4月29日、私は成城とかいう高級住宅地に、場違いにも舞い降りた。
豪奢と言うよりは瀟洒な英国風フランス風邸宅という名のコンクリートで庭まで埋めちゃってハーブの植え込みきれいでしょう雑草一つ生えません事よそうそう奥様向かいのお坊ちゃま高校は海外留学って話だったんだけど実はこないだうちの息子が(以下略)。
野良猫一匹住み着く隙間だけはなさそうだと思っていたら、道に迷った。
駅に戻ったら結構近くのビルから明らかに録音物ではないデカい音が…ここがカフェ・ブールマン、名前の通り「演奏の聴ける喫茶店」である。
目測で30人ほどのお客様がひしめいて、こーしーをすすりながらじっとライブの始まりを待って…というか、ここも控室がないので出演者が一緒に座ったり立ったり近所に住んでる同級生連れてきたりしている。
一度座ると手洗いに行くのも容易でなく、最前列の人が動くとピアノ用の椅子まで動く。ある意味マニアにはたまらない空間だろう。
鬼怒無月・難波弘之セッション
1 スリー・カラー・オブ・ザ・スカイ
2 妖精写真
3 サン
4 クラゲ注意報
5 天球儀の人々
6 ウェーバー
(休憩)
7 薔薇と科学
8 百家争鳴
9 パーティー・トゥナイト
10 ラバーズ
11 クローラー・A
(アンコール)
1 グスコーブドリの伝記
ここのピアノは猫足で、なかなか良い音がする。一番低い鍵盤から出るあのゴイイ~ンという嫌な響きがない。楽曲も「どうだすごいだろう変拍子」や「俺マジパネエ転調」の類がなく、ぼんやり難波さんの横顔を見ながら聴いていられた。
「難波弘之の肖像・カクノのための習作」。よく似た角度の横顔数枚クロッキー写生していたのだ。
それにしても、随分と歌物が多いところに、「歌物>インスト」な発想が出てはいる。単に私が「インストに命を懸けているピアニスト」を聴きに行けば済む話なのだが、「どうしてもこの人の楽曲が聴きたい…インストで」という気持ちでいると、やはり切ない。
私が難波さんの何を追いかけているか、一生分かってはもらえないんだろうな。
そう思いながらコートに手を伸ばした瞬間、ふと隣の部屋を見ると…
(絵は明るめに表現しています)
不自然に暗くした室内に、白い顔がぬっと現れて私を見ながら笑っていた、心霊現象かと思って(中略)
そんなところで着替えてたの。