アイテム番号: SCP-1464-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 回収されたSCP-1464-JP、およびSCP-1464-JP-2はサイト-1094の低危険度収容ロッカーに保管してください。SCP-1464-JP-1はサイト-1014の標準的Euclidクラス昆虫収容ユニットで収容し、15℃以下の温度を保ってください。また収容ユニットに入る際は遮光率80%以上のサングラスを着用してください。更に収容された個体は経過観察後に処分してください。SCP-1464-JP、SCP-1464-JP-1、SCP-1464-JP-2を用いた実験は、レベル4以上の職員の許可が必要です。現在Dクラス職員を用いたSCP-1464-JP装着実験は禁止されています。詳細はインタビュー記録-1464-JPを参照してください。
説明: SCP-1464-JPは紙製のピンク色の箱に入った12個のカラーソフトコンタクトレンズです。箱の前面には「輝く瞳で素敵な生活を!」、「つけていることを忘れるつけ心地!」と宣伝文が印字されており、裏面及び同封された説明書には使用方法の他「このレンズは2週間交換のコンタクトレンズです。適切な期間を超えた使用はお控えください」、「異常を感じた場合は直ちに使用を止め、眼科医の検査をお受けください」といった使用上の注意が表記されています。製造販売元の記載はありません。カラーソフトコンタクトレンズの彩色は現在までに6種類確認されており、パッケージ上では赤色を「ルビー」、青色を「サファイア」、緑色を「エメラルド」、白色を「ダイヤモンド」、紫色を「アメジスト」、複合色を「オパール」と表現しています。
SCP-1464-JPを装着した人物(以下、対象)は、「対象が魅力的な存在である」という認識を周囲に拡散させる異常性が付与されます。この認識は人間のみに作用する事が判明しており、Dクラスを用いた実験では視認した全ての職員が非着用時とは明確な差異を感じたと回答し「綺麗になった」「非常に美しい」といった感想を残しています。この異常性はSCP-1464-JP着用時にのみ発現し、外した瞬間に異常性は喪失します。また対象はSCP-1464-JPを着用している時間に比例して自身の虹彩が元来SCP-
1464-JPと同色であったと認識するようになりSCP-1464-JPの脱着を拒否するようになります。
SCP-1464-JPが適切な着用期間(18時間)を超えて使用された場合、対象は「眼球内を何かが蠢いている」等の症状を訴えます。一連の症状は対象の思考能力を著しく阻害し、複数の日常的動作が対象にとって非常に困難なものとなります。この段階でSCP-1464-JPは眼球表面と同化し、着脱が不可能となります。詳細は実験記録-1464-JP-1を参照してください。
SCP-1464-JPの着用から320時間が経過した場合、対象の眼球は硬質な結晶体に変化します。解析により、この結晶は着用したSCP-1464-JPの色彩として表現された宝石と完全に一致していることが判明しています。この過程で眼球内の水分は即座に蒸発しますが外見上の体積に一切の変化は見られません。眼球の結晶化と並行して側面から昆虫の歩脚に酷似した組成不明な結晶体(以下、脚と呼称)が発生します。この脚の一部は対象の睫毛の自生箇所から対象の眼窩外へと脱出します。眼球が完全に結晶化すると、内部に残っている脚を用いて視神経を自切した後に眼孔から脚を駆使して自脱します。この過程は非常に強い苦痛を伴う為、対象は多くの場合痛みによるショックで死亡します。脱落した眼球(SCP-1464-JP-1)は対象と同様に、視認した者に魅力的な存在であるという認識を発生させる異常性を有していますが、魅了効果の強制力が若干上昇している事が実験により認められました。また、SCP-1464-JP-1は自律行動が可能であり、より人口密度の高い場所に移動する習性を持つことが判明しています。
補遺-1: SCP-1464-JP-1は、球体部分を破壊する、或いは脚を除去する事によって異常性を喪失する事が実験により判明しました。
補遺-2: 財団エージェントが調査中、SCP-1464-JP-1を加工して制作されたと思われる装飾品(以下、SCP-1464-JP-2と呼称)がネット上のオークションサイトで売買されているのを発見しました。SCP-1464-JP-2はSCP-
1464-JP-1と同様、視認した人物に魅力的な存在であると認識させる異常性を保持しています。収容されているSCP-1464-JP-1を用いてSCP-1464-JP-2を再現する試みは全て異常性の喪失という結果に終わっており、どのように加工・製造されているかは不明です。
財団がオークションサイト上の販売ページを発見した段階では少なくとも███人以上が購入したと見られています。SCP-1464-JP-2を売買していた「華蟲細工師 琢磨」なる人物或いは団体を特定する試みは現在まで失敗に終わっており、引き続き身元の調査を行っています。
実験記録-1464-JP-1
対象: D-7527(20代女性)
目的: SCP-1464-JPの異常性の発現条件の解明。
方法: 対象にSCP-1464-JP「ルビー」を着用させ、様子を経過観察する。
結果:
経過時間 観察内容 装着時 対象はSCP-1464-JPをまるでつけていないように感じると報告。また対象を他のDクラス職員と対話させると全ての職員が「対象を魅力的に感じる」と報告した。 18時間後 対象は目の付近に違和感を感じると報告。SCP-1464-JPが眼球と同化し外す事が出来なくなる。 32時間後 対象は非常に強い目の痛みを報告。同時に対象の睫毛の5mm成長を確認。 64時間後 対象は顔面を虫が這い回っている感覚がすると報告。対象の睫毛が更に1cm成長しているのを確認。 128間後 虫が這い回る感覚が身体全体に進行。睫毛が更に2cm成長しているのを確認。 256時間後 対象は視界が狭くなったと報告。虹彩の一部が結晶化しているのが確認された。睫毛が更に4cm成長しているのを確認。 320時間後 対象は失明。虹彩の面積が拡大しながら結晶化しているのを確認。 336時間後 対象の睫毛が蠢き始め対象の眼窩へ突き刺さる。その後視神経を切断し対象の眼球は赤色のSCP-1464-JP-1に変態。対象はショックにより死亡。 発生したSCP-1464-JP-2は収容プロトコルに則って経過観察後、処分されました。
インタビュー記録-1464-JP
██県██市にて結婚詐欺の被害件数が2ヶ月間で前年度の約2倍に達するという事態が発生し、財団の注意を引きました。エージェント██による調査の結果、同市在住のとある女性が特定されました。聞き込みが行われた被害者全員から、「女性は非常に華美な装飾品を身に付けていた」という証言が得られた事を受け、SCP-1464-JP-2を用いた犯行であると推測したエージェント██は、警察官を装って女性を確保した後尋問を行いました。
インタビュアー: エージェント██
対象: ██ ██(以下██氏)
<録音開始>
エージェント██: はじめまして、あなたが██ ██さんで間違いないですね?
██氏: いったい突然捕まえて何するつもり!私は何も悪くない!
エージェント██: どうか落ち着いてください。あなたは複数の人間に接触し大金を騙し取っていますね?
██氏: 何のことを言ってるのかさっぱり分からないわ。あの人達は綺麗な私を見て進んで贈り物をしてくれたのよ。
エージェント██: …分かりました。それではこちらのネックレスについて質問します。こちらのネックレスはどこで入手されましたか?
██氏: (沈黙)
エージェント██: ██さん?
██氏: あらやだ私の化粧崩れてないかしら。ああ、そのネックレスね。ネットオークションで買ったの。綺麗でしょう?美人な私にぴったりで。
エージェント██: 販売者は誰でしたか?
██氏: 確か「華蟲細工師 琢磨」って名前よ。ネックレスの他にピアスも買ったから覚えてるわ。あの人が作ったアクセサリーを身に付けると皆私の方を見て私のことを「綺麗ね」って誉めてくれるの。私の言うこと何でも聞いてくれるようになるのよ。美人に生まれるって罪よねぇ。
██氏: ねぇあなたとってもイケメンね。連絡先交換しない?
エージェント██: …これでインタビューを終わります。
<録音終了>
██氏が所持する全てのSCP-1464-JP-2を回収後、記憶処理を施し解放しました。今回のインタビューからSCP-1464-JPおよびSCP-1464-JP-1、SCP-1464-JP-2の異常性には非常に強い強制力があることが分かりました。今後尋問の際に使用することを検討しています。Dクラス職員が異常性を悪用する恐れがある為、SCP-1464-JP、SCP-1464-JP-1、SCP-1464-JP-2を用いた実験は禁止されました。
インシデントレポート-1464-JP: 20██年10月28日、複数のソーシャルネットワークサービス上で、「真っ黒な人間が暴れている」という目撃情報が同時多発的に発生し、財団の注意を惹きました。財団は一連の騒動の情報規制を行い、事態の鎮静後、実体が目撃されたと思われる地域で現地調査が行われました。結果、当該地域で発生していた火災現場付近で画像に映っていた人物と同一の実体が発見されました。実体は全身が組成不明な結晶体で構成された人型実体で頭部にはSCP-1464-JP-1の胴体と全く同一と見られる眼球が██個以上見られた事から、財団はこの実体をSCP-1464-JP-3と指定しました。
発見時、周囲ではSCP-1464-JP-3の所有権を巡る口論や暴力行為が発生しており、中心部ではSCP-1464-JP-3に群がる様な形で数十体の死体が発見されました。この時、SCP-1464-JP-3の半径3m程度まで接近した全ての人間はSCP-1464-JP-3の美しさを褒め称えるような言葉を一頻り浴びせた後、絞首や手首の切断、舌を噛み切る等様々な方法で自殺を図る様子が見受けられました。SCP-1464-JP-3は終始、周辺の死体の摂食に従事しており、自発的に人間を襲う事は無かった為、無事収容されました。
収容後の遺伝子検査により、SCP-1464-JP-3は火災現場の喫茶店に勤務していた君島██氏であることが判明し、君島氏の自宅で開封済みのSCP-1464-JPが発見された事から彼女は事件当日SCP-1464-JPを身につけた状態であったと推測されています。
██博士の指導の下行われた複数の実験から、SCP-1464-JPを身につけた状態で対象が死亡した場合、期間の長短に関わらず対象は眼球が宝石化しSCP-1464-JP-3に変化する事が判明。変化から数分後、SCP-1464-JP-3は周囲の環境から自身の眼球を構成する元素を摂食により取り込もうとします。その際は人間、特に眼球部分を優先的に摂食する傾向にあり、摂食した眼球は頭部に宝石化した状態で再出現します。特筆すべき点として、SCP-1464-JP-3の眼球にはSCP-1464-JP-1と同様の魅了効果が認められており、頭部に集約された眼球の個数に応じて効果が指数関数的に増大する事が挙げられます。また、実験後の経過観察でSCP-1464-JP-3は不明な原理で周囲の人口密度を認識し、より密度の高い地点へ移動する習性を持つことが判明しました。
SCP-1464-JP使用者の死亡によりSCP-1464-JP-3の出現は大規模な人命の損失に繋がりますが、SCP-1464-JP-3が何時、何処で発生するかを予測する事は非常に困難です。財団はカバーストーリー「使用による健康被害」を発動し、テレビコマーシャルやインターネットを通じてSCP-1464-JPの使用を制限する試みを行っていますが、SCP-1464-JPに依存する対象を完全に抑制する事は不可能であると推測されています。以上の点を踏まえ、██博士からオブジェクトクラスのKeterへの格上げ及び特別収容プロトコルの改訂が申請されています。
付記: 変貌前の記憶が残っているとは到底思えないが、私はSCP-1464-JP-3が起こした一連の行為に何か意思めいたものが介在する様に思う。SCP-1464-JP-3の異常性と出現した際の周囲の様子から推察するに、奴は恐らく自己顕示欲にも似た原理で動いているのでは無いだろうか?まるで寄生した人間の「美しくありたい」という欲望を叶えてやったぞと見せびらかすように。何れにせよ、人間の求めた美しさがあのように醜悪な姿であってはならない。奴らの美しさが多くの命を奪うのなら尚更だ。 ー██博士