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 会社法の見直し作業を進めている法制審議会の部会が、先ごろ中間試案を公表した。

 社外取締役の登用を上場会社に義務づけることの是非など、4年前の改正で持ち越しになった課題も検討対象に含まれる。だが試案は、義務化について両案併記にとどまった。

 すでに東証上場会社の97%に社外取締役がいる。ためらう事情はないのではないか。それでも法制化は企業に過重な負担になるというのなら、「置くことが相当でない理由」を株主に説明するという、いまのルールを徹底して実践すべきだ。

 問題はむしろ、社外取締役が期待される役割をしっかり果たしているか否かだろう。

 立派な肩書をもつ人を迎えながら、問題を起こす企業は少なくない。幾つもの会社の社外取締役を兼ねる人も多く、仕事がおろそかになっているのではないかとの懸念もつきまとう。

 互いに牽制(けんせい)・監督して会社を適切に経営するのが取締役の務めだ。だが社内から起用された者はその使命を忘れ、「社長の部下」として行動しがちだ。だからこそ社外取締役には、会社や業界の常識などに縛られず、客観的な立場から経営をチェックすることが求められる。

 社外取締役は常にこうした問題意識をもち、会社もその人物が能力を発揮できる環境を整える。双方の努力があってはじめて、企業価値は向上する。

 試案は、取締役などの役員に人を得る方策の一つとして、会社補償の規定を設ける考えを示した。職務執行をめぐって責任を追及されたとき、弁護士費用などの経費や賠償金を会社が負担できるようにするものだ。

 負担する経費は「相当と認められる額」、また賠償金を肩代わりするのは、役員に「重大な過失がないとき」といった条件がついてはいるが、モラルハザードを招く恐れがある。会社と役員との間で利益が相反する可能性も高い。

 補償契約を結ぶときだけでなく、金銭を支払う際も取締役会などの決議を必要とする。会社が補償した額や役員名を開示する。そうした手続きを踏んでなれ合いを排し、株主の理解を得ることが欠かせない。

 このほか試案には、株主総会で株主が提案できる議案数を制限する考えも盛りこまれた。乱発されている現実も一部あり、やむを得ない措置といえる。

 むろん株主との対話を軽視・拒絶することがあってはならない。たとえ総会を乗り切っても、そのような会社経営は、いずれどこかでつまずくだろう。

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