これではギャンブル依存症の根本的な防止につながるとは到底思えない。
政府はカジノの具体的な制度を定める統合型リゾート(IR)実施法案の作成を進めている。先頃、方針が与党に示されたが、依存症への対策が不十分で、強い懸念を抱く。
案によると、日本人や日本在住の外国人の入場を「連続する7日間に3回」かつ「(同)28日間で10回」までに制限、入場料は2千円とするという。
週に3回なら十分に頻繁といえる。2千円が利用抑止につながるのかも疑問だ。
入場制限は、すでにカジノがあるシンガポールや韓国でもそれぞれ月に「8回」「15回」としている。10回とはいかにも間をとったようだ。「世界最高水準の規制」(安倍首相)との方針はどこへいったのか。
自民党の推進派議員からは「厳しすぎる」との声が聞かれるが、理解に苦しむ。狙いは海外からの観光客でも、日本の住民はいつでも行ける。入り浸らないようどう対策をとるかは重要な問題だと認識すべきだ。
内閣府の外局としておかれる「カジノ管理委員会」の機能にも、懸念がぬぐえない。
委員会はカジノの適正な運用を管理し、業者と反社会的勢力とのつながりの有無などを調べる。違反があれば改善命令も出す。新組織にこれだけの業務を担えるのか。省庁を新設するほどのことなのに、警察や他省の協力、メンバー構成など、詰めるべき点はあまりに多い。
IRに関しては25年の万博誘致をめざす大阪府・市が、人工島を候補地にあげ、日本維新の会代表の松井一郎知事が積極姿勢を示す。長崎県や和歌山県なども誘致に意欲をみせる。
だが、米国など海外業者の進出でかえって日本人の資産が流出しかねないとの指摘もある。カジノがなくても海外からの訪日客は昨年、2800万人を上回り、旅行で使ったお金も4兆円を超えた。いま求められる活性化策が何なのか。各自治体は住民の意見を聴く機会を設け、一度立ち止まるべきだ。
与党はIR実施法案とは別に、借金や家庭崩壊につながるギャンブルへの依存を広く予防し、回復を促すための依存症対策基本法案を国会に提出。野党も似た趣旨の法案を出している。こちらをじっくり審議することが先決ではないか。
すでに日本にはパチンコなどのギャンブル依存症が疑われる人が、推計で70万人(厚生労働省)いる。現実を踏まえて考えることが大切だ。
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