米国企業を中心とする宇宙を舞台にしたビジネス展開は、とどまるところを知らない。
スペースX社は今月、火星に向けた巨大ロケットの打ち上げに成功した。日本のソフトバンクも出資するワンウェブ社は、途上国相手の高速インターネット通信網を築くため、600機を超す小型衛星を宇宙に飛ばす構想をかかげる。
米国の業界団体によると、16年の世界の人工衛星の売り上げ規模は30兆円近くにのぼる。この10年間で倍増した。日本も取り残されないようにしたい。
技術水準は高いが、商売面では競争力を欠く。それが日本の宇宙産業界の現実である。売り上げの9割は宇宙航空研究開発機構(JAXA)など政府機関からの発注や委託だ。海外はもちろん、国内の民間企業からの受注も勝ち取れていない。
原因のひとつは価格の高さにある。限られた宇宙関連予算を同じプレーヤー(企業)の間で分け合っていては、適切な競争原理は働かず、コスト高の体質は変わらない。異業種からの参入を促し、業界のすそ野を広げていかなければならない。
カギを握るのは、素早く意思決定ができ、機動力をもつベンチャー企業の育成だ。
日本の宇宙ベンチャーは約20社あるという。欧米に比べてまだ少ないが、月の資源探査や宇宙ごみの除去など、ユニークな事業をうたい差別化を図る。
ただ、ロケットや人工衛星を打ち上げ、会社としての経営を成り立たせるには一定の時間がかかる。失敗から得たデータを生かし、次のステップに挑む。そんな活動を、長い目で支える社会の仕組みが必要だ。
先頭をゆく米国はどうか。
火星探査や月軌道上の中継基地建設など、難度の高い技術開発は米航空宇宙局(NASA)が担い、国際宇宙ステーションへの物資の輸送などは民間に委ねてコスト削減をめざす。そんな「分業体制」がある。コンテストや入札を通してベンチャーを戦略的に育て、そこからサービスを調達する方式だ。
日本でも、JAXAが蓄積してきた技術やノウハウを民間が吸収しつつ、競争力を高めていく取り組みが欠かせない。
芽はある。16年には、JAXAの人工衛星の設計・製造から運用までをベンチャーが初めて落札した。また、市販の電子部品を使った低コストの世界最小級ロケットが、今月初め、JAXAの手で打ち上げられた。
さまざまなレベルで、こうした官民協業の実績を着実に積み上げていくことが大切だ。
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