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 茂木敏充経済再生相(衆院栃木5区)の秘書が、選挙区で線香や手帳を配布していた。違法な寄付に当たるのでは、と野党が国会で連日追及している。

 買収行為を防ぐため、公職選挙法は公職の候補者や関係団体などが、有権者に金銭や物品を寄付する行為を禁じている。

 ただ政党支部については例外として、候補者の氏名を表示したり、氏名を類推されたりしなければ禁じられていない。

 茂木氏の言い分はこうだ。

 線香や手帳に私の氏名は記していない。政党支部の党勢拡大のための活動であり、配布したのは政党職員である秘書で、私自身は配っていない。だから公選法にのっとった活動であり、違法性はない――。

 だが、秘書から線香などをもらった人は「茂木氏から」と受けとめるのが普通ではないか。

 茂木氏は国会で、線香や手帳は資金管理団体で購入し、政党支部に寄付して配ったと説明した。実質的に、寄付が禁じられている関係団体からだったということではないのか。

 「われわれは、国民の信頼に値するより高い倫理的義務に徹し、……清廉を持し、かりそめにも国民の非難を受けないよう政治腐敗の根絶と政治倫理の向上に努めなければならない」

 85年に衆院で議決された政治倫理綱領の一節である。

 ただちに法に触れないとしても、法の趣旨に従う。国会議員として、まして閣僚として順守すべき当然の責任ではないか。

 小野寺五典防衛相には、苦い経験がある。当選1回だった99年、氏名入りの線香を選挙区で秘書らと配って書類送検され、翌年、議員を辞職。公民権停止3年の略式命令を受けた。

 線香に氏名を記したか否か。政治家本人が配ったどうか。それらを除けば茂木氏のケースとよく似ている。本来なら政党支部についても、選挙区での寄付をすべて禁じるのが筋ではないか。法の不備があるなら正すのが国会の役割である。

 疑問なのは、公選法を所管する野田聖子総務相の答弁だ。

 茂木氏の場合の違法性については「総務省は個別の事案について実質的調査権を有していない」としながら、秘書が氏名の表示のない政党支部からの寄付を持参することは「ただちに氏名が類推される方法とはいえない」との見解を示した。

 これでは秘書が政党支部からとして持って行けば、氏名を書かなければ、どんな寄付でもOKとなりはしないか。

 それでいいのか。国会でのさらなる議論が欠かせない。

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