関への足掛かりとなる大切な場所になるだけに、頑張ってもらいたいものだ。

 御嶽海も一応、候補に入れておこうか。稽古ではあまりさえなかったが、本場所には強い。貴景勝キラーとしても貴重な存在である。

 栃ノ心はまだ、体調が本調子ではないようなので、大きな期待はしないほうがよいのかもしれない。とにかく、10番勝って、大関に返り咲くことが先決である。

 以上、優勝力士は、この中から出るのは間違いないだろう。下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。それから炎鵬が入幕したので前半の相撲が楽しみだ。

 展望と言いながら、相変わらず小言ばかりで申し訳ない気もするが、優しくなってつまらないという声があるのも確か。意見は意見として聞くが、思ったことを言い続けようと思っています。1人くらい嫌われ者がいてもいいでしょう。

 「夏柳 おい舞の海 初日だぞ」は昨年の句、今年は「打ち出しや 両国橋は 夏の橋」

 先日、句の作者の間村俊一先生に弟子入りを許されました。私はこれから俳人として生きます。もう酒と女性の話は一切しません。新しい北の富士に期待してください。現在午前6時。今からゴルフに出掛けるので、急いでこの原稿を書いています。初日からは真面目にやります。では行ってきます。 (元横綱)

 

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