社説

社説[地位協定の比較調査]米軍に国内法適用せよ

2019年5月6日 08:47

 県基地対策課は「他国地位協定調査報告書(欧州編)」をホームページ(HP)で公開している。昨年現地調査したドイツとイタリア、今年調査したベルギーとイギリスの地位協定をまとめたものだ。

 日米地位協定の不平等性を浮き彫りにしており、抜本的な改定を政府に求めている県の論拠としても重要だ。

 米国は北大西洋条約機構(NATO)に基づき、欧州各国に米軍を駐留させ、NATO加盟国と地位協定を締結している。調査でわかったことは、各国とも補足協定などで米軍に自国の法律や規則を適用させていることだ。米軍の活動をコントロールし、主権を確立しているのである。

 何のたがもはめず、米軍のやりたい放題を許している日本とは大違いだ。日米地位協定は米軍が「(基地の)設定、運営、警護及(およ)び管理のため必要なすべての措置を執ることができる」と定めている。排他的管理権と呼ばれ、事実上の「治外法権」である。

 ベルギーのシエーヴル市長が「平時でも、何かが起きても、市民の安全のために確かめる必要がある」と立ち入り調査を当たり前とする姿勢が印象的だ。河野太郎外相は「NATO加盟国と地位協定が異なるということは当然あり得る」と後ろ向きだ。改定を求めていたかつての気概はどこへ行ったのか。

 ドイツは州や地方自治体の立ち入り権を明記し、緊急時は事前通告なしで入れる。イタリアやイギリスでも司令官が米軍基地に常駐するなど基地の管理権を確保している。

 外国軍隊に自国の法律を守らせることは主権国家として当然ではないのか。

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 日本では基地内で何が起きているのか、「ブラックボックス化」し、自治権が大きく制限されている。

 沖縄の米軍基地の特徴は住民生活の場と隣り合っていることだ。基地から発生する環境問題は住民の健康を脅かしかねない。

 航空機事故の捜査権は主権に関わる。日本では民間地の事故でも埒外(らちがい)に置かれるが、各国は現場規制したり、証拠品を押収したりするなど主体的に関与している。

 ベルギーでは低空飛行や、土日祝日の飛行を禁止。イギリスでは平日の午後11時から翌午前6時まで、週末は金曜日の午後6時から月曜日午前6時まで静音時間帯として飛行場の運用を禁止している。

 抜け穴だらけで、実効性に乏しい日米騒音防止協定との違いは歴然としている。

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 容疑者の起訴前の身柄引き渡しは「好意的配慮」を払うことになったが、実現はわずかだ。「妥当な考慮」を払うことになった立ち入り調査はほとんど認められない。米軍の裁量次第で、運用改善ではほとんど変わらないのだ。

 本土でもオスプレイを使用した日米共同訓練が行われ、戦闘機の低空飛行も頻繁だ。「本土の沖縄化」が進む。

 地位協定は1960年の締結以来、一度も改定されていない。玉城デニー知事が抜本的改定の先頭に立って、米軍に国内法の適用を求めた全国知事会、渉外知事会とも連携して動かしてほしい。

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