即位の儀式が退位の儀式の翌日となっているのも"譲位色"を帯びるのを避ける狙いがあるとみられており、閣議決定を経た最後のお言葉にも、それまで記者会見で繰り返し使ってきた「譲位」という言葉は用いられなかった。
先月放送のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』に出演した麗澤大学の八木秀次教授(憲法学)は「退位の実現は皇室を危機にさらすパンドラの箱。将来的な即位辞退をも認めることにつながれば皇統をゆるがしかねない」と指摘している。つまり、天皇自身の希望による退位が認められることになれば、即位の辞退を容認するのか否かについての議論が避けられず、国政関与を禁じた憲法4条との関係が問題になってくるからだ。
■天皇に”退位の自由”はあるのか?
「次の天皇が辞めたいとおっしゃったり、または天皇の位に就きたくないという人が出てきたりしたら皇室が"空っぽ"になる。あるいは憲法違反の退位をなさったということになると、新しい天皇も憲法違反の即位ではないかという、憲法上の根拠、正統性の問題にもつながってしまう。世論調査では退位に賛成する国民が95%だったが、私としては天皇陛下や皇族方には甚だ厳しい制度ではあるが、制度の安定性を考えたら、やむを得ず反対の5%の立場にならざるを得なかった。平成28年8月8日のお言葉は、普通に読めば"辞めたい"と取れるが、はっきりとはおっしゃらなかった。それは政府も国会で何度となく確認していて、内閣法制局長官は"天皇がその意思に基づいて退位するということについては、憲法との関係において、憲法第1条が規定する象徴天皇制のもとでふさわしいものであるかどうか。第2点として、憲法第4条1項が、天皇はこの憲法が定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しないと規定していることと抵触しないかどうか"と言っている。この"どうか"と言うのは、抵触するということだ」。
「譲位を認めるかどうかという問題と女性天皇・女系天皇の問題は、明治の皇室典範、そして現在の皇室典範を制定する際にも大きなテーマになった。とても1時間ではご説明できないが、八木さんの議論は粗雑だ。天皇が自身の位を退くということを表明することが憲法4条の規定に抵触するのか、ということについては議論が分かれている。退位の自由はあるという解釈もある。内閣法制局も、天皇の意思で全てをやってはいけないということを言っているのであって、天皇の意思がそこに介在することを排除しているとは思えない。そうでないと奴隷制になる戦後憲法学の正統な学者である東大名誉教授の高橋和之先生は、ご本人が表明する以外に退位の議論をスタートさせることができない以上、憲法上の問題にはならないとしている。八木さんに確認しておきたいが、平成28年8月8日のビデオメッセージはどういう性格の行為なのか行為なのか」(高森氏)。
■即位辞退の可否の問題も議論に
菅官房長官は先月30日、「この法律(特例法)は天皇陛下の退位を実現するものであるが、この法律の作成に至るプロセスやその中で整理された基本的な考え方については将来の先例になり得るものと考えている」として、将来も特例法で退位を認めることがあるとの認識を示している。
八木氏が「秋篠宮殿下のご発言は、ご年齢もあるので次に継いでいった方が安定的でいいのではないか、という好意的なものだ。また、そういうことはないと思うが、悠仁さまが仮に継承したくないということになれば、今の皇室典範にはそういう制度はないので、別にそういう制度を作るということだ」とコメントすると、高森氏は「皇嗣に不治の重患や重大な事故があるときは皇位継承の順序を変えることができる(皇室典範第3条)。公の場でご本人が"自分は皇位を継承するつもりがない"と明言されたとしたら、それはどう考えても重大な事故だ。そうでなければ無理やり強制的に天皇にさせたとなる。園部逸夫・元最高裁判事もそう解釈している」と話していた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)