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 腑(ふ)に落ちない判決だ。国の責任で総合的な援護策を講じることを定めた被爆者援護法の理念に立ち返り、国は在外被爆者に等しく賠償すべきである。

 1975~95年に亡くなった韓国の被爆者31人の遺族が国に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁請求権が消滅する「除斥期間」が経過したと判断し、請求を棄却した。

 民法には賠償請求ができる期間を「不法行為から20年」とする規定がある。今回、国は在外被爆者を援護対象から除外したことが不法行為にあたり、被爆者が死亡した時点でその不法行為は終了したとし、「死後20年が過ぎている」と主張。判決はそれを受け入れた。

 ずいぶん都合のいい解釈である。在外被爆者の援護が後手に回った過去の国の対応からして、単純に時間軸で線引きなどできないのは明らかだ。

 旧厚生省は74年の通達で在外被爆者を援護法の適用外とし、03年の通達廃止まで健康管理手当などを支給しなかった。だが、最高裁が07年の判決で通達の違法性を認めたため、08年、舛添要一厚労相(当時)が「ただちに和解して賠償をお支払いする。ぜひアクションをとってほしい」と述べ、在外被爆者に提訴を呼びかけた。

 韓国の遺族らがこの10年の間に裁判を起こしたのは、国の呼びかけがあったからだ。

 判決は同様の訴訟が遅くとも96年に起こされているとし、そのころに提訴が可能だった、とも述べた。この点も経緯を十分にふまえたとは言いがたい。

 当時は74年通達がまだ生きていたころだ。異国から政府相手に裁判を起こすことには相当の負担や労力も伴う。司法はそうした背景にも思いをいたすべきではなかったか。

 これまで国は、在外被爆者約4千人について本人や遺族と和解し、被爆者1人につき110万円を支払っている。この中には死後20年が過ぎた被爆者三十余人も含まれる。16年に「除斥期間に気付いた」と突然、死後20年が過ぎた遺族との和解を拒んだのは筋が通らない。

 判決は「単に不注意で気づかなかったに過ぎない」としたが、同じ立場なのに差別を生む国の対応をあっさり許容する判断には疑問を感じる。

 被爆者や遺族の実情を理解した積極的な救済こそあるべき援護行政の姿だ。大阪と広島、長崎各地裁では、死後20年が過ぎた在外被爆者百数十人の裁判が続く。国は争うのをやめ、被爆の事実が裏付けられれば、賠償に応じるべきだ。

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