女性議員の夫へ突撃インタビュー!3足のわらじで妻をサポート―後藤なみ東京都議

政治山 / 2018年4月26日 11時50分

 今年の1月、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相が妊娠を発表し、6週間の休みの間は副首相が首相を代行する予定、というニュースが報道されました。まだ女性のリーダーが珍しい日本では、このようなニュースは何世紀先になるだろう、とため息をついてしまいました。ただ日本においても、国会議員の間で超党派の「ママパパ議連」が立ち上がったり、地方議会では議員になってから出産をした経験のある議員ネットワークができたり、子育てと政治家という仕事が両立できる環境づくりの議論が芽を出し始めています。

 そんな中、2017年の東京都議会議員選挙において、妊娠中に出馬した候補者のことをご存知でしょうか。そのうちの1人が現在、都議会議員として活動されている後藤なみさんです。妊娠・出産を機に退職することは少なくなってきた昨今ですが、選挙や議会活動と妊娠・出産・子育ては両立できるものなのか、できているとしたらどうやってやりくりしているのか気になりませんか?

 今回は、都議会議員後藤なみさんを“支える”、という言葉よりももっと力強い、“一緒に”活動している夫の中島晃一郎さんからお話しを聞き、ワークスタイルや仕事と育児の両立について聞いてみました。前回に続き、学生インターンがインタビューを担当し、政治家の夫の気持ちを聞き出してもらいました。

東京都議会議員 後藤なみさんの夫:中島晃一郎さん(左)
東京都議会議員 後藤なみさんの夫:中島晃一郎さん(左)

週3日勤務のサラリーマンで3足のわらじ

Q:現在の職に至るまでの、職歴を教えていただけますか?

 妻は生命保険会社での勤務を経て、株式会社リクルートキャリアに転職。介護業界の雇用問題を解決する仕事に従事する中で、政治の世界から介護・福祉の課題解決に貢献したいという考えがあり、小池都知事が主宰する「希望の塾」に入塾しました。2017年の東京都議会議員選挙に足立区から出馬し、初当選させていただき、現在都議会議員として活動しています。

 私も、株式会社リクルートキャリアで新卒採用のコンサルティング等の仕事を経て、育児と妻の政治活動のサポートを両立させるため、週3日勤務のサラリーマンとして勤務できる会社に転職しました。現在は「3足のわらじ」(サラリーマン・育児・妻の秘書)として活動をしております。

Q:リクルートという同じ職場で働いていた時から、お二人とも選挙・当選を機に大きく職を変えられていますね。そこにはどのような経緯があったのでしょうか。

 先に述べた「希望の塾」に夫婦で通い、妻が都議会議員候補公認に向けた選抜試験となる「都議選対策講座」に申し込んだときから応援していました。志を持ち都議会議員として東京都の政治を良くしてくれるのであれば、私も頑張ってサポート&応援をしたいと思いました。彼女が志すと言ったときから、そこは一蓮托生で“一緒に”頑張ると決めていました。

 特に妻の場合は選挙後に出産も決まっており、仕事と家庭に大きな変化があったので、本人のみが議員としての仕事と育児を頑張るのではなく、夫婦でチームの様に頑張る必要性があると感じました。そこで育児や妻の仕事のサポートができる物理的な時間を確保するために、働き方自体を週5⇒週3に変えました。

家事も育児も50:50

Q:サポート・応援をするために中島さんの生活スタイル=仕事を変えるという行動力がすごいと思います。そこで葛藤はなかったのでしょうか?

 葛藤は特にありませんでした。ただ実際に生活をしていて大変なことは多々あります。

 私たちの家庭の場合、夫婦で家事・育児を50:50の比率で分担していますが、それでも妻の議員としての仕事は非常に多忙です。議会が深夜にまで及ぶ時もありますし、政策の勉強会や視察をどうしても長時間行う時が多々あります。その時は完全なワンオペ育児になります。

 仕事をして家に帰ってきた後に、ミルクをあげ、お風呂に入れて、おむつを替えて、寝かしつけをして・・・。世の中のお母さんが当たり前にしている育児ではありますが、やはり大変です。世の中のお母さんは凄いなと改めて感謝・尊敬しています。

 また、当たり前ですが時間的な制約がかなりあるので、仕事も育児も短い時間で高いパフォーマンスを上げられるよう意識しています。週3のサラリーマン。育児を妻と50:50でやっているというと驚かれることが多いですが、女性の社会進出と同時に男性が家庭の仕事の分量を増やすことは当たり前だと思っています。その上で生活サイクルの変化にあわせて働き方を変えることはいたって普通のことなのではと思います。

後藤議員が多忙な時はワンオペ育児になることも
後藤議員が多忙な時は完全なワンオペ育児になることも

非常に古い政治の世界

Q:「生活サイクルが変わる中で働き方を変える」ということが前提にあり、現在はお子さんが小さいこと、後藤さんが都議を務められているという中で、中島さんが仕事のボリュームを減らしてサポートされているということですね。サポートすること、またサポートしている立場から見て議員の仕事をどのように感じていらっしゃいますか?

 間接的ではありますが私が妻のサポートを頑張ることで妻のパフォーマンスが向上し、さらに東京都や足立区が良くなると真剣に思っています。その上でとてもやりがいのある仕事ができていると感じています。

 ただその一方、政治家という仕事の体質が非常に古く、女性議員が男性議員と同じように活動をすること自体が非常に難しいとも感じました。

 例えば、普通の民間企業の就業開始時間は、9時から始まる所が多いと思うのですが、議会が始まるのは(都議会の場合は)13時からです。もちろん様々な理由がある上での開始時間ということは認識しておりますが、13時~議会を開始するので議論が終わるのが深夜になってしまう。子育てをする議員からすると、赤ちゃんを預かってくれる人や見てくれる人がいないと到底育児と仕事のバランスを保つことができません。

女性議員の2期目を阻む、古い慣習

Q:3割以上の女性議員が2期目の立候補を断念しているというデータ(WOMAN SHIFT調べ)があります。おそらく、古い慣習や体質も一つの要因だと思います。2期目についてどう思われますか。

 妻にはぜひ挑戦してもらいたいと思っています。妻は46,263票もの御支持をいただき、都議会議員となったので、その期待に応える上でも頑張ってもらいたいと思っています。

 多くの女性議員が2期目に挑戦できないのは、やはり政治の古い慣習が影響していると思います。

 例えば地域活動。地域のイベントや飲み会に足を運ぶことは地域の方々に知っていただき、ご意見をいただく大事な機会であるとは思っていますが、議員活動は本当にその活動だけでいいのか疑問を感じます。

 議会での態度や質問等、本当に議員としてどの様な活動をしているか見極める必要があると感じます(議会中に寝ている・議場で全く質問していない議員がいることに問題意識を感じます)。

 もし仮に、地域の会合ばかりに参加している議員が称賛された場合、子育て世代の女性議員にはやはり不利になることが多いと思います。例えば、子育てをしているママ議員は夜の会合に参加しにくいですし、時間的な制約はどうしても多くなると思います。その様な中でも女性議員が公平に評価され、選定される必要があると感じています。※1

声なき声が反映される政治に

Q:最後に、政治家を志している女性にメッセージをお願いします。

 政治に興味を持ち、志を持っていることはとても素敵なことだと思います。その志を失わずにチャレンジし続けてほしいです。

 男性・女性関係なく志のある方が政治の世界にチャレンジすることで、まだ政治の世界に反映されていない声なき声が反映されると思っています。そんな姿に全力で応援をする男性の方も私以外にも多いと思います。

インタビューした学生インターンと一緒に
インタビューした学生インターンと一緒に

<インターン生の編集後記>
 女性議員が政治と育児を両立させるには、夫の協力が不可欠であることは容易に想像できましたが、実際にお話を伺うと、その協力は想像を超えたものでした。生活に大きな犠牲を払わなければならない現状の仕組みを変えていかなければ、この先も女性議員が増えることはないでしょう。

 一方で、夫婦で一つのチームとして政治の世界に挑戦し、夫も妻の仕事を支えることを楽しんでいる姿を拝見して、政治の仕事が魅力的に感じられました。妻が議員である夫を支えるというのはよく聞くことで、「あの政治家がここまであるのは奥さんのおかげだよ!」なんていう話もよく聞くところです。

 中島さんのように、夫が議員である妻を自らの働き方を変えて支えるというのはまだまだ珍しい事例ではありますが、気負うこともなく、柔軟な働き方を選んでいるという印象を受けました。これから女性議員が増加していく中で、きっと男女ともに多様な働き方も増えていくのではないでしょうか。

<WOMAN SHIFTの編集後記>
 今回、中島さんの力強いサポートの背景にある、「間接的ではありますが私が妻のサポートを頑張ることで妻のパフォーマンスが向上し、さらに東京都や足立区が良くなると真剣に思っています」というお言葉は非常に心に響きました。政治はそれがすべてだと思っています。また、都の動きは国にも影響するので、日本も良くなる、そう思ってほしいです。

 一方で、政治の世界の働き方改革については厳しいご意見もいただきました。(※1)なぜ一部の政治家は、地域のイベントや会合に出席することばかりに尽力しているのか、その背景には、選挙制度や政治の情報公開不足などが関係していると思います。何度顔を合わせたかではなく、どんな政策を持っているか・実現力があるかで評価されることがないと、これからも消耗する政治活動は続くのではないかと思っています。

 議会改革や、市民に寄り添った情報公開など、政策実現ができる女性議員を増やすことをミッションとしているWOMAN SHIFTでも議論もしているので、一緒に取り組んでいきたいと思います。

編集:WOMAN SHIFT事務局 たぞえ麻友(目黒区議)

<WOMAN-SHIFT>

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