『Kanon』の残酷な選択肢とその責任Add Starephemeral-spring

nakari (http://gplus.to/nakari) です。

ここでは無いブログで以前僕が書いていた文章のリクエストをコメントで頂いたので掲載します。

原文のままで特に編集せず、3回に分けて書いていたのを一つでまとめて記します。


内容としては『Kanon』のゲーム版の作品の紹介です。

と言っても、ネタバレしまくりですので既プレイの方のみを対象としています。

好き!という気持ちが先行しすぎて阿呆みたいに長いですし、話が繋がっている

かもどうかも分からないので、作品を思い出すもとになる程度になれば幸いです。


以下、続きを読むへ。



■■■ 『Kanon』の残酷な選択肢とその責任 1 ■■■

僕はKeyの作品はKanonが最高峰だと思っている。

CLANNADまでがKeyでその後は個人的に認めていないので、これは一生変わらない。

なので、Kanonの事を書くにかなり批判的な事を書いたりします。





CLANNADは物語を読んで泣く。『ちいさなてのひら』を熱唱して泣く。

AirMADや特定の曲を聞いて泣く。歌は熱唱すると途中で号泣して歌えない。





Kanonは大抵の曲を聞いて泣く。歌なんか歌えない。ゲームを立ち上げると泣く。

冒頭の曲を聞いて泣いて、名雪が出てきて泣いて。その後、笑う。





以下、ネタバレの可能性がうんぬんじゃなくて、ネタバレ書きます。

Kanonに関して各キャラのシナリオの全容も書きます。かなり詳細に書きます。

過激な発言をします。他の作品をけなす行為もするかも知れません。

そういうのが苦手な方は閲覧にはご注意願います。

僕への批判は当然受け付けますが、気分を害した時間は戻りません。









































CLANNADは人生という言葉が流行ったが僕に言わせればあれは人生じゃない。

恐らく、ギャルゲには珍しく働いているシーンなどが描かれているから、

そんな訳の分からないことを言うんだと思うけれど、要するにあの作品は

決められたレールを進むことが推奨されており(忌避する場合は物語が終わらない)

そんなものは人生じゃない。というか、それが人生だと思っちゃいけない。

もっと人生には可能性があってしかるべきだし、

また、自分の選んだ選択に責任をあることを自覚するべきだ。





Airは私的には一点突破型だと思っている。観鈴ちんのシナリオが120点だとしたら、他のは赤点レベル。

(ちなみに、僕の中で赤点の基準は60点なので、そこは考慮してください)

Kanonのシナリオは全てが80点以上で、好きなヒロインに関して100点満点という感じ。

また、Airとは違いシナリオ全体での統一が取れている。

Kanonは奇跡が起きる物語と言われるが、その奇跡にはきちんとした意思がある。

また、メインヒロイン(名雪)を主軸に物語を考えた時に

キャラクター同士の心理描写などが幅広く圧倒的なまでの感動がある。

逆にAirは物語としてのキャラクターの繋がりはあるものの、実際の人間くささというか

そういったキャラクター間の心理描写は少ない。どちらかというと、一人で色々と考えている。

そういったすれ違い加減が物語を引き立てているんだけれど、僕は恋愛に関しては当事者同士の

思惑のようなものの方が好みなのでKanonの方が好きだったりする。





Kanonについて書く。





この作品では奇跡というのが主軸に添えられており、各ヒロインの物語上で奇跡が起こる。

ただ奇跡というと運が良かったとかそういう意味でなくて、かなり現実に即して奇跡が起きる。

ただ、その代償が図りしれない。むしろ、計り知れないからこそ奇跡の価値が浮き彫りにされる。

全員ハッピーな状況は恐らく用意されておらず、作品の中で言及されていない以上、最悪のケースが

選ばれた、あるいは選ばれる可能性が高いと推察される。僕は最悪なケースとして作品を受け止めている。

つまり、選ばれなかった物語では

あゆは植物状態だし、名雪トラウマかかえたままだし、

真琴は単に寿命を縮めただけだし、舞は一生さ迷ってるし、栞は病気で死にます。

なんか一人だけ待遇普通じゃない?と思われるかも知れないけれど、まぁちょっと待ってください。

これから書きます。





その前に、これを一つだけ書いておきますと、

僕はKanonのヒロインたちはコミュニケーション障害を抱えていると思っています。

かなり穿った見方ですし、純粋な人はそういう観点から作品を見るのはおかしいと言われるかも知れません。

出てくるキャラクターの思考レベルが低いの単にキャラ付け(うぐぅとか、うにゅうとか)の

影響であり障害だのなんだの言うのは言い過ぎだと思われるかも知れません。

あるいは、作者がこういうキャラクターしか描けないだけで、障害は言い過ぎだろう、と。

(実際、CLANNADの天才設定のことみの思考レベルが著しく低い事に関してコメントを求められたときに、

 自分より頭の良いキャラクターは書けないと発言した経緯がありますので)

でも、例えばKanonには美坂香里さまがいます。どう考えても知識人です。ちょっとメタっぽいけど。

要するに、少なくとも二つの作品の中では作者の器量ではないと考えます。

根拠は、Kanonに関しては物語が始まる前の遠い昔の主人公との馴れ初めがあり、

あれだけ仲がよかったのに色々な事情で会えなくなる。信頼するにたる人との別れが幼少期にある。

これがトラウマになっていて、他の人との交流関係を円滑に築くことができないでいる。

つまり、人とのコミュニケーションを取ってきておらず、人に何かを伝える為の経験が著しく無い。

というのは、どうも言動は稚拙ではあるけれど、各々がかなり真剣に諸所の色々なことを考えている

点から思考のレベルが低いわけでは無いことが伺える。

つまり、頭が悪いのではなくて人に伝える能力がないんだというのが僕の結論です。

コミュニケーション障害という言い方が嫌ならコミュニケーション不完全症候群でもいいです。

まぁ、作者自身が「自分より頭がいいのは~」とは言っているので間違っているんでしょうけれど、

僕はそう思っています(ただ、作者の思惑が絶対という考えがそもそも間違っている)。







月宮あゆ

まず、あゆを書くのが手っ取り早いので書きます。この物語の中核は悔しいけれどあゆです。

前提として、主人公の祐一は作品の舞台とは違う所に住んでいて、

7年前とそれ以前に親戚を訪れる形で泊まり込みで舞台に来ています。

前述で奇跡がうんぬんという事を書きましたが、奇跡を起こすのがあゆという存在です。

もっと詳しく言うと、作品の要所要所で出てくる"7年前"に祐一とした"約束"が奇跡の元です。

あゆは祐一に対して、何でも3つ願い事を叶えると約束します。

それで、7年前に2つ約束を守ってもらえるのですが、1つだけちゅうぶらりんなまま

あゆが死にます(祐一の視点では。実際、酷い傷を追って植物人間になります)。

それでその強烈なトラウマを忘れる為に7年前にあったことそのものを忘却の彼方にやって、

7年後に街に戻ってきた時に、物語が始まります。そこで奇跡が起きる。





奇跡の条件は以下です。

・7年という月日

・交わした約束

・あゆの自分自身の犠牲

・祐一の想い(プレイヤーのメタレベルでの選択肢の残酷さと引換に)



によって奇跡が成り立ちます。

(実際、"捜し物をしている""捜し物が見つかった""もう祐一とは会えないかも知れない"という

 作中の言葉がそれを裏付けます。"好きな人と幸せになってね"という文脈のことも、あゆが)

また、OPやEDでそれっぽい歌詞が入ってます。





あゆが選ばれなかった時の代償は、植物状態から救われないという可能性。

もう会えないという表現から絶望的だと考えるのが自然だと思いますが。





あゆルートの魅力は、自分自身を投げ打つ自己犠牲の精神でしょうか。

というより、祐一自身が本気で特定の奇跡を起こしたいと願わないと奇跡は起こらないはずなので

そもそも、あゆの現在のオカルト的な状況に気づく必要性とトラウマを乗り越える強さが必要です。

メタな視点で見れば、条件さえ揃えば奇跡は確約されるはずなのですが、

奇跡を起こすはずのあゆがあゆそのものを救えるかどうかは分かりません。

なので、あゆの視点からすると自分が幸せになる方法は祐一に自分の事を思い出してもらって

強く願ってもらうだけ。また、作中で強く願ってもらった後に現状のあゆが消えるシーンがあるので

こと自分に対して奇跡が使えるかは不確定な要素が強いことが伺える。

なので、ある意味で祐一が他の娘とくっ付くのを許せるか、許せるならばその手助けを自分の

希望と引換に実行できるか、が重要になります。あゆにとっては。

そして、どのルートでも祐一の思いが本物であれば、奇跡を使う。

奇跡の条件に、祐一の想いを入れたのは、作中のモノローグで「祐一くんが強く願ったからだよ」

とあるので、確実でしょう。

それと共に、「自分以外の女の子の救済を強く望む祐一」をあゆ自身が許容している。

自分の損得勘定ではなくて、好きな人に幸せになって欲しい。その隣に自分がいなくても良い。

それがあゆの魅力です。その魅力を踏まえて、あゆルートを勧めるとあゆがより好きになれる。





あゆに関しては、他のヒロインのルートとあゆの位置づけを知ることでより深みを増します。









水瀬名雪(メインヒロイン)。

メインヒロインです。初回限定版こそ逃しましたが通常版や全年齢版のパッケージを飾ってます。

メインヒロインです。祐一と一番近しい存在です。従姉妹です。他の奴らは他人です。

メインヒロインです。反論は暴力を持って制圧します。

冗談ではないけれど、そんな事を言っていても仕方がないし圧倒的に不利なのは

身にしみて知っているのでみなさんに少しでも名雪の魅力をお伝えする為に尽力を尽くします。





悔しながら、名雪は他のヒロインのルートをやり名雪の立ち位置を理解することで深みを増します。

あゆの項でも同じような事を書きましたが、あゆと違う点はあゆルートを選ばなかった時の

あゆのリスクが高いのに対して、名雪ルートを選ばなかった時のリスクは圧倒的に低いからです。

むしろ、名雪をルートに選んだ時にこそ名雪リスクがグンを跳ね上がってしまうっていう。





名雪を愛する肝としては、想像力が求められます。

時系列に書いた方が伝えやすいので七年前以前からさかのぼって書いていきます。

まず、祐一の従姉妹であり街に来たときに下宿先です。

また、すぐに仲良くなったという記述があるので、一番早く心を許しています。

幼心ながら祐一に対して恋愛感情をいだいています。

そんな中、祐一はわざわざ水瀬家に泊まりに来ているというのに、

いつの頃か他の女と現を抜かして外出するのがどんどん多くなっていきます。

それが他のヒロインにとっては、唯一の馴れ初めみたいなもんなんですが、

名雪は祐一との他の4人分の時間を持ってかれているわけです。

作中でも、「また他の子と遊ぶの・・・?」という表現があり、

せっかく冬しか来れ無いのに、来たら来たでさっさと出かけてしまう。

よくしてあげてるのに、返ってくるのは酷い仕打ちばっかり。それでも好き。

他の娘を恨むというよりは、むしろ自分に原因があるんじゃないかという事を考えたりして

髪型を変えてみたり。

父親がいないので、この辺りの心理としてはかなり複雑でしょう。

そこで7年前に大きな事件が起こる。

あゆが大きな木から落ちて、絶望的な状況に陥る。

泣き叫ぶ祐一を見て、母である秋子さんに自分には何が出来るかな、と泣きながら相談する。

そこで名雪の素直な気持ちを伝えてあげればいいんだよ、好きだって伝えてあげればいいんだよと教わる。

(これ未だに正解かどうか分からないんだけど。まぁ、現実は理論値じゃないからいいか)

で、自分が楽しかった時の事を思い出して、その結晶たる雪うさぎを作って祐一に告白しながら渡すんだけども

祐一は祐一で雪=トラウマ(血が滲んだ朱色の雪を連想させるらしい)なので、無碍にしてしまう。

既に雪が嫌いという事は知っていたので、それで自分が祐一を傷つけたと思った名雪は祐一に謝りながら

それでも、私の気持ちは伝えたいから明日また、とある場所に来てと懇願する。

ちなみに、ここでいう明日というのは祐一が実家に戻る日になっている。

名雪は10歳程度だったはずなのだけれど、雪が降り積もる中、来ない祐一を待ち続ける。

そうして、7年の時が過ぎる。




文章で書くとそれだけなんだけれど、当然7年というのは短くない。

ついでに言うと思春期って事もある。多感な時期に好きな人に壮絶に裏切られた

名雪視点だけで言えば)事は早々解消されるものではなく、名雪ルートを進めばわかるけれど、

「自分にはお母さんしかいない。お父さんもいない。祐一だって一緒にいて欲しい時にいてくれなかった」

という旨の発言をする。名雪ルートにおいて、ここが一番重要だと僕は思っている。

一つの意見として、あゆは既にこの母親がいない事を乗り越えているという意見もあるが、

その事に関して言及されていない事を見ると、幼少期の名雪の父親がいない事に対する不満の希薄さ

(もちろん、重くのしかかってはいるんだけれど)と同じで、あゆの親不在と名雪の母親不在は

精神的な重みが違うと思う。この辺りはセンシティブだし感情論でしかないけれど。

だけど、少なくとも名雪ルートにおいて名雪は秋子さんがいないと普通の生活もままならないような

状況になってふさぎこんでしまう程、母親に依存していることは大きな要素と言える。

これは祐一の7年前に裏切られたのが大きく関与している。

なんせ、秋子さんが事故にあって危篤状態の時には、

親友であるはずの香里の言うことは一切聞かないし、その事を香里は冷静に自覚しているため、

それ以前から名雪との関係がある程度で頭うちの状態になってしまい、香里でさえも

祐一という噂だけの(かつ以前裏切った)従兄弟にすら適わないという事を示唆している。

(物語が始まる前までは香里と祐一は面識がない。が香里は散々名雪から従兄弟の祐一の話を聞いている)

親友すらもまったく入り込めない余地があるのだから、名雪名雪として一般的な幸せを

得る為には祐一と結ばれて幼少期のトラウマを打破するしかないと僕は思っている。

当然、結婚する事だけが幸せの形とは思わないが、少なくとも酷い仕打ちをされても好きでいる

自分というのを名雪は自覚しているので、恋愛に関しては成就されない。

というのも、名雪に父親がいない事は物語では一切言及されないが母親とだけでもやっていけている

状況を考えみると、祐一以外とは恋愛できないんじゃないかと思う。

だって、7年間もずっとずっと祐一の事を思い続けてるわけだから。





7年後、祐一が自分の告白を覚えていないことに安堵しつつも、

自分の精一杯の気持ちが無かった事にされている事に戸惑を覚える。

ただ、当然思い出してしまったら、関係がぎくしゃくしてしまう可能性もある。

また、祐一は覚えてはいるが単に忘れた振りをしている可能性もあるわけなので、

適度に昔の話を出しながら、その真意を探ったりする

(基本的に、忘れた前提で進んでいて思い出して欲しいな・・・という感じではあるが)。

名雪ルートでは後半浮き彫りにはなるが、そんな心境とは裏腹に少なくとも祐一視点では

名雪が自分に恋しているように気があるようには見えていない。

特に、自分から名雪に対して再度告白する時には受け入れてもらえるか分からないとの記述がある。

名雪ルートで凄くいいのは、祐一から告白されて物凄く戸惑う名雪の描写があることだ。

実際には望んでいたはずなのに、急に言われて戸惑ってしまう。

自分はずっと母親と過ごしてきて、それだけで幸せだったのにまた変な従兄弟が勝手な都合で

やってきて生活を乱される。その上、あゆの存在に祐一以上にひっかかりを感じていてる。

"そもそも自分は祐一の事が気になるけれど、それが恋愛感情なのか。

 単に気になっているだけなのか。7年前に自分を無碍にした事を思い出して反省して欲しいだけなのか"

自分の気持がどれなのか分からない。

分からないなりに考えて考えて考えた結果、やっぱり好きなんだと結論付ける。

こういう心情の変化をきちんと描く作品は少ない。描いたとしてもここまで静謐でリアルじゃない。

こういった、ある意味でエゴみたいな部分は大抵削られる。バッシングの対象に成り得るから。

つまり、裏にこういった心理状況が名雪にはあるはずで、これを踏まえて他のルートをやると

名雪の節々の心遣いに本気で泣ける。

特にせっかく会えたのに、7年前みたいな事が繰り返されそうだったり、でもそれを祐一の事を

思って肯定する姿勢が本当にやばい。あゆルートなんて、あゆとの仲を取り持つ為に、

自分かrら進んで、あゆと祐一の成就を願って、二人を応援する。

真琴ルートとかでも名雪の慈愛の深さに触れられ、別の意味で感涙を禁じえない。





さて、結ばれたと思ったら、前述した秋子さんの事故が起きる。

勘違いしている人が多いけれど、これは単なる事故ではなくて危篤レベルの事故だ。

それこそ助かる見込みなんてほぼなくて、奇跡が起きなければ・・・という感じ。

だから、名雪がふさぎ込んでるのは単なる一過性の我侭などのものじゃない。

本当に本当に心から信頼する(その段階では)唯一の母親がいなくなってしまう。

親友は完全にシャットダウンだし(香里もそう思っているから救いがない)祐一は

一度裏切られているだけに、信じてはいるけれど、またそうなったらどうしよう・・・と言う想いが拭えない。

でも、祐一への想いの強さを糧になんとか立ち直って。

そして、奇跡が起きる。


■■■ 『Kanon』の残酷な選択肢とその責任 2 ■■■

余りにも長すぎたので分割することにしました。3で終わる予定です。





以下、ネタバレの可能性がうんぬんじゃなくて、ネタバレ書きます。

Kanonに関して各キャラのシナリオの全容も書きます。かなり詳細に書きます。







































沢渡真琴

丘に住んでいる狐です。この事が分からない人は引き返した方がいいです。





Kanon屈指の感涙シナリオに認定されている真琴編。

正直、これで泣かないって感受性としてやばいんじゃないかと思います。

今の言葉で言うとツンデレという言葉に置き換えられてしまうんでしょうか。残念です。

いや、それを言うと、真琴はまさにツンツンデレデレだから今の言葉というよりは、

本来の意味で言うところのツンデレなんだろうか。いや、それもないか。

別にツンツンしたくてしてた訳じゃなくて、これまた裏切られたから報復来たわけだし。

ツンツンしてるのはむしろ正統。





真琴そのものは少し特殊な立ち位置なんだけど、真琴的な存在、

つまり狐はKanonの舞台ではそれなりに脈々と受け継がれていて

定期的に人間に懐いちゃうのとかがいて、それでも結局はずっと一緒にいることは

出来ないし色々な都合があって当事者としては悲劇になってしまう。

ただ、真琴の不幸としては祐一が単に水瀬家に遊びに来ているだけだったのであり、

要は水瀬家から立ち去るときにはもちろん、真琴とも別れなければならなかった。

けれど、そんな人間の都合なんぞは真琴は知る由もないわけで、結果的に裏切られたという想いだけが残った。

ただ、全体と通して言える事だけど、真琴も舞も次に来たであろう時には祐一に忘れられてるわけなので

(あるいは覚えてはいたんだけど、所在が分からないからどうしようもなかった?

 でも、少なくとも7年後にはさっぱり忘れている。トラウマの影響で憶えてないのは7年前の冬だけ

 という記載があったはずなので、完璧に忘れてしまっているんだと思っているんだけどどうだっけな。

 ただ、まぁ10歳とかそれ以前の事を正確に覚えてろっていうのは無理で僕も特徴的な事柄しか

 憶えてないんで、そんなに攻められないし攻める権利自体そもそもないですけどね)、

ちょっと話がややこしい感じになっている。





真琴の立ち位置っていうのは、かなり重要で、ゲーム性という観点で書いてしまうと、

水瀬家の中に異分子を入れる必要があったのが大きいと思う。名雪を描ききるのにも大事なファクター。

それを考えたときに、記憶喪失、またそれを正当化する為の設定を盛り込んだという感じ。

後は、奇跡というものを単にあゆだけが起こせるだけのものではなくて(物語の主軸自体はあゆだが)

他の所でもそれに類する事自体は起こっているというのが表現したい部分だと思っている。

後は祐一の純粋さを描くのにも重要。

狐だったはずの子が目の前に女の子として登場しても受け入れられる姿勢がある。

こんな事を書くのはなんだけれど真琴のエンディングが物凄く好きだ。

想像の余地が介在するっていうのが凄く好き。

麻枝さんのどこぞのインタビューを読んだ感じだと、どうも真琴単体は死んでいるんだけれども

狐の想念みたいので真琴という存在が生まれる的なことがいわれている(ピロと関連して)けれど、

それは文章で表されていない以上、単に裏設定みたいなものでしかない。

(2回目だけれど、僕は作者が唯一絶対の存在だとは思っていない)

いやまぁでも、示唆する部分に関しては記載されているから裏というか表扱いでいいのかな。

とりあえず、読み手の想像力に掻き立てる文章は好き。





えーと、どうしようかな。

他のヒロインと違って、真琴に関してはどうする事もできない無力感みたいなのがある。

鍵の作品には必ずこういったプレイヤーがどうにもならない事柄が存在していて、

それがやきもきするんだけれども、どうにもならないからこそ、それに至るまでの過程が

これ程までに色づくんだろうな、というのが僕の真琴ルートに対する感慨だったりする。

とりあえず、真琴のその後がどうなっていようとも作品中に言及されていない以上は

作品の中では真琴は死んだことになっていて(特に祐一の考えの中では)、祐一は将来の伴侶を

得たかのように達観して、真琴との事を乗り越えて、成長しながら水瀬家にいる(本当に名雪はひたすら可哀相)。





そういえば、真琴ルートを選ばなかった時の代償を書いてなかった。

選ばなかった場合は、真琴は無駄死にします。特に寿命を大幅に縮めての無駄死に。

人型になる代償として、エネルギーを半端なく使うようで本来だったら天寿を全うするハズだったのに

たった数カ月で死んでしまいます。なので、真琴ルートを選べばその残った少ない時間を有意義

愛する人と生きられるわけだけれど、そうでない場合には、途中で放り出される形になるので無駄死にです。

いや、無駄というのは流石に言い過ぎかも知れないけど。

ただ、真琴が決断するに至った事柄はまったく叶わないし、その上誤解も解けないまま去ります。

逆に真琴ルートを選んだ場合には、祐一もそうだけれど水瀬家の暖かい家庭の中で

要するに過去の真琴が体験して憧れをいだいて、かつ取り戻したかった情景を得ることができます。

真琴ルートは、ただただ衰退していく真琴を無力感を持って進んで行くのを献身に見ていかないと

いけないんだけれど、それでも真琴の可愛い幸せそうな笑顔を見ることができるし、ただただ丘で

生きてきた時と比べて人の温かみをあげることができる。

それが丘と比べていいのかどうかの判別をつけることは難しいけれど、少なくとも真琴は満足する。

結婚の約束をし、最期の一瞬まで愛することができる。

真琴ルートに関しては少なくとも2読推奨で、かつ読めば読むほど良い話だと思える。









川澄舞

舞も舞で凄く悲しい話です。

まず境遇とかそのものが異常に暗鬱としていて、さらに現状の舞の立場が非常に辛い。

設定としては、舞は強く願えば何かしらを具現化してしまう能力のようなものがあるらしいです。

それが原因で、過去になんとかして祐一を繋ぎ止めておこうと必死に考えついた結果、

「この場所に魔物が来るから、助けて」と嘘をついてしまい、

その嘘を拠り所として自分の能力で自分を攻撃しにくる魔物のようなものを産んでしまう。

また、自分で産み出してしまった事を舞自身は知らずに思い出の場所を守り続ける。

そして、最期の方では自分が自分で作ってしまった魔物の存在に気づいて、さらに苦しむことになる。

舞ルートに関してもかなりやるせない想いがあります。最期が圧倒的ハッピーだからまだいいけど。

本ルートは注意して読むと沢山のフラグが積まれている。特に夜の校舎関連で。

後は、祐一が舞を一切制御できないというのがやるせなさと、舞の決意の深さを知らしめる。

(つまり、手段と目的が逆転してしまったわけですよね。

 祐一と一緒にいたかったから作った世界なのに、その世界を存続する為に祐一に嫌われてしまう)

ここまでやるかっていうのが僕の意見です。

でも、だからこそ舞の魅力というか愚直なまでの素直さというのが伝わって素晴らしいと思うんだけれど。





舞ルートを選ばなかった際の舞の代償は世迷い。

なぜ校舎に魔物が現れるかというと、そこが祐一との思い出の場所だったからなわけですけど、

仮に舞が卒業して校舎から物理的に離れたとしても(離れても近くに住んで校舎を徘徊しそうだけど)

根本が解決しないわけだから、恐らく舞はずっと自分を傷つけ続けるんでしょう。

しかも、その傷つけてくる原因すらも忘れてなんの為に自分が今この状況に置かれているのかも自覚せずに。

佐祐理さんが近くにいてくれているのが、せめてもの救いなんだけれど、仮にルートを選ばなかった場合どうなるんだろう。

魔物は祐一を率先して狙っていてつまる所、それは祐一が原因だったからなわけですが

作中では佐祐理さんにも手を出していて、かなり深い傷を負わせてしまっています。

これがどういう意味を表すのかというのは考える余地が色々あるわけですけれど、どちらせによかなり意味がある。

佐祐理さんに対しての拒絶なのか邂逅なのか。前者っぽいと僕は思っているので、ちょっと悲しいなと思っているんですけどね。

佐祐理さん自体も無視できないサブシナリオが用意されていて、舞に対する気持ちは本物なわけで。





と、これだけで終わると舞の魅力を伝えきれてないような気がするんだけど、どうしようかな・・・。

他のヒロインに比べると舞は圧倒的に日常描写が少ないというか、

問題ばっかり起こっていてそっちに目が向きやすいから、何を書けばいいのかちょっと分からない。

でも、日常描写としてはお昼休みの佐祐理さんを含めての3人の昼食会などが用意されている。

のだけれど、舞の非日常とのギャップを書ききるのに終始していて、なんていうか、舞が単に

大食いっていう設定ばかり見せつけられて、これまた記憶に薄い。





ただ、舞ルートの魅力は後半な壮絶なまくりだ。

途中どころか、本当に最期の最期まで舞ルートは謎が解明されないまま進む。

なんかよく分からない非現実だけがあって、当てもなくただ単に舞に付き合って危険を侵す。

でも、それは意味がない事なんじゃなくて、舞の悲しい過去が生み出してしまった

ある種の必然性を持った自体なのだということを知っていく。

それで、結局舞が望んでいたものは何かというか、単に祐一や佐祐理さんと仲良く暮すという

だけの何でもないほんの日常でしかなくて、実は化物退治だのなんだのは本来ならやる必要性ないというのが悲しい。

いや、意味はあるけれど、この呪縛みたいなのを完全に忘れてしまえば舞のしたいことはできる。

というより、既に行っている日常そのものこそが舞のしたかった事なんだという事を考えると

これまた手段と目的が逆になっているのが切ない。

また、そうしなければ自我を保てなかった程に、また自分が生み出した事すら忘れてしまわないといけない程に

もっと言えば、ずっと停滞し続けなければ生きていけなかった程に舞の境遇が追い詰められているんだと

思うと、なんというかやばい。涙腺とかそういうレベルの話じゃない。

それが後半で一気に押し寄せてくるので、僕は初めてプレイした時には呆然としていた。









美坂栞

僕は栞に対する感情はかなりドライです。

けれど、栞の立ち位置は非常に重要です。なぜなら、他のヒロインは全員祐一との思い出があり

各々、やり方は違いますがその思い出を大切に思いながら過ごしてきました。

そんな中、栞には思い出がない。むしろ、これから作っていくんだというのが趣旨でしょうか。

特に、栞は今までずっと病弱で(かつ不治の病っぽい)余命数カ月をリアルに宣告されている。

それで、祐一と会う日に自殺しようと試みる。

自殺の心理とかは僕はちょっと勉強していて、カッターで斬りつけるとかは確実に死ねないし、

確実に死ぬ気がないんだけれど、栞の場合は恐らく自殺の仕方も知らないくらい世間を知らない。

むしろそれに向かわせる心理の方が大切で、もっと言えば、栞は単なるメンヘラなどではなくて

れっきとして、自殺に向かわせる要素が存在していて、自意識の為というより周りの為に自殺しようとする。

しかし、祐一に出会い、一念発起してそんな事はやめて女の子になろうとする。





凄く良い話だし、ゲームの性質上、必要だと思っています。

特にAirなんかもそうだけど、鍵の作品は一人一人に意味を持たせている事が多いです。

そういう意味で、選択の余地がある、通り一辺倒ではない。

この場合、過去に縛られず未来を見据えることができるという、

非常に価値があるし、意味あるシナリオだと思っています。

ただ、私的には少なくとも7年間は思い続けてきた女の子たちの想いがあるっていうのに、

単に一目惚れうんぬんの話で横から持っていかれるのは非常に釈然としない。

仮に栞ルートを選ばなかった場合、持病の為に死んでしまうと思う。

けれど、どうにも、その場合にはあゆとどっちが?という考えが浮かんでしまう。

栞の境遇は辛いと思います、生まれた時から病弱で仲が良かった姉からも相手にされなくなり

余命も幾許か。でも、やっと女の子になれるかもと、もう少し頑張ってみる。

それでも、あゆとどっちが重いかと考えると、あゆの方が圧倒的に重く感じてしまう。





なんていうか、言ってみれば祐一じゃなくて良かったんじゃないの?と思えてしまう。

要するに、栞の祐一に対する想いは一目惚れみたいなものだし。

(正確にいうと、一目惚れではなく、あゆと祐一の触れ合いを見て、

 祐一に興味を持つ所から始まり、徐々に祐一の事が好きになっていく)

祐一じゃない場合には、他の誰かと愛しあったとしても病が治る確率は低いのかも知れないけれど、

でもそれはそれで幸せのような気がするし。特に栞に関しては真琴とは違い読者の想像にまさかれている

わけではなくて生存が確定されているので、こうなんというか感傷に浸るというのもない。

というか、まぁそれは実は当たり前でシナリオを役割を思い返してみると思い出をこれから作っていく

必要があるから、生存は確定させなきゃいけない。特に素晴らしいのは、栞がヘタクソなお絵かきが好きな点で、

絵を書いてスケッチブックを埋めて行く事そのものが思い出を形作っていくというメタファーになっている。

だから、シナリオ的に見るとギミックが神がかっている。

でも、そういった所が見えれば見えるほど人間は打算的になっていくわけで、感傷も薄れていく。

後は、やはり真琴と比較して少なくとも記載されている内容の濃度が違う。

状況が違うからなんとも言えないんだけれど(向こうは超常現象みたいなものだし)、

栞が物凄く明るく振舞ってる影には、絶対に見せまいと噛み殺している感情があることとかも

わかっているし、すごい切ないことだなと思ってはいるんだけれど、それが一気に押し寄せてくる場面がない。

どちらかと言うと、香里の葛藤とかにも意識がいってしまって純粋に栞そのものにのめり込めない。





恐らくそれは、最初に書いた他のヒロインとの差異や普段クールな香里の一面など

シナリオとして凄く複合的にできてるからで、それだけ意味のあるシナリオなんだけど

逆に言うとその分、栞よりも栞を取り巻く優しさの環境に目が行ってしまうからだろうか。

それを知った上で、自分を押し殺そうとするのがまた良いのだけれど・・・

多分、栞は不治の病というのがあるから、考えるにたるヒロインになっていて

その儚さみたいなのが見え隠れしたから祐一も惹かれたのかも知れないけれど、

要するに、他の女の子と比べてしまうと圧倒的にその辺りにいる他の女性に近い。

だから、実は何でもないそこら辺の女の子と祐一が結ばれてしまう可能性に一番近い。

そうすると、思い出がある女の子が一層報われなくなるから、忌避しているんだと思う。



■■■ 『Kanon』の残酷な選択肢とその責任 3 ■■■

Part3です。興味がある方はPart1からどうぞ。





各キャラの大雑把な概要といか感想は既に書きました。

要するに、Kanonでは選択の末に不幸になる人が大勢いる。

どういう事が起こるのか、またそれが起こるのはどういった人になのか。

それも既に書きましたが、なんでこんないい子にこんな事が・・・

というのがKanonで詰まるところ、祐一に気が多すぎてあっちこっち

行ったりしたのがいけないのかも知れないですけど、

でも、それがあったからKanonという作品が出来たわけですけども。





ただ、シナリオを見ていてイライラしないこともない。

祐一は基本的におちゃらけているような感じで名雪とのやりとりを見ていたりすると

どうにもやるせないというか、「俺の方が絶対に幸せにできるのに」と思う。

けれど、むしろ、そんな祐一だからこそ色々な人に好かれたり、

あるいは、名雪も7年間も待っていて、かつ祐一を許せたのかなぁ、と。

こんな祐一だからこそ、あゆも自分が身を引いてさえも祐一を幸せにしたいと

思えたのかなと思わずにはいらなくて、それがかなり悔しい所でもある。





鍵の3部作の中で僕はKanonが一番良くて、次にAirなんだけれど。

(僕個人の中では鍵としてのブランドが有効なのはCLANNADまでだと思っている。もちろんプレイはしていますけど)

なぜそうかと言われれば、Kanonの方が完成度が高かかったりするのと

観鈴ちんは恋人というより、なんていうかもっと神に近かったりするので

僕としては名雪の方がより身近で大好きだというのが、かなり強いと思う。

観鈴ちんの場合好きとかいうのがそもそもおかしい対象なんじゃないと思ってる)

僕の基本的な形成としてはオタクだから。美少女キャラには弱い。

後は、やっぱり祐一の魅力ってのがでかくて、祐一はなんか友達感覚というか

こいつならいいやみたいなのがあって、往人さんはなんかこいつとか言ってられない

孤高の人みたいイメージがあって(面白い事は面白いんだけど)、祐一の方がとっつきやすい。

それがKanonの魅力だと思う。





Kanonの魅力というか、僕がKanonに魅せられた一つの要因として選択肢の残酷性がある。

僕が誰を選ぶかによって、他の誰かが不幸になる。恐らく不幸と言って差し支えないだろう。

私的にKanonはまず最初に全員やって、その後に一番好きな人をやり直してやっと完結する。

物語同士がつながっているし、自分の選択によって、というより選択しないことによって

彼女たちのどういった人生を潰していたのか、それが浮き彫りにされる。

他の作品でここまで責任を押し付けられるゲームというのはあまりない。

特にKanonはバトルものであったり、殺し合いなどを含んだ作品じゃない。

それなのにも関わらずこういった選択が設けられている。





それを踏まえた上で、誰を選ぶのか。誰と一緒になりたいのか。

あるいは、祐一を誰とくっつけたいのか。この作品はループものなどではないから

プレイヤーからすれば一種の並行世界みたいなものだ。僕が選んだルートの数だけ

Kanonの世界があってその分だけ、誰かの思いが受け入れられて、また踏みにじられる。

踏みにじるのは僕だ。だから責任が問われる。けれど、その責任に足る結果もまた用意されている。

1つ1つの話が安直でなく真に迫っているからこそ、こちらも真面目に選ぶ気になるし、

また、その残酷さがあるからこそエンディングに至るまでの過程のキャラクターの描写に引き込まれる。

それに応えてくれるだけの価値がある。





僕が愛して今なお愛し続けるKanonという作品はそういう作品だ。


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http://www.nicovideo.jp/mylist/19720054

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nizisym
nizisym

lente エロゲ風動画を作成したりしています。 / nakari : たまにシナリオ書きます。

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