【ゴルフ】46歳の宮本、令和初V2019年5月6日 紙面から
◇中日クラウンズ<最終日>▽5日、愛知県東郷町の名古屋GC和合C(6557ヤード、パー70)▽晴れ、23.6度、南南西3.6メートル▽賞金総額1億2000万円、優勝2400万円▽76選手(うちアマ3人)▽観衆7209人 節目の60回大会は、22度目のクラウンズ挑戦だったベテランが制した。首位と1打差の2位から出た宮本勝昌(46)=ハートンホテル=が、首位タイで迎えた18番で約10メートルのバーディーパットを沈め、最終盤までもつれにもつれた混戦に終止符。大会初優勝で、2年ぶりのツアー通算12勝目を遂げるとともに、元号が「令和」になって最初の大会の優勝者となった。昨季賞金王の今平周吾(26)が1打差の2位、最終18番まで優勝を争った貞方章男(40)=アイダ設計=は5位。ベストアマチュア賞は通算4アンダーで14位の金谷拓実(20)=東北福祉大3年=が獲得した。 18番、ピン下10メートルほどの宮本のバーディーパットは、フックしてスライスする複雑なラインを描いた。カップ直前でいったん止まりそうになったが、あらかじめそこに収まることが決まっていたかのように、最後の一転がりで沈んだ。打った本人も、ガッツポーズさえ忘れて一瞬ぼうぜん。あたりは騒然。60回記念大会、令和最初の優勝は、ツアーきってのエンターテイナーの、誰をも喜ばせるパフォーマンスで決まった。 1打差2位から出たものの、1番で入れたバンカーが目玉の状態となり、ダブルボギーでスタート。だが、その後はボギーの直後にバーディーを取り返す展開で、今平、貞方、グリフィンとのデッドヒートにもつれ込んだ。「ボールをフェアウエーに置く、そして大会5勝の青木(功)さんから聞いた通り、グリーンエッジ手前1メートルから攻めた」。18番はバーディーを決めなければ、先に上がった今平と並ぶ状況。「本音は周吾とプレーオフをしたら勝てないと思っていた。最後の一転がりは…何だったんでしょう」と笑いが止まらない。 かつては鉄人といわれ、2006~11年にかけ151試合連続出場のツアー記録をつくった。そんな体に異変があったのは、昨年6月。地面がゆがんで見える、直線がなくなっている、ゴルフどころか歩けない-。脳神経科でフィッシャー症候群と診断された。ウイルスによる視覚障害で、効果的な薬はなく、家で静養するしかなかった。 幸いにも2週間程度で症状が収まり、欠場は1試合ですんだが、ゴルフの調子は戻らず。昨季は22試合出場して14試合で予選落ち(マッチプレー1回戦負けを含む)。生涯獲得賞金10億円突破のレジェンドが、00年から守ってきた賞金シードを失った。「病気もあるが、昨季はまったくうまくいくことなく終わってしまった。年齢のせいなのか…」と悩んだ。 和合が苦手で、昨年まで21回出場して優勝争いに絡んだことはなかった。「和合は難しすぎる。ここで優勝することは一生ないと思っていた」という。それが一転、「これまでで一番びっくりな優勝」を果たし、「令和の男になりました!」とファンに宣言した。ツアーで最も笑顔の似合う男の顔は、いつまでも五月晴れだった。 (大西洋和) ◆番記者メモ宮本の復活優勝を後押ししたのは、いつでも練習に向かおうとする姿勢だった。時間ができれば、すぐに自宅から車で15分ほどの太平洋C御殿場C(静岡県御殿場市)で師匠の芹沢信雄が運営しているアカデミーに通った。 妻の朋美さん(46)は「家族で出掛けて夕方に家に帰っても、そこから練習に行くようになった」という。「昨年の調子が悪いときは、どうしていいか分からない感じだった。今は本当に幸せです」 連休を利用して一緒に応援に来た長男の中学1年・翔太郎君(13)と次男の小学5年・悠生君(11)には、ひつまぶしを食べに行った前夜の食事の席で「最終日は必ず1つ伸ばす」と約束したという。「お父さんの勝った姿は、かっこいいです」。こどもの日の最高のプレゼントとなった。 芹沢は、この大会で自身も7年ぶりに予選を通ったこともあってうれしそう。「本当によく練習するようになった。でも、これで気を緩めちゃいけないよ」とくぎを刺すことも忘れなかった。
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