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 米国の株式市場で大幅な値下がりが相次ぎ、それに連動するかたちで日本を含む各国の市場も下落基調を強めている。

 米国市場は昨年来、過熱感が高まっていたため、一定の調整自体は自然な動きだ。足元の景気が堅調で、賃上げ傾向が確認されたことから長期金利が上昇し、それに株価が反応したのが下落のきっかけだった。

 確かに米国では、失業率が下がり、物価も上昇傾向が見られる。米連邦準備制度理事会も、そうした景気状況を踏まえ、緩やかな利上げの意向を表明している。株価の下落も、その幅が限定的であれば、こうした環境への適応といえる。

 問題は、この間の低金利を前提にした相場の中で、どの程度、市場に「不均衡」がため込まれていたかだ。株価上昇や相場の安定を前提にした投資が過度に広がっていると、相場が反転したときに下落が下落を呼ぶ悪循環に陥りかねない。

 金融機関の経営に波及すれば、影響はさらに拡大する。株式以外の資産や、企業の事業計画でも、金利上昇時にどの程度の影響がでるか、点検することが急務だ。

 もう一つの懸念は、トランプ米大統領の経済政策だ。物価が上昇し完全雇用に近いとみられる中でも減税と歳出増を志向しており、財政赤字拡大への懸念が金利に上昇圧力をかけている。景気に見合わない政策運営は、かえって経済の健全性を損ないかねない。

 日本への影響も大きい。金融市場間での波及に加え、実体経済面でも米国などの海外事業が収益の支えになっている企業は多く、為替相場の動きを含め、先行きを注視する必要がある。

 一方で、市場の動きに引きずられて企業が賃上げに慎重になれば、結局内需を冷やし、海外頼みが続くことになる。賃上げは着実に実施すべきだ。

 政策面では、利上げを進める米国と、なお緩和を続ける日本とでは、違いもある。ただ日本は、長期金利をゼロ近辺で釘付けにするという異例の金融政策をとっており、将来、利上げ局面に転じたときにはき出される「ひずみ」が、より大きくなる恐れがある。

 経済に過剰なショックを与えないような「出口」のあり方について、日銀は事前に十分検討し、説明を尽くすべきだ。

 また、そうした局面で、財政赤字の拡大が金利上昇圧力を強めるリスクについても、米国の現状は示唆に富む。景気の安定と同時に、財政への中長期の視点も忘れてはならない。

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