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2019-05-06

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・そういえば、と思いだしたんだよ。
 いま、青山の「TOBICHI」で、
 国立科学博物館「大哺乳類展2」の連動企画として
 「モグラとクジラ 土にもぐる、海にもぐる」
 という展示をやっているのだけれど、これ、
 海の代表がクジラで、陸の代表がモグラって…? 
 いろんな経緯があって、そう決まったのだろうけれど、
 あえてつながりを考えるとしても、
 「ラ」で韻を踏んでるというくらいしか思いつかないよ。

 ところが、はっと気づいた! 
 どっちも、ぼくの個人的な「憧れ」の生きものだった。
 その理由も、わかっている。
 クジラも、モグラも、絵や写真でさんざん見ているのに、
 現実には見たことがないという共通点がある。

 実際には、少なめに一度ずつは見ている。
 アメリカ西海岸のロケで、ぼんやりと海を見ていたら、
 遠くに潮を吹きながら泳いでいるクジラがいたのだ。
 UFOを見たというくらいの気持ちになった。
 ちょっと撮影をストップして、みんなでそれを見た。
 モグラのほうは、小学生のころから、
 そのもこもこした穴だけはさんざん見ていたが、
 穴をつくった「黒メガネの生きもの」は見られず、
 こどもの残酷さで、穴に水を注いだりしていた。
 中年になってから、釣りに行った山中湖で、
 湖面に浮かぶ死んだモグラを発見したけれど、
 すくいあげてじっと見つめることはしなかった。

 つまり、どっちも、情報的にはたくさんあるのに、
 リアルには見たり感じたり思ったりしたことのない、
 いわば「準幻(じゅんまぼろし)」の存在なんだよ。
 フィクションとノンフィクションの間みたいな、ね。

 だから皆さん「TOBICHI」にじゃんじゃんおいでなさい、
 という結論にしたいというわけじゃないんだ。
 クジラも、モグラも、「ほんとにいるんだ」よなぁ、
 と感じるっていいもんだ、と思うんだよ。
 憧れのスターに、道でばったり出会うような、さ。
 少年時代のじぶんに教えてやりたい気分になったよ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
幻だと思っていた「10連休」というのも、現実にあったね。


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