馬鈴しょでん粉工場における排水の水質および悪臭発生状況の実態調査を2007年7月から2008年5月にかけて行った．その結果，浸透池に貯留されたデカンター排水やセパレーター排水の臭気指数は43～51と高い値を示した．特にデカンター排水は有機性汚濁分が高濃度であり，浸透池での貯留時間の経過とともに嫌気的分解が進行するために悪臭を発するようになると考えられた．浸透池の風下側周縁部では低級脂肪酸主体の強い腐敗臭が感知され，臭気指数の最大値は32と高く，周囲への広範な影響が懸念された．貯留水を畑地に散布した直後の臭気指数は最大で25であり，畑地周辺への影響が懸念されるレベルであった．排水から発生する悪臭成分のうち，ノルマル吉草酸，イソ吉草酸，ノルマル酪酸が現場の臭気に大きく関与していると考えられ，これらの排水中濃度から推算した臭気指数が現場の臭気指数を相対的に評価する指標となり得ることが示唆された．

• 1) 農林水産省生産局農産部地域作物課：（2012），“いも・でん粉に関する資料”，p49-67，農林水産省．


• 2) 1）のp77-82．


• 3) 1）のp190-209．


• 4) 文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会：（2010），“日本食品標準成分表2010”，文部科学省．


• 5) 神山桂一，井上一郎，高安三次：馬鈴薯澱粉工場における廃水処理の問題点と生物化学的処理実験，用水と廃水，3，967-976，（1961）．


• 6) 黒田久仁男：北海道における馬鈴薯澱粉製造廃水事情について，水処理技術，6（10），17-32，（1965）．


• 7) 神山桂一，真柄泰基：馬鈴しょデンプン工場の廃液処理法に関する研究，北海道大学工学部研究報告，46，17-34，（1968）．


• 8) 後藤健三：馬鈴薯搾汁の利用および馬鈴薯澱粉工場の廃水処理問題に関する実験的考察，帯広畜産大学学術研究報告第I部，5，666-675，（1968）．


• 9) 山口　昇，秋山史郎：馬鈴しょ澱粉排水の処理方法，澱粉科学，26，35-50，（1979）．


• 10) 吉町晃一：馬鈴しょでん粉製造業における排水処理，工業用水，328，50-59，（1986）．


• 11) 池畑　昭，熊谷裕男：馬鈴薯でん粉工場廃水の脱臭について─オゾン，塩素および曝気による脱臭効果─，公害と対策，4，575-579，（1968）．


• 12) 新宮宏昭，椎原勝彦：馬鈴薯でん粉工場排水処理の実用化技術，資源環境対策，34，179-186，（1998）．


• 13) 竹口昌之，蓮實文彦，真柳正嗣，佐藤正昭：馬鈴薯でん粉工場排水の現状とその処理技術，日本海水学会誌，65，285-288，（2011）．


• 14) 押野見良司（全国農業協同組合連合会編集）：（1999），馬鈴しょでん粉の製造と品質管理，“馬鈴しょでん粉　特性とその利用　改訂版”，p81-85，全国農業協同組合連合会．


• 15) 気象庁：過去の気象データ検索（http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/）．


• 16) 環境省環境管理局大気生活環境室編：（2002），“嗅覚測定法安全管理マニュアル”，環境省．


• 17) Khan, I., Brimblecombe, P. and Clegg, S. L. : Solubilities of pyruvic acid and the lower （C₁-C₆） carboxylic acids. Experimental determination of equilibrium vapour pressures above pure aqueous and salt solutions, J. Atmos. Chem., 22, 285-302, （1995）.


• 18) 永田好男，竹内教文：三点比較式臭袋法による臭気物質の閾値測定結果，日本環境衛生センター所報，17，53-65，（1990）．


• 19) におい・かおり環境協会編：（2012），“ハンドブック悪臭防止法 六訂版”，p47-96，ぎょうせい．


• 20) 寺本正明（化学工学会編集）：（1999），ガス吸収，“基礎化学工学”，p86-103，培風館．


• 21) 中央環境審議会大気部会悪臭専門委員会：（2000），“悪臭防止対策の今後のあり方について（第三次報告）─臭気指数規制に係る排出水における規制基準の設定方法について─”，p2-10，環境省．

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