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 自衛隊員の命を奪い、民間人をも巻き込む重大事故が起きてしまった。徹底した原因究明が欠かせない。

 佐賀県神埼(かんざき)市で、陸上自衛隊戦闘ヘリコプターが墜落し乗員が死亡。住宅2棟が焼け、女児が軽傷を負った。

 現場は、事故機が所属する目達原(めたばる)駐屯地の南西約5キロで、田畑に囲まれた住宅地の一角だ。近くには小学校もあり、住民の不安が高まっている。

 原因究明の焦点は、事故直前の整備状況だろう。

 防衛省によると、事故機は飛行50時間ごとに行う定期整備後の試験飛行中だった。整備とあわせ、1750時間ごとのメインローター(主回転翼)関連の部品交換も実施していた。

 なぜ整備直後に墜落したのかが大きなポイントだ。

 部品自体の問題か、整備や部品交換の作業上の問題か。機体のハイテク化が進むなか、整備士の熟練度は十分だったのか。事故との関連について詳細な解明と分析が求められる。

 より広く事故の背景に目を向けることも不可欠だ。

 とりわけ懸念されるのは、陸海空の自衛隊機の死亡墜落事故が、今年度これで4件目と頻発していることだ。一連の事故の背景に、構造的な問題が潜んでいる可能性は否定できない。

 それを見極めるには、自衛隊の現場で何が起きているのか、自らの足元を見詰め直すことから始めなければならない。

 近年、自衛隊の任務が大きく広がり、一人ひとりの隊員にかかる負荷が増えている。そのことが日常の活動にどんな影響を与えているか。

 政治主導で米国製の最新鋭兵器の購入費が膨らんでいることも見逃せない。限りある防衛費のなかで、兵器の維持費や修理費にしわ寄せが及んでいるとの指摘がある。

 沖縄県で相次ぐ米軍機の事故やトラブルも、北朝鮮などに対する警戒任務の増加や、米国防予算の削減が背景にあると言われている。自衛隊も似たような構造を抱えていないか。

 陸自は今春、長崎県の相浦(あいのうら)駐屯地に離島防衛の専門部隊を発足させる。部隊輸送のため、防衛省オスプレイを佐賀空港に配備する方針だが、地元との調整は難航している。

 自衛隊の活動は住民の理解と信頼がなければ成り立たない。

 防衛省は実効性ある再発防止策をつくり、国民が納得できるかたちで公表する責任がある。

 そのためにも、一線の現場の課題を洗い出し、ひずみに目を向ける必要がある。

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