脇本完全V 松戸・日本選手権
松戸競輪(千葉県)のG1第73回日本選手権(ダービー、優勝賞金6500万円)は最終日の5日、11Rで決勝戦を行い、脇本雄太(30)=福井・94期・SS=がHS8番手捲りで1着。第39回大会(1986年)の滝沢正光以来となる完全優勝を達成した。脇本のG1優勝は、昨年10月の寛仁親王牌以来で3度目。2着は1半4番手から先捲りを打った清水裕友、3着には1半最後尾からインを上昇した菅田壱道が入った。6日間の車券売上額は135億8168万円(目標140億円)だった。
■ヒーロー
勝ったのはやはり、大本命の脇本だった。平成に31回行われたダービーで誰も成し得なかった完全Vを、34大会ぶりに達成した。「昨年のリベンジができた。令和元年、格式のあるダービーで優勝できてうれしい。練習の成果が出ていると思う」。平塚での前回大会、逃げ粘れず3着に敗れて肩を落とした姿はどこにもない。1月、W杯ケイリンで2個目の金を獲得した自信を胸に、G13度目となる風格のウイニングランで、スタンドを埋めたファンの声援に応えた。
打鐘が響いても、8番手のまま。終HSまで踏み出しを待った。「自分のタイミングで仕掛けた」。踏み上げが清水と合ってしまったことで前団のあおりを受け、1角から3角にかけてイエローラインの外を踏み続けた。それでも「外々を回っても、残り1周なら踏み切れると思った」と問題にせず、直線で清水に決着をつけた。
昨年後半から始まった脇本の“一強時代”だが、他の選手との差は開く一方。今年わずか8走だが、賞金は9000万円超と断トツだ。「賞金の使い道は特に決めてはいないが、競技に向けてプラスになることがあれば、それに使いたい」と、まだまだどん欲。年末のグランプリ制覇、そして東京五輪での金メダルを目指して、ストイックな猛練習が続く。「五輪まで突き進む。止まることはない」。2020年の夏、競輪を知らない人々も巻き込んで、“脇本時代”を全世界に発信する。 (野口雅洋)
◆脇本雄太(わきもと・ゆうた)1989年3月21日生まれの30歳。福井市出身。福井県立科学技術高卒。94期で2008年7月デビュー。通算成績は731走で263勝、優勝43回(G13回、G21回、G36回)。通算取得賞金は5億5356万9600円。自転車競技では16年リオ五輪ケイリン出場(敗者復活戦敗退)、W杯の17-18年シーズン第4戦(チリ)と18-19年シーズン第1戦(パリ)のケイリンで金。180センチ、82キロ、A型。
【決勝戦VTR】
脇本が8番手に下げて、赤板の隊列は渡辺-田中、清水-松浦-原田、菅田、深谷、脇本-古性。赤板1半で深谷が内を突いて田中の後位に入って打鐘。
HSで深谷が3番手捲りを仕掛けたが、田中が2度のブロックで阻止。その後ろにいた清水は、1半で外を大回りしながら捲って3半では先頭も、HS8番手から捲っていた脇本がゴール前で清水をとらえてV。3着には、1半最後尾からインをグイグイと上昇した菅田が入った。
【戦い終わって】
清水裕(2着)腹をくくって先行した場合は(松浦に)番手から出てくださいと言っていました。(HS4番手。3番手捲りの深谷が田中に持って行かれたところで)ちゅうちょした。展開が絶好過ぎた。深谷さんの内か外かを迷って外を踏んだけど…。
菅田壱(3着)内が空いて一瞬、夢を見ましたね。3着だったけど、自分がやってきたことが間違ってなかったのは分かりました。
古性優(4着)あおりがあって最後は脇本君との連係が外れてしまったけど、自分のレベルアップを感じた。次が楽しみです。
渡辺雄(5着)赤板で誘導が外れて、ずっと焦って踏んでいた。深谷さんに合わせた次は脇本さんと思ったら、清水君が来ていた。
田中晴(6着)深谷君をブロック? 渡辺君のおかげで自分の走りもできました。今後も南関ラインの力になれるように、もっと頑張っていきたい。
原田研(7着)ライン3番手の走りは難しい。清水君が頑張ってくれたし、ついては行けたけど…。もっと勉強が必要ですね。
松浦悠(8着)車体が故障したし、力を出し切れなかったのは悔しい。今回は運がなかったのかな。
深谷知(9着)3番手になるところは想定していた。単騎だったし、待ったら(別線の捲りに)かぶると思って仕掛けたけど…。乗り越えられなかったのは自分の力不足です。