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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 「令和」の典拠となった万葉集にある歌の一節だ。<物皆は改まる良し>(『新日本古典文学大系』)。すべては新しくなるのが良い。色や形ではっきり見えるわけではないけれど、時代は改まり、令和元年である

▼世の中は、いつもの連休と変わらぬ穏やかさにみえる。平成の始まりにあった服喪の重々しさはもちろんない。生前退位による代替わりの静かな空気の中、ゆっくり平成を追想した方も、多いのではないか

▼元号が区切る時間には、進んでまた改まる輪のような時の感覚があろうか。天地創造から最後の審判へと、時が流れ、積み重なる聖書の世界を映したような西暦とは違う。改元とは来し方を顧みて行く末を思う貴重な機会であるようにも思える

▼時代を日記帳とするなら、元号は最初のページに書き込む目標に似ていよう。近代は昭和まで立派な元号の後に戦争が書き込まれた

▼平成は戦争のない素晴らしい時代だったが、「平らかならざる」大きな災害が記されている。美しい令和の巻も多難で埋められるかもしれない。次の時代も戦争がないよう、自然災害があっても負けないよう、静かな雰囲気の中で、過去の巻をひもとく時に思える

▼万葉集の歌は続く。<ただしくも人は古(ふ)り行くよろしかるべし>。ものごとは新しくなるのが良い、ただし人は古くなるのが良いだろうと。前の時代の知恵をつなげたい。

 

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