ざっつなオーバーロードIF展開 作:sognathus
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全話の続きみたいなものです。
モモンガが自身の名をアインズと改める宣言をした時のアルベドの憤りは果たしていかばかりのものであったか。
何故なら彼女はゲームから離れて自分たちを放置したモモンガ以外のギルドメンバーに明確に仄暗い感情を抱いていたからだ。
(よもや私たちを見捨てた者達が所属していた組織の名を自ら代わりに名乗るなんて……! ああでもモモンガ様っ、アルベドは貴方の命であるのならそれにも甘んじ……喜んで従います! そしていつの日にか愛しき真実の御名を再び及びできる日が来る時が一刻も早く来るように全身全霊を持って粉骨砕身致します!)
アインズと身体(?)の関係を持てた事によって、自分のアインズに対する関係の優位性を得たと確信していたアルベドは、前述した複雑な心境においても精神の安定を余裕を持って保つことができ、アインズの宣言を承諾した時の表情も立ち振舞にも一切の違和感をその姿を見るものに感じさせなかった。
その者の中には当然アインズも含まれており、彼は守護者統括の反応を見てアインズ・ウール・ゴウンの新たな出発を意識し、これから自分が歩む道に何が待ち受けるのか冒険心に心を踊らせるのだった。
「ではアインズ様、先ずは優先されるのは貴方様以外の至高の41人の捜索、という事で宜しいでしょうか?」
アインズの宣言から最優先事項として常にそれを意識するべきと考えたデミウルゴスがアインズに確認を取る。
その言葉にアルベドは心の中に冷たい水が流れるような不快感を感じたが、勿論そんな感情など表に出さずに微笑みを称えたまま傍らの敬愛している主人の反応を待つ。
その主人から出た言葉は、守護者含めたナザリックに住まう者なら一人残らず意外に思うものだった。
「いや、別に優先しなくていい」
「は……? あ、いえ。失礼しました。あ、いやしかし申し訳ないのですが恐れながら確認させて下さい。……それで本当に宜しいのですか?」
「強いて言うならこの世界に来る直前に私に会いに来てくれたヘロヘロさんくらいはできることならまた迎え入れたいが、まぁ見つける事があっても無理強いするつもりはない」
「そ、それは何故ですか?」
何となく自分の創造主に対するアインズの感情に距離を感じたアウラがついその身に感じた不安からアインズの許可を求めること無く質問を口走ってしまう。
アルベドはその無礼を険しい目つきで咎めるが、アインズはそれを手で制してやめさせると子供に対する話し方を意識したような幾分柔らかい声調で答えた。
「それはなアウラ。皆個々に理由があってナザリックを去ったからだ。彼らには自身の生活により直結した此処より優先すべき、優先したい事があったのだ。己の生活に直結しているとなれば何方を選ぶのかは明白だろう?」
「……」
アウラはアインズの言葉に暗い表情をして俯いた。
それはまるで母親に置いていかれた幼子のような様子で俯いて表情が見えない彼女の肩は心なしか僅かに震えて見えた。
その様子から彼女の心情を察したアインズは尚も優しく続ける。
「……だが、一つだけ断っておくが誤解してはならないぞ?」
「え?」
「皆は何もお前たちに愛想を尽かして去ったのではないという事だ。本当に愛想を尽かしたのなら自分の
「……」
「姿こそないが皆可能性を残して去っている。これはお前たちにまだ愛情がある証なのではないか?」
「アインズ様……」
「ナント心ニ響ク言葉……」
「ペロロンチーノ様……」
アインズの話を聞いた者たちは皆その言葉に心を打たれ涙した。
まだ自分たち創造主に見捨てられたわけではないと諭したアインズの優しさに、そして唯一人ナザリックに残って自分たちを導こうとしている彼の深い慈愛と偉大さに。
たが唯一人アルベドだけは主人の言葉に心は打たれたものの、複雑な表情をしていた。
アインズはそれに気付いて彼女に声を掛ける。
「何か言いたげだなアルベド。どうした?」
裡に秘していた気持ちをアインズに察せられたのはアルベドにとって想定外のことだったらしい。
彼女は主の素晴らしい言葉とはいえ、一瞬でもつい気を抜いてしまった自分の迂闊さを激しく後悔するように口の端を噛みながら真剣な表情でアインズに向かい合った。
「は、アインズ様私は……」
「ああ」(アルベドだけ明らかに皆と反応が違うな。これはやっぱり彼女の濃密な設定に俺が干渉した結果かな)
そうアインズが考えていた一方でアルベドも心を決めていた。
(私は既に身も心も愛しい人に捧げたいという満願を達成できた。そこまで近しい場所にまで受けれて頂いたというのに、ここに来て己の心の裡を秘すなんて……なんて無礼、なんて恩知らず。私はこの方に隠し事など一切しない……!)
「アインズ様、恐れながら私の偽りのない言葉で貴方の気分を害してしまうかもしれない事を先にお詫び致します」
「分かった、許そう。そして誓おう。お前から何を聞いても私がお前を厭わないことを」
「アインズ様……」
アルベドはアインズの慈悲深さと愛情に感動の涙を一筋流すと、表情を引き締めて話し始めた。
その時に自分の背中に感じる2つの殺気にも彼女は気付いていた。
一つは明瞭な頭脳と洞察力でアルベドが何を言いたいかを何となく察したデミウルゴスの激しいな敵意が混じったもの。
そしてもう一つは至高の存在に対して敢えて無礼を働こうとしているアルベドに、守護者の責務として厳しい態度を取るコキュートスのものだった。
「アインズ様私は……実は私は、此処にいる皆と違って貴方様を除いて残りの至高の方々に対して実は然程良い感情を持っておりません……」
「……!!」
いよいよデミウルゴスの殺気が背中越しでもまるで刃を突き立てられているように感じられるほどに強くなった。
傍らにいたコキュートスも彼ほどではなかったが武器を手にしていた手を握り直し、いつアルベドが不遜な行動をしても応じられるように全身に力を入れた。
他の者は守護者筆頭のものとは思えないアルベドの言葉にただ唖然とし、戸惑っていた。
「そうか。続きを話してくれるか?」
対するアインズは、意外にも特に驚いた様子も見せず落ち着き払った仕草で片手を振りアルベドに話を続けるよう促した。
「はい。何故私がそう思っているのと申しますと、単純に私は皆と違って至高の方々に見捨てられたという思いが人一倍強く、そしてそれに大して明確な不快感と憤りを持っているからです」
「……なるほどな。それはお前の創造主のタブラさんに対してもか?」
「……はい」
『!!!!』
神にも等しい自分の生みの親に対してもはっきりと不快感を持っていると断言したアルベドに、デミウルゴスとコキュートスも殺気を忘れてしまうほどに驚愕した。
彼らでもこれほど驚くのだから、それ以外のものに至っては最早言葉も出ないくらいに目を見張ってただただ呆然とアルベドを見つめることしかできなかった。
だがそんな状況においてもアインズだけはやはりいつも通りの様子で「ふむ」小さく頷くのだった。
「アルベド」
「はい。私は既に貴方様に満たされました。どのようなご処分でも謹しみ、喜んでお受け致しま――」
「お前は凄いな」
「え?」
『え?』
アインズの言葉にアルベドとその他の者たちの漏れた声が重なった。
「あ、アインズ様……?」
一体何が凄いというのか。
ただただアルベドが紛うことく万死に値するほど無礼なだけだというのに、何故そこで彼女を褒めるような言葉が出るのか。
それが全く理解できずについ動揺を隠せずにそう問うデミウルゴスを見ながらアインズは軽く笑いながら言った。
「はは、なぁアルベド。やはり私はお前は凄いと思う」
「え? え……? あ、あの……お、恐れながら何故そう思われるのですか?」
「ふむ。それはな、お前以外の者は皆創造主に大して敬愛の念を失わないという、私たちプレイヤーからすれば良くも悪くもユグドラシルのシステムの安定さを体現してみせたのに対して、唯お前一人だけはそれに対して自分なりの確固とした意見を持ち、それに対して疑問を呈し、そしてこの結論に至ったという他の者にはない
「は、はぁ……」
「有象無象を問わず
「えぇ?! あ、あの、それはそれはぁ……えぇっと、大変光栄ではあるのですがえーっと……」
アインズの反応にまさか創造主に対しても敵対心を持っている自分を褒めて頂きありがとうございます、など言うわけにもいかずアルベドは普段の冷静さをすっかり失って慌てふためく。
挙げ句に助け舟をさっきまで自分に殺気を送っていた
そんなアルベドの意向に沿うのは尺だったが、既に落ち着きを取り戻していた彼は姿勢をビシッと正すと、眼鏡のブリッジを指で上げてアインズに言った。
「お言葉ですがアインズ様。イレギュラーは不安定であるからこそイレギュラーと言うのかと。それを貴重なケースだからといって安定した私たちを差し置いて優遇するのは……恐れながら今後に一抹の不安を感じるのですが?」
「ははは、デミウルゴス、私は別にアルベドを優遇するつもりで褒めたのではない。さっきお前が言った通りアルベドの存在が
「そ、そうですか……。それならば安心ですが……」
アインズの言葉にその場は引き下がったデミウルゴスだが、反応はいまいち釈然としないといったもので、まだ完全には納得していないようだった。
アインズはそれを見越した上でアルベドに再び向き直り話し掛けた。
「アルベドよ」
「はっ」
「先ずよく自分の心根を正直に打ち明けてくれた。その誠実さは先のお前の話のおかげもあって私を二重に喜ばせてくれた」
「いえ、いえ! 恐れ多い事で御座います!」
「ふむ。だが」
「……はい」
アインズの話題の切り替えからアルベドは今度こそ覚悟した。
自分に下る処分はいかなるものでも進んで受けるつもりだった。
「どうか他のメンバーを見つけることがあっても不快に思っていたからといっていきなり攻撃なんかはしないでくれ。いや、しないとは思っているぞ? だが、皆を安心させたくてな?」
「は……? え、えぇ……はい」
アインズの言葉にキョトンとするアルベドを他所に玉座から立ち上がり宣言するようにアインズは声を大きくして自分の愛する部下たちを眺めながら言った。
「お前たちに問う! もし自分が生みの親が忽然と別れの言葉もなく消えたら何の疑問も悲しみの思いも抱かずただその現実を受け入れられるものか?!」
『……』
皆一様に黙っていた。
中にはそれこそ至高の存在に対する絶対の忠誠の証と言いたい者数人はいたが、もし至高の存在が唯一人残ったアインズすらもいなかった場合を考えると果たして自信を持ってそうだと言い切れるか疑問に思え、やがて異見する気は失せた。
「そうだ。それが普通だ。何も思わないなど有り得ない! 中には愚直に忠義を貫くことを美徳と思う者もいるだろう! だがそれは盲信だ! 親にただ依存しそれがいなければ自己を保つのが難しい
『……』
皆今度はアインズの言葉を落ち着いて清聴しているようだった。
アルベドもデミウルゴス、コキュートス、その他の者も皆静かに目を閉じてアインズの言葉の意味をじっくりと吟味していた。
「だからといって全て自分の意思に従ってやるのも勿論正しくない! それはただの暴走だ。だから私は、このアルベドの様に先ずしっかりと自己と己の意見を持ち、何か行動をする時は仲間に相談し、私にも必ず報告する程度の自立性を持つことを切に願う次第だ!」
「アインズ様……」
アインズの話にすっかり魅了され、感動の涙をアルベドは流していた。
「アルベド」
「は!」
「先のお前の創造主に対する負の感情、今の私の話を聞いてもなお捨てずに保ち続けたいと思う程のものか?」
「……いいえ、アインズ様の御心に絶対服従致します。発見した際は必ず報告し対応の相談を致します」
「うむ、それで良い。先にも言ったがこちらから探すような事はしない。何かの行動中に偶然見つけたら御の字くらいのつもりでいればいい。私は此処にプレイヤーとして唯一人残っている時点で、何よりも大事にし、守りたいと思っているのはお前たちだ。その為に私は常に全力を尽くすことを約束し、決してお前たちを自分から見捨てたりはしないと誓おう」
「アインズ様……!」
「はぁ……ぐすっ……流石は至高の存在の頂点に立つ御方でありんすね……。妾は一生アインズ様にお尽くしすると誓いんす……」
「ぐす……ぼ、僕感動しちゃって前が見えないや。お姉ちゃんは?」
「はぁ……」
「ふっ……ふ……。アウラは感動で声も出ないようですね」
「フフ、ソウ言ウオ前モイロイロト言葉ニ詰マッテイルヨウダガ?」
「ふっ……悪魔の……目にも……涙……ですな……。っ」
「はぁ……僕、僕……アインズ様にお仕えできて良かったぁ……」
「私たちプレアデスも幸せ者ね……」
「うふふ、早く至高の方のお役に立ちたいものね」
「私ぃ頑張るぅ!」
「流石アインズ様ッス! これで惚れるなっていうのが無理な話ッス!」
「でもできるならなるべく独り占め……」
「シズ、そこまでよ」
皆アインズを口々に讃え、絶対の忠誠を、ナザリックの為に全力を尽くすを心に強く誓い直した。
「ナザリック万歳! アインズ・ウール・ゴウン万歳! アインズ様万歳!」
きっかけが誰だったのかは判らなかったが、この唱和は次々とナザリックに住まう者に伝播していき、やがってナザリック全体に木霊する程の唱和になるまでに然程時間はかからなかった。
この話ではアインズがアルベドの心の裡を知ることになり、以後彼女が後ろめたいというか怪しい行動をアインズ様に内緒ですることはなくなるかもしれません。
初めっからナザリックの固い絆全開モード及び、今話でのアインズ様は過去の仲間には原作ほど執心を持っていないので、その辺りは穏やかに進むかもしれません。