不登校だった高校生らが4月から、FM那覇で不登校や引きこもりの若者に向けた番組を始めた。寂しさや不安を和らげようと、社会人とのやりとりや街歩きで得た「役に立つ知識」と「社会とつながる情報」を紹介し「不登校を経験したからやろうと思えた。不登校はマイナスだけではないと伝えたい」と話す。

アシタネカフェの収録に臨む(左手前から)橘虎之介さん、宮城幸也さん、横田慶さん=4月18日、FM那覇

■「また明日ね」の意味

 4月17日の初回オンエア。宮城幸也さん(20)=沖縄国際大1年=と、紗耶音さん(18)=高校3年=が明るく番組名を紹介した。「不登校の不登校による不登校のためのラジオ番組、アシタネカフェ」。タイトルには「また明日ね」「明日への種まき」との意味が込められている。

 メンバーは全員、NPO法人ちゅらゆいが運営する子どもの居場所kukulu(ククル、那覇市)の利用者だ。それぞれ中学生の頃から不登校になり、ククルで仲間を見つけ、自身を肯定できるようになった。不登校の子どもとつながろうと、ラジオ制作に向けて動き始めたのは2年ほど前。来年3月までの1年間、1時間番組を持つ。

■話すことは苦手だけど…

 不登校の経験をFM那覇の番組で語り始めた高校生と大学生は6人。祈恵利さん(17)=高3=は「悩んでいた時は自分が悪いと責めていた」と振り返る。一時は食事も水も取らずに引きこもり、脱水症状に陥ったこともあった。

 「よく生きていたな」と思うほどの苦しみを脱した今は、自分なりの成長を感じている。「人と話すことが苦手だけど、ゲストとの電話やメールのやりとりができるようになってきた」。ラジオを通して「困った人の道しるべになれたら」と考えている。

 番組では、さまざまな職種の人との対談や、街歩きで出会った人へのインタビュー、メンバーが不登校時代に考えていたことなどを語るコーナーを設けた。メンバーは「玉城デニー沖縄県知事をゲストに招きたい」と夢を膨らませる。

■しんどい状況を外へ

 橘虎之介さん(17)=高3=は、今月15日の放送でメインパーソナリティーを務める。「不登校でもいろいろな人がいて、いろいろな道につながることを知ってほしい」と願い、番組作りに積極的に関わっている。

 メンバーは目下、編集作業のノウハウを習得中だ。台本作りから教えてきたフリーラジオディレクターの深谷慎平さん(43)は「自分たちで全ての作業ができるようになって、いつかみんなに『もう来なくていいよ』と言われたい。それが最終目標」とほほ笑む。

 NPO法人ちゅらゆいの金城隆一代表理事(45)は「学校に行かない子どもへの社会的偏見やプレッシャーが強い中、しんどい状況を受け止めて、外に向かっていったのはすごいこと」と見守り、「当事者中心の取り組みはなかなかないので、多くの人に聞いてほしい」と呼び掛ける。

 放送は毎月第3水曜日午後7時から。FM那覇のホームページからポッドキャストで聞くこともできる。