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なつは 9年ぶりに実の兄 咲太郎との再会を果たしました。
(なつ)お兄ちゃん!
(信哉)咲太郎が 警察に捕まった。えっ!
しかし 咲太郎は 無実の罪で捕まりなつに 手紙で 別れを告げたのです。
(泰樹)お前… なつと結婚しろ。
(照男)えっ?なつと結婚するんだ。
一方 十勝でも なつを巡る問題がひそかに起こり始めていました。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
信さん ありがとう。
元気出しなね なっちゃん。うん。
じゃ。
(陽平)なっちゃん?
柴田のおばさん?
(富士子)あっ!陽平さん?
お久しぶりです!新宿の川村屋に思いがけない人が現れました。
どのくらいぶり?去年の夏に帰ったから 1年ぶりですね。
それは 東京の芸術大学に通う天陽君のお兄さんでした。
そうか…。
お兄さんに会えたのは よかったけど心配だね。
でも 私は信じています。
兄は 昔と 何も変わってないって。
お兄ちゃん…。
盗みだけは 絶対にしない。
正しいことだけじゃ生きられんかったのは昔も そだったし。
兄が 何か 悪いことをしてたとしても私だけは 兄のことを悪い人だとは思わん。
そうか…。
天陽は 俺のこと どう思ってるかな…。
えっ?
ずるいと思ってるかな…。
そんなこと 少しも思ってないですよ。
そうよ。
奨学金もらって大学の授業料は免除されてるんでしょ。
陽平さんは偉いわよ。俺にしたら あいつの方がずるいけどな。
どして?
いくら勉強したってあいつのような絵は描けないから。
卒業したら 北海道に戻らないの?
まだ分かりません。
今 大学の先輩の仕事を手伝ったりしてるんです。
あっ。
なっちゃんならきっと 興味があると思うな。
その仕事に?うん。
漫画映画を作る会社で働いてるんだ。
本当に!?ああ。
見てみたい?見たい!
どんなもの作ってんのかどうやって作ってんのか見てみたい!
見に来る?えっ?
いいの!?いいよ。
あっ… でも…。
行っといでよ。えっ?
せっかく 東京まで来たんだから少しぐらい楽しんできなさい。
うん。
そして なつはそこに 足を踏み入れたのです。
なっちゃん。
おはようございます。
おはようございます!
お邪魔します。(陽平)仲さん…。
(仲)遅刻だぞ!山田君 いくら まだ学生だからといって職場で デートをするのはいかがなものかな。
違います。 彼女は 弟の彼女なんです。
えっ?北海道から出てきたんです。
高校3年生なんですがアニメーション制作に興味があって見学を望んで ここに来たんです。
いらっしゃい。
(陽平)アニメーターの仲 努さん。僕に 声をかけてくれた 大学の先輩。
奥原なつです。
アニメーションを見たことある?はい!
子どもの頃に 学校の映画会でアメリカの漫画映画を見て感動しました。
まるで色のきれいな夢を見てるみたいでした。
うん。 今に それに負けないくらいの夢を作る予定だから。今日は ゆっくり見てってよ。
はい。 ありがとうございます。
じゃ あっちが 僕の机。
ここで 僕は美術背景画を手伝ってるんだ。
あっ 色がない。
ここでは まだ モノクロの短編映画を作ってるだけだから。
だけど これだって 白と黒だけでいろんな色を表現してるんだ。
本当だ… 何種類もグレーがある。
色がついてるけど白黒に見えてるだけかと思ってました。
この背景の上に重ねる作画を描いてるのが仲さんたちだ。
(陽平)まず 動きの基礎となる絵を描く。これを 原画といってその原画と原画の間をつなぐように中割りと呼ばれる絵を描いてゆく。これを 動画っていうんだ。この原画と動画を描く人をアニメーターと呼ぶんだ。
アニメーター…。
アニメーターが描いた絵を 一枚一枚透明なセルに トレースしそのセル画を 僕たちが描いた美術の背景画と重ね合わせて一コマ一コマ 撮影してゆけばアニメーションになるんだ。
なるほど… そういうことか。
私が ノートを ペラペラしてたのはそう間違いではなかったんだ…。
でも 本物は すご~い!
これ 前の作品のやつなんだけど記念にあげますよ。
えっ!これ 僕がデザインしたキャラクターなんだ。
ありがとうございます!
それから せっかく来たんでひとつ テストしてみようか?
テスト?
薪割り?この紙を 5~6枚使って2枚の絵の合間を描いて薪割りを完成させてごらんよ。
そんなこと 無理です!
ノートを ペラペラやってたんでしょ?それと同じだよ。
えっ…。
じゃ 頑張って。
頑張って。
え~…。
♪~
あの~…。
できた?いや できたかどうかなんて全然 分かりません。どれどれ。
(仲)うん…。どうですか?
いや… なかなか いいよ。
見せて下さい。
どう?
なかなか いいじゃないですか。
ちゃんと 重力を感じますよ。
下山君 君の持ってきて。
(下山)はい。
彼は 先月 同じテストをしてここに入った 下山克己君だ。
どうも。
これが 彼の描いたやつ。
こうやってパラパラってやって見てごらん。
うわ~。
動きが きれい!
全然違う。
あ… ちょっと見して下さい。あっ はい。
どう? 下山君。
いや いいですよ。
僕のより 迫力があるかもしれない。
うそです。 全然ダメです。 下手です。
もう いいです…。(下山)いやいや…。
僕たちが お世辞を言ってからかってると思う?
そんなに暇じゃないよ 僕たちは。
絵のうまい下手は経験によって変わるけど絵を動かす力があるかどうかはもっと大事な能力なんだ。
この絵には ちゃんと君らしさが出てたと思うよ。 うん。
本当ですか?本当だよ。
ちゃんと勉強すればアニメーターになれると思うな。
あ… なりたいとは別に…。
えっ 思ってないの?
(陽平)彼女の家は牧場なんです。彼女も 農業高校に通っていて酪農の勉強をしてるんです。
(仲)そうか… いや 残念だな~。
女でも なれるんですか?
そりゃ なれるよ!
だって 映画で お芝居していいのは男しかダメってことはないでしょ?
アニメーターだって同じだよ。
絵で 演技をするだけだ。
ここは 今 仮のスタジオでねもうじき 僕たちは会社ごと 東洋映画に吸収される。
そこに 新しいスタジオが出来上がるんだ。
日本の映画会社もいよいよ ディズニーに負けないくらいのアニメーション映画を作ろうとしてるんだ。
でも 私は 絵の勉強なんかしてないし…。
うん… 下山君。はい。
君は ここへ来る前 何をやってたっけ?
あ… 警察官であります。警察?
はい。警察で 絵の訓練をしていたであります!
バン! バン!ハハハ…。
勉強は どこにいたってできるよ。
(仲)まずは 人間のしぐさや動きをよ~く観察すること。日常のありとあらゆるものの中にアニメーターの訓練は潜んでるんだ。
なつは 自分の想像力を 夢をそっと動かしていました。
♪~
なつよ その日もらった夢を自分で動かしてみるか?
なつよ…。