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【東京】

<まちのおもしろミュージアム>(8)少女まんが館(あきる野) 心くすぐる6万冊公開

少女まんが館について話す大井さん(左)と中野さん

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 豊かな自然が残る多摩西部のあきる野市。秋川に架かる橋を渡り、先を進むと、静かな住宅街の中に水色の一軒家が見えてくる。木造二階建ての「少女まんが館」。全国から寄贈された約六万冊を所蔵する少女漫画専門の私設図書館だ。

 内壁も水色で統一された館内には、蔵書がびっしりと並ぶ。貸本時代の漫画や週刊雑誌、単行本など、二〇〇〇年までの作品は相当な種類がそろっているという。一九六〇年代に創刊された「週刊マーガレット」の初刊号もある。

 開館は九七年。少女漫画の世界そのままを保存しようと、少女漫画愛好家ら十人の仲間が協力して日の出町の民家を借り、百四十冊を持ち寄って限定公開を始めた。聞きつけた全国のファンから寄贈が相次ぎ、蔵書は一年で一万冊を突破。

 一般公開へと切り替えた二〇〇二年、愛好家のうち大井夏代さん(57)、中野純さん(58)夫妻が移り住んで運営し、〇九年に今の場所で再スタートした。出版関連会社を経営しながら切り盛りしている。

少女漫画がびっしりと並ぶ館内=いずれもあきる野市の少女まんが館で

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 大井さんは、同館でも全五巻をそろえている「ポーの一族」を中学生の頃に読み、少女漫画のとりこになった。吸血鬼として永遠に生きる運命を背負った少年を描いた作品。「農家の長女で、家にあるのはこたつとミカンという生活。十八世紀の英国を舞台に展開していく物語は、全く別の世界を見せてくれた」と振り返る。中野さんは、姉と妹がいたことから、気付いたときには少女漫画に囲まれ、好きになったという。

 二人は以前に勤めていた会社の同僚で、少女漫画の話題で意気投合。当時は読み終わると、人に譲ったり捨てたりしていたが、手元にないと内容を思い出せないことがあった。もどかしさが募り「心行くまで少女漫画を読める場所がほしい」と、まんが館の開設を思い立った。

 寄贈のペースは今も落ちることなく、全国から続々と集まっている。ファンは海外にも広がり、米国やチリ、インドネシアなどからの来館が相次ぐ。

 類似の施設は他県でも誕生し、交流も深まっている。三重県に一五年オープンした少女漫画館には、増えすぎて収蔵が難しくなった〇〇年以降の少女漫画を所蔵してもらっている。一八年には、歴史関係の少女漫画を中心に集める施設が佐賀県にできた。

 中野さんは「親に連れられてここに来る小さい子どもが、今はよく分からなくても、大きくなったとき、ふと思い出してくれたらうれしい。少女まんが館のように、コレクションを公開する人が増えれば、地域がもっとおもしろくなるのでは」と語った。 (竹谷直子)

 =おわり

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 あきる野市網代155の5。JR武蔵増戸駅から徒歩15分。開館は4~10月の毎週土曜で、時間は午後1時~6時。館内で読むのは自由だが、貸し出しはしていない。予約制で、1週間前までに必要事項を記入してメール=jomakan@sarusuberi.co.jp=などで申し込む。詳しくはホームページ(「少女まんが館」で検索)。

 

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