JR飯田橋駅前(東京・千代田区)のプラーノモールに「お肉酒場GINZA―TEI with長州力」という店がある。昨年9月にオープンした炭焼きグリルの肉を食べさせてくれる店で、看板の「with長州力」という文字が小さいように、プロレスラーの長州力(67)が必ずいるわけではない。
長州が会長を務める総合広告代理店「リデットエンターテインメント」が経営する飲食店で、長州が側面支援している(というより、ふらりと飲みに来るという感じだ)。定番メニューのGINZA―TEI肉盛り(税込み2400円)は、牛(カイノミ)、豚(極太フランクグリル)、鶏(ヤンニョム手羽先)が楽しめる。
現役プロレスラーの長州力は、6月26日の引退試合「POWER HALL2019~New Journey Begins」(後楽園ホール)を前に、新日本プロレスの道場で追い込み中。今でも新日本の道場で汗を流していることにほほ笑ましさを感じる。紆余曲折はあっても、OBであり、帰る故郷があるというのはいいものだ。自由契約になったプロ野球選手が古巣の球場施設を自主トレで使うような感じか。
牧野務店長(43)に聞くと「週1回は来てくれてますが、いつ来るかはお知らせしていません」という。本人が当日にブログで「そろそろ行きますか」などと書き込むことがあり、そこから予約の争奪戦となる。ランチ営業もしており、ランチは650円(「お肉酒場のお肉たっぷりカレー」)からあり、「赤身 牛カイノミやわらかステーキ(ライス・味噌汁・小鉢付き1000円)」がうまい。ランチで味を試して肉料理を気に入ってもらい、夜の「with」が“付加価値”という感じになるのが、店長のねらいだ。でないと、1回会って記念写真を撮れば、満足してしまうお客さんもいるからだ。
「みんなプロレスの話を聞きたがるけど、忘れた。もういいですよ。そんなもの、昔の雑誌をもってきて、そのまま書けばいい」と、取材でも過去のプロレスを語りたがらない長州だけに、店でも過去のプロレスの質問にはうんざりしている感じだ。お酒が入っても、その姿勢は変わることがない。
店の酒メニューは、5月末まで生ビールが280円、ハイボールが180円など、牧野店長が「マジで頑張りました」と近隣最安級の“革命”を展開しているが、やはりお薦めは「RIKI割」(600円)という泡盛のコーヒー割りだ。200年の伝統を持つ笠間焼きの窯元「製陶ふくだ」で「長」「州」「力」と直筆した陶器で飲む。
運良く本人が店にいた時の話。私が飲んでいた空いたカップを見て「俺が作ってやろう」と注いでくれた。琉球泡盛「残波」にコーヒーは「BOSS」のブラックだった。「こうやって指で氷を回しながら飲むんだ」と太い人さし指をマドラー代わりに氷をとかしていく。長州さんが飲んでいたカップと入れ替わっていたが、“兄弟杯”のようにありがたく頂戴した。
この時は、山口や長州藩など観光や歴史の話をしてくれた。記者としては、プロレスのことを聞きたかったが、空気を読んで違う話題を振ったことで、楽しい酒の席になった。長州にとって、ゆっくり飲めるのは、プロレスの話をしないお客さんとの空間なのだと実感した。
店長によると、いろんなイベントを計画しているという。引退試合の前後しばらくはプロレスの話を避けて通るのは難しそうだ。8日のブログでも「マジで疲れ 席を外す事が多いですね」「席を移るたびにプロレスの話をするのはさすがに」などと書き込んでいる。それでもプロレスの話を聞きたい人は絶えない。本当にゆっくり飲める日は、まだまだ先になりそうだが、それまでに長州がキレて来なくなることがないことを願う。(酒井 隆之)
◆お肉酒場GINZA―TEI with長州力 東京都千代田区富士見2の7の2 飯田橋プラーノ2階(TEL03・6261・6996)。営業時間はランチ11時30分~14時30分、ディナー17時30分~23時。土日祝定休。
◆長州 力(ちょうしゅう・りき)本名・吉田光雄。1951年12月3日、山口県生まれ。67歳。専大時代の72年にレスリングでミュンヘン五輪出場。73年に新日本プロレス入団。98年1月4日に東京ドームで引退も、2000年7月30日に大仁田厚との電流爆破デスマッチで復帰。6月26日の引退試合「POWER HALL2019~New Journey Begins」はチケット完売も全国の映画館でライブ上映される。
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