白血病などのがん治療薬の国内での製造販売が承認され、近々、公的医療保険が適用される見通しだ。高い効果がある一方、価格はかなり高額になりそうだ。保険でどう支えていくか考えたい。
治療薬「キムリア」は一部の白血病やリンパ腫などに効果がある。がん患者の免疫細胞を取り出し遺伝子操作によりがんを攻撃する力を高めて体内に戻す。
欧米では既に実績を上げている。臨床試験(治験)では、白血病の八割、リンパ腫の五割で効果があった。日本でも使えることは歓迎したい。
ただ、投与の対象は、通常の抗がん剤で治癒しなかったり再発などした患者に限定される。対象は年間二百五十人程度とみられる。
副作用も報告されている。治療の態勢が整った医療機関で適切に治療に当たってほしい。
治療は一回の投与で済む。効果も期待できる。だが、費用は米国では約五千万円にもなるという。日本でも高額が予想される。
公的保険から高額費用を給付する制度を使えば患者の自己負担は数万~数十万円で済む。しかし、今後投与する対象が広がれば保険財政に影響する。
高額医薬品については、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏の研究を基に開発されたがん治療薬オプジーボがある。一人当たり年間約三千五百万円かかることが問題となり、厚生労働省は薬価を柔軟に引き下げる新ルールをつくり対応した。
薬の効果に対し費用が適切か評価する制度も本格導入が検討されている。個々の患者に合わせたオーダーメードに近い高額医薬品が次々と登場する時代だ。費用を抑制する取り組みは必要だろう。
ただ、医療費抑制を狙うばかりに必要な医療が提供できなくなる事態はやはり避けたい。
患者が服用で余した残薬を減らしたり、医療機関の不必要な検査や治療を減らす取り組みなどを通して、財源を必要な医療に振り向ける努力は続けたい。
日本の公的保険は原則、傷病の治療に必要な医療は給付の対象にしてきた。誰でも一定の医療を受けられる利点がある。
だが、医療費が増え続けると今後、公的保険でどこまで医療を支えるのかという課題に直面する。例えば、薬局で買える薬は保険から外すなど対象範囲をどうするか考える必要に迫られそうだ。
「いざという時」を支えられる保険の姿を議論したい。
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