<社説>きょうこどもの日 子の権利守っているか

 きょうはこどもの日だ。国民の祝日法で、こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する日と定められる。私たちの社会は真に子どもの人格を重んじ、幸福をはかっているか。

 健やかに育てられるべき家庭で子どもの命が脅かされる児童虐待は年々増え続けている。2018年に全国で摘発された児童虐待事件は1380件で、被害に遭った子どもは1394人といずれも過去最多だった。痛ましいことに、死亡した子どもは36人にも上った。県内でも身体的虐待5件、性的虐待2件の計7件が摘発された。
 千葉県野田市で1月、小学4年女児が死亡するなど、親権者による「しつけ」名目の事件が後を絶たない。親や教師からの体罰を容認する意識が根強いことが背景にあるだろう。
 民法に、親権者による懲戒権を定めた条文があるのもその表れだ。条文は「子の利益のため」ならば暴力の使用を認めている。虐待をする親の免罪符になっていることは明らかだ。
 政府は、親権者による体罰禁止を盛り込んだ児童虐待防止法と児童福祉法の改正案を衆院に提出し、今国会での成立を目指している。しかし改正案に罰則規定はない。さらに民法の懲戒権の在り方について、改正法施行後2年をめどに検討するという。
 懲戒権を撤廃するとともに、児童虐待防止法に罰則を設け、児童虐待に毅然(きぜん)とした姿勢を示すことで、社会にある「しつけのためなら体罰も許される」という意識を変える必要がある。
 また、児童保護の現場も多くのケースを抱え、慢性的な人員不足に陥っている。法改正案では児童相談所の、子どもを保護する「介入」を強化するとしている。児童相談所を増員するなど手厚い対応をしなければならない。
 子の貧困も大きな課題だ。沖縄県の子どもの貧困率は29・9%で、3人に1人が貧困状態だ。ひとり親世帯に限れば58・9%になる。子どもの貧困を放置すると進学や就職にハンディを抱え、ひいては次世代への「貧困の連鎖」となる可能性がある。
 沖縄社会の危機意識は強い。県が昨夏、実施した第10回県民意識調査では、県が取り組むべき施策として「子どもの貧困対策の推進」を挙げた人が42%に上り、最多だった。子育て世代の生活の厳しさと、育児環境の整備に県民が強い関心を寄せている表れである。
 国連の子どもの権利委員会は、日本での児童虐待の多さに懸念を示し、政府に対策強化を求めた。子どもの権利条約では生きる権利や教育を受ける権利、暴力から守られる権利、意見表明する権利―を定める。
 この社会で子どもたちが当たり前の権利を行使しているか。大人こそ考えたい、こどもの日だ。