【レッツトライ!】文系が解いても興味深い!考えさせられる医師国家試験3選


しらべぇ1117ドクター

「もっと理系科目ができていたら、医者を目指していたのに…」という文系の方も多いのではないでしょうか。でも、医学部の学生さんって卒業した後、どうやって医師となるのか、ということはあまり知られていない気がします。

まず大前提として、医師免許を取得するには、医学部の最終学年6年生の時に受験する医師国家試験で合格することが必要。それから研修医を経て、医師となるわけですが、今回は医師免許を取るために必要な国家試験の問題の中から文系でも、いや、文系だからこそ思わず考えさせられる問題を3つご紹介したいと思います。

 

■出産後から「潔癖」になった(100回医師国家試験)

30歳の女性。昨年第一子出産後、赤ん坊に汚れが付いてはいけないと過剰に考えるようになった。外出から帰ってくるとすぐ衣類を着替え洗濯し、家の中の全てを毎朝消毒しないと気がすまないようになってきた。

最も考えられるのはどれか。
a 適応障害 b 強迫性障害  c 解離性障害 d 社会不安障害  e身体醜形障害

答えは、b。不合理だと分かっていても、その行動を繰り返してしまう精神疾患の一種だそう。よくテレビで芸能人が「潔癖」であることが面白おかしく取り上げられていますが、笑い事で済まされない場合も少なくはないようです。

 

■芥川龍之介の抱えていた疾患は?(104回医師国家試験)

芥川龍之介著「歯車」の一部を以下に示す。
僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?—と云うのは絶えずまわっている半透明の歯車だった。僕はこう云う経験を前にも何度か持ち合わせていた。歯車は次第に数を殖やし、半ば僕の視野を塞いでしまう、が、それも長いことではない、暫くの後には消え失せる代わりに今度は頭痛を感じはじめる、—それはいつも同じことだった。

「僕」の症状から最も考えられる疾患はどれか。
a 緑内障 b 片頭痛  c 脳内出血 d 緊張型頭痛  e 慢性硬膜下血腫

この答えは、bの片頭痛。「絶えずまわっている半透明の歯車」は片頭痛が起きる前兆と考えられるのだそうです。文学的な比喩ではなかったなんて文系からすると、何だか元も子もない気がして、悲しい思いがするのではないでしょうか。ですが、医者は些細なヒントからも疾患を見つけ出すようです。こうやって文学作品まで国試の問題にするなんて驚きですね。

■体が自分のものであるという感覚がない(102回医師国家試験)

25歳の男性。大学院に在籍し毎日研究に励んでいるが、ここ半年思うようにはかどらず焦っていた。最近、何をやっても実感がわかず、自分の体さえ自分のものであるという感覚がない。町並みも人々も妙によそよそしく現実感がないように感じられる。

症状はどれか。
a 錯覚 b 妄想  c 離人 d 両価性  e 感情鈍麻

答えは、c。これは、自意識に見られる障害だそうですが、文系からすると、「これが病気となると、偉大な作家たちは一体どうだったのだろうか…」という気がしてくることでしょう。「自分の体さえ自分のものであるという感覚がない」だなんて小説のワンフレーズとしてどこにでも登場しそうです。

夏目漱石は著書『吾輩は猫である』の中で、自身がモデルと思われる珍野苦沙弥先生の日常生活を猫の視点から面白く描いていますし、安部公房は自身の著書『棒』で、「気がつくと私は一本の棒になっていた。」と、ビルから落下する人を他の人を「棒」として表現しました。

「こんな症状を感じたことがある…」と思ってしまった筆者は、不謹慎なのかもしれません。病気とそうでないものをどこでどう線引きをし、診断しているのでしょうか。医者が患者を診断するのはとてもナイーブなこと。難しいことだということが実感させられます。

いかがでしょうか。問題を読みながら、「これだけの情報で診断する医者ってまるで探偵みたい!」などと文系の筆者はのん気に思ってしまいましたが、実際の現場では限られた情報だけで、正しい判断を行ない、病気を見つけなくてはならないのだから、当然といえるのかもしれません。名探偵のように疾患を見つけ出し、解決してしまう、お医者さんが増えることを期待するばかりです。

(文/しらべぇ編集部

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