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078.「サイン」  (青薪)

 
「ただいま、あの、薪さん、今」
 帰宅の挨拶もそこそこに、なぜか少し慌てた様子の声と足音が近づいてくる。
 薪が振り向くのと、青木が居間に辿り着いたのとは同時だった。
「今、ウチの前から宅配の車が出てくのが見えたんですが」
「ああ。おまえ宛の荷物、かわりに受け取っといた」
 薪が視線を向けた先、居間の壁際には小型の段ボール箱が置かれている。

「とりあえずここに置いたけど、よかったか?」
「はい、てかそんなの玄関に置いといてくださればいいのに」
 段ボールの側面には、見覚えのある社名ロゴが印字されている。
 そういえば茶業を営む親戚から、今年も新茶を送ったと連絡があった。滅多にない薪の来訪に浮かれて、すっかり忘れていた。
 しかし重い荷物を運ばせてしまったわけではないようで、青木は胸をなでおろす。

「すみません。まさか、俺がちょっと回覧板まわしに行ったタイミングで宅配がくるなんて」
 しきりに恐縮する青木の前で、薪は座布団に腰をおろすと「別に、気にするな」と軽く笑って見せた。
「判子の場所、わかりました?」
「わからなかったからサインで済ませた」
「ありがとうござ……」
 礼を伝えかけて、はたと動きを止める。
 サイン……と呟いた口元に手をあてて、青木はその場に突っ立ったまま、まじまじと薪の顔を見る。

「……なんて書かれたんですか?」
「え?」
「青木……って、サインされたんですか?」
「当たり前だろ」
 おまえ馬鹿にしてるのか、と眉をひそめて見返してくる薪に、青木は慌てて首をふりつつ、手で覆った口から「えっ、そ、いや、あ」と意味を成さない単語を零している。

「向こうも、さすがに僕のことをこの家の人間だと思い込んでたようだし。再配達を頼むのも面倒だろう」
「は、はい。それはそうですけど」
 青木の狼狽などよそに、薪はカップに残ったコーヒーを喉に流し込んでいる。その手に握られた黄色いマグカップは、今日のために青木が用意しておいたものだ。
 空になったカップの底を眺めていた瞳が、ふと青木の方を向いた瞬間、まるく見開かれた。
「……どうした?」
「え?」
「顔、真っ赤だぞ」
「へ」
「そんなに急いで戻ってきたのか?」
 今度は呆れたように、机に片頬をついて青木の顔を眺め上げている。

「だ、だって、薪さんが俺の名前で……っ」
「は?」
「や、なんでもないです」
 赤い顔のまま、やにわにダンボール箱を持ちあげると足早に台所へ去っていく。まるで逃げるようなその様に、薪が頬杖をついたまま訝しげに声をかける。
「僕がなんだって?」
「なんでもありません!」
「……声が裏返ってるぞ」
「気のせいです!!」
 ほぼ叫びに近い声が、台所から返ってくる。
 また裏返ってるぞ。と首を傾げながら、薪はカップに残る温もりを手の中に転がした。


 終


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青木&薪(秘密 -the top secret-)

家族が留守の青木宅に、薪さんが遊びにきた設定です。
薪さんが青木姓を名乗ってくれたように感じて「それって…夫婦か家族みたい…!(*ノωノ)」と勝手に照れて浮かれまくりの青木、という話です。

「悪戯 Act.4」の読後というタイミングで、青木へのモヤモヤを抱えながら、無の境地で無理やり書きました。
 
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090.「目を閉じておいでよ」  (青薪)

 
 『それ』は時折、何の前触れもなく訪れる。
 まさしく不意にとしか言いようが無く。

 ――たとえば、今、この瞬間も。

 俺の胸元にうずまっていた顔が、もぞと動いて。
 気怠そうに少しだけ持ち上げられた瞼の、その下から覗いた瞳が何かを探すように彷徨った後、ようやく俺の顔を見留めて。
 ひたひたと潮が満ちるように白みはじめた部屋の中で、こちらを見上げた瞳が薄く細められたのを見た時。

 唐突に頭をもたげてくる、その衝動が。恐れが。不安が。抗えず、制御できない。
 何故だろう。自分でもわからない。彼はいつも、俺の名前を呼んでくれるのに。
 昨夜だって俺の下で、腕の中で、その唇は俺の名だけを繰り返し紡いでいたのに。

 ひと晩中その背を抱きとめていた手の片方を、小さく形の良い頭の後ろへ滑らせて胸に抱きこんだ。数時間ぶりに出会った琥珀の瞳が再び姿を消して、俺は安堵を取り戻す。
「なに……」
 掠れた寝ぼけ声には、うっすらと抗議の色が滲んでいる。
 強引に視界を塞がれたことも気に障ったのだろう、俺の胸と腹を押し離そうとする腕の動きが感じ取れた。
 そんな小さな抵抗も腕の中に封じ込めて、柔らかな髪にかくれた耳朶へと口を寄せて囁く。
「目を、閉じていてください」
「なんで」
 疑問と不満の入り混じる声が、胸元の辺りから返ってくる。
「俺の声だけ、聞いてください」

 見ないで。
 その目に映るのは、本当に『俺』なのか。怖くて。妬ましくて。
 だから、見ないでください。

 口にできるはずもない言葉を、心の中で繰り返す。
 なんて勝手な話だろう。俺だって過去には別の人と婚約までしておきながら、自分だけ被害者ぶって。

「あおき、……離せって……」
「……もう少し」
「だから、なんで」
「もう少しだけ、このまま」

 この行為の理由は告げないまま、温かな身体を抱く腕に力をこめる。
 『窓の外が眩しいでしょう』とか、上辺だけの誤魔化しを口に乗せられたらいいのに。それすら出来ない自分に嫌気がさす。

「薪さん」
 渇いた喉から零れ出るのは、ただ、胸に抱きしめた人の名前だけ。
「なんだ」
「……薪さん。薪さん」
「だから、なに」
 律儀に答えてくれる愛しい人の髪を撫でて、さらに強くかき抱く。


 どうか
 この心の内は、知らないで。



 終


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青木&薪(秘密-the top secret-)

たまには青木だって情緒不安定になることもあるよという話。
原作の青木って、ああ見えて実は嫉妬深いですよね。
 

057.「あどけない面影」  (青薪)

 
 ほとほとと、白い寒さが上空から舞い落ち続ける。その光景に魅入られたように、薪さんの瞳は先ほどからガラス窓の外を見つめたままだ。
「はい、どうぞ」
 声をかけると、ようやく首の向きを戻してくれた。俺が向かいから差し出しているものを受け取り、ひとふさ千切ると口に含む。
「そのみかん、甘いでしょう?」
 数回の咀嚼だけで飲み込んだあと、軽い頷きが返された。
「ああ、美味いな」
 答えながら、次々と千切っては口の中に放り込んでいく。偏食大王の異名をとる彼のお気に召したようで何よりだと、俺は安堵して口元を緩めた。
「もひとつ、剥きましょうか?」
 こくりと頷かれて、卓上の竹編み籠へと手を伸ばす。籠の中から小ぶりなみかんをひとつ掴み取り、いそいそと皮を剥きながら話を続ける。
「雪、珍しいですか? 東京ではほとんど降りませんもんね」
「……そうだな」
 心ここにあらずといった声色が返され、ふと手元から顔を上げると、琥珀色の瞳は再び窓の外に向けられていた。
「外は寒そうですねえ」
 暖められた部屋の中、こたつにもぐらせた足はぬくぬくと温かく、雪の匂いすら感じることもない。
 さすがの薪さんもこたつの魔力に魅入られてしまったようで、心もち背を丸め、両腕まで突っ込み暖をとっている。


「薪さんも、ご自宅にこたつ置かれたらいいのに」
「だから何度も言ってるだろ。マンションは密閉性が高いから、そこまで冷えない。僕ひとりならエアコンで充分だ」
「えー、俺が薪さんちにお邪魔した時、一緒にこたつに入れたらあったかいのに」
「おまえ。よからぬこと考えてるだろ」
「えっ」
「やけに購入を薦めると思ってたが、どうせ暖をとる以外のことが目的だろ」
「お……もってませんよ、そんなこと。やだなぁ心外です」
 否定したものの、目が泳いでいるのが自分でもわかる。やはりこの人の前で隠し事はできない。
「いや、でも、恋人とこたつでイチャイチャしたいと思って何が悪いんですか」
「とにかく買わないからな」
 ついブツブツとひとりごちる俺の未練を、薪さんの冷たい声が両断する。胡乱げに細められた視線は、音もなく降り続く雪をしばし眺めた後、またこちらへ戻ってきた。
「青木。やっぱり積もらないうちに帰、」
「どうぞ剥けましたっ」
 不穏な申し出を遮るように、ずいと目の前にみかんを差し出す。
「この程度なら積もりませんよ。大丈夫」
 にこりと微笑んで見せると、薪さんはそれ以上何も言わずに俺の手からみかんを受け取った。その表情は若干複雑そうではあったけれど。
「夕飯、うちで食べてってくださる約束でしょう?」


 滅多とない、薪さんの福岡出張。かれこれ半年ぶりだ。しかも翌日は二人とも公休、と条件が揃えば黙っていられるわけがない。この機を逃してなるものかと半ば強引に夕食の約束を取りつけた。
 そうして指折り数えて迎えた今日。火急の事態が発生することもなく全てが順調に運び、俺も薪さんも定時を少し回った頃には退所が叶った。所長を空港へ送迎するという名目のもと、薪さんを私用車の助手席に乗せて向かった先は俺の自宅。到着と同時に予報外れの雪が降り始めた。
 冷え切った居間を急いで暖め、手早く夕食の準備を済ませて薪さんの待つこたつに潜りこんだ。家族の帰宅を待つ間の、二人だけの貴重な時間。色艶めいた言葉を並べるわけでも、触れ合うわけでもない。それでも俺の家に、傍に、目の前に薪さんがいてくれる現実に、ただ胸が満たされる。とりあえずは、お茶うけがわりに出したみかんが好評で嬉しいかぎりだ。
「黄色いな」
「え?」
「おまえの指」
「ああ、みかんの剥きすぎと食べすぎですかね」


 先週、俺の母が商店街の福引大会で特賞を見事引き当てた。賞品はダンボール一箱分の和歌山みかん。
 めでたく嬉しい話ではあるが、三人家族――うち二人は高齢女性と幼児だ、なかなか期限内に消費できるものでもない。隣近所にも配ったものの、まだ相当な数が残っている。
 最初は喜んでいた母も、さすがに連日続けば食べ飽きたようで「実はそんなに好きじゃないのよねぇ。一行と舞は若いんだからどんどん食べなさい」などと息子と孫娘にていよく押しつけ、今では気が向いた時に一個つまむ程度。仕方なく、もっぱら俺ひとりが引き受けている形だ。
 指摘されて初めて気づいたが、よく見れば確かに親指と人差し指の先端から爪にかけて少し黄色みがかっている。
「薪さん、よかったら幾つか持って帰られませんか?」
「いや……折角だが」
 まあ当然の返答だ。荷物になるし、多忙な彼のこと、食べる暇もないだろうし。苦笑して引き下がり、また新たなみかんをひとつ手にとる。
「せいぜい、一日に五個程度しか食べてませんけど。舞のぶんも剥いてやってますからね。指先にみかんの味が染みこんでたりして」
 いくら好物とはいえ、そろそろ舞も食指が動かないようになってきたが、俺が剥いてやるとなんとか食べてくれる。
 今だって、自分と彼の分とをあわせて既に五個目だ。指が黄色くなるのもやむなしかも知れない。
「そんなに食べると夕飯前に腹がふくれるぞ」
「俺は大丈夫です」
 笑って答えると、こたつから出された右手の人差し指が曲げられ、俺に向けてちょいちょいと招くように動く。
「はい?」
「ひとつ寄越せ」
 剥き終えたみかんを丸ごと手渡そうとすると、「ひとつでいい」と言う。
 つまり、ひとふさだけ寄越せという意味か。
 ご要望どおり、ひとかけらだけを千切って薪さんの顔の前へ運ぶ。
 すると俄かに薪さんの首が伸びてきて、ぱくりと指先に食いつかれた。
 生温かい舌は器用に動いてみかんを奪い去ったあと、残された指をゆっくりと食みはじめる。
 人差し指の第二関節から先は薪さんの柔らかい口腔に包まれ、まるで何かを味わうように丁寧に舌を這わされ舐めとられていく。伏せられた長い睫毛の下の瞳は、俺の手の甲だけを見つめている。瞬きもせず、心のうちが読み取れない眼差しで。
 完全に不意をつかれ、声は喉にひっかかったまま、眼前で粛々と行われる行為をただ黙って見守るしか術がない。
 時間にして十秒足らずのその行為を終え、俺の指を解放した唇は、ぽつりとつまらなさそうな声色を吐いた。
「別に甘くないな」
 濡れた唇を舐め上げて、何事もなかったかのように涼しい顔で肩をすくめている。
「っ、薪さ」
「ただいまーっ!!」
 突如響いた大声と引き戸を開け放つ音に、俺の声がかき消された。目まぐるしく変転する状況に頭が追いつかず、動きを止めた俺の前で薪さんが立ち上がる。
「あ。ま、薪さ」
 呼び止める暇もなく襖を開けて玄関の方向へ向かった彼は、慌てて後を追おうと膝を立てた俺を振り返ると素っ気なく言い渡した。
「そのベトベトの指で、そこらへん触るなよ」
 言われて見下ろした自分の指先は、唾液に濡れたままだ。ベトベトにしたのは薪さんでしょうに、もう。


「マキちゃん!」
「おかえり、舞ちゃん」
「わあ、ほんとにマキちゃん来てくれたんだ」
 玄関から届く声だけで、頬を紅潮させて喜んでいる舞の顔が想像できる。
 指を拭き終えて玄関を覗くと、母と挨拶を交わしている薪さんの背中が見えた。
「おかえりなさい」
 俺のかけた声に振り向いた二人は、「ただいま」と返事を返すとまたすぐ薪さんに向き直る。
「雪のせいかしら、急に冷えてきたわねえ」
「あのねマキちゃん」
「ん?」
 頬を薔薇色に染めた舞が、きらきらと瞳を輝かせて薪さんのスーツの裾を握る。まるで何か伝えたいことがあるような仕草に、薪さんが膝を曲げて顔を近づける。その耳元にそっと小さな手と口を寄せて、小鳥がさえずるように愛らしい声で舞が告げた。
「お誕生日おめでとう!」
 満開の笑顔と対照的に、薪さんの表情が止まった。
「……、……え?」
「薪さん、今日お誕生日でしょう」
 こちらを向いた薪さんの瞳は丸く見開かれ、なるほど鳩が豆鉄砲を食らったような顔というのはこういうものか。
 もしかしなくても、また忘れてたな、この人。
 相手の反応にはおかまいなしに、舞が手に提げた紙箱を見せながら弾んだ声をあげる。
「だからホラ、ケーキ買ってきたの。あとで一緒に食べようね!」
「一行、所長さんのお帰りの時間もあるんでしょう? 早く夕飯にしましょ。舞、ケーキ冷蔵庫に入れて」
「はぁい」
 二人の姿が襖の向こうへ消えた途端に、すごい勢いで胸ぐらを掴まれた。
「何ですか?」 
「おかしいだろう。家族の上司の誕生日を祝う家がどこにある!?」
「ここにあります。痛っ、なんで蹴るんですかっ」
 してやったりな顔が腹が立つ、と言われた。そんな顔をしていたつもりは毛頭ないのだが。


 奇しくも、一年前の今日も彼は福岡に来ていた。その事実を当日知れたのは全くの偶然で、黙って発とうとする薪さんを空港まで追いかけ、どうにか短い時間だけでも会うことが叶ったのだ。
 けれど今回は、すべて事前にわかっている。去年のようなドタバタ追走劇を繰り広げる必要もない。
 どこかで二人きりでディナーを、なんて甘い考えもよぎったが、それよりも俺の家で、俺の家族と一緒に過ごしてもらいたいと思った。日頃お世話になっている上司だからと、母の了承も得た。
 とはいえ、そんなのは全て俺個人の願望だ。薪さんの性格からして、頑なに固辞される可能性は高い。ところが数回の押し問答の末、存外に早く承服してもらうことができた。やはり舞の名を出すと効果抜群だ。あわよくばウチに泊まってもらって……とも思ったが、当日中に東京へ戻ることだけは彼が譲らなかったため、夕食後に俺が空港へ送り届けると約束した。
 条件付きとはいえ首を縦に振ってくれた時点で、また自分の誕生日を忘れているのではと薄々思っていたけど。


「ケーキはささやかなお祝いですから、大げさに考えないでください。夕飯は普通の鍋ですし、今日はあくまでウチの夕食に薪さんをお招きする形ですから」
 玄関の磨りガラスに、はらりと降り落ちる雪の影が映る。どうせならもっとひどく吹雪いて、この人を朝までこの地に留めてくれればいいのに。
「舞が、薪さんのために選んだケーキ。せめて一口でも召し上がっていってくださいね」
 この言い方は卑怯かもしれないが、効果はあった。「……わかってる」と小さな声が返ってきた。
 薪さんは男の人だし、できるだけ生クリームがごてごて盛り付けられてないシンプルなケーキがいいよ――と言い含めておいたが、さて、一体どんなのをチョイスしてきたのか気になるところだ。


「鍋は弱火で煮始めてあるんです。そろそろ出来上がる頃ですから」
 手を洗いたいと言う薪さんに洗面所の場所を教えて、足早に台所へ入る。くつくつと音をたてる鍋の蓋をとると、湯気とともに甘い香りがたちのぼる。ちょうどいい頃合いだ。薪さんが以前興味を示していたトマト鍋。福岡名物もつ鍋より、こちらの方が我が家の女性二人にもウケがいい。
 台所と居間を往復して配膳を整え、そういや薪さんの戻りが遅いなと思いつつ振り向くと。
「? 薪さん?」
 開け放した襖の向こうに、薪さんが佇んでいた。明かりの届かない隣の和室は仄暗く、陰になった表情は伺えない。 
「そこ寒いですから、こっちの部屋に……」
 話しかけながら傍に近づくと、誰もいない居間を眺めていた顔がこちらを向き、どこか途方にくれたような表情で俺を見た。
「……薪さん?」
 俺より十以上も年上なのに、時折どこか少年のようなあどけない面影を見せる、この人は。
 こんな表情を見れるのなら。やはり今夜、誘って良かった。


「わーい、トマト鍋だー」
 奥の部屋から、着替えをすませた母と舞が戻ってきた。二人とも早速こたつに入り、すっかり支度の整った食卓につく。
「マキちゃんも、早く」
 舞が笑顔で手招きする。
 母が四人分の湯呑を並べ、急須で緑茶をつぎはじめる。
 それでも薪さんは踏み出さない。明かりのともる居間の、敷居の前で足を止めたまま。その輪の中に入ることを躊躇うように、恐れるように。
 彼が、こういった場をあまり好まないことは知っている。
 でも。
 でも俺にとっては、あなたも大切な家族なんです。
 そう言えば、余計にこの人を困らせてしまうだろうか。


「去年も、雪が降ってましたよね」
 隣の人にしか聞こえない声で囁いた。重なった視線の先で揺れた瞳に、笑みを返す。
「今年は、こうして一緒に過ごせてよかったです」
「……ああ」
 まるで吐息のように洩らされた呟きは、とても微かなものだったけれど。思わず抱きしめたくなるのをかろうじて堪え、その背に手を添える。
「こーちゃんも、早くー。おなべ冷めちゃうよ」
「うん、今行く」
 急かす舞に応えて、薪さんの横顔を斜め上から覗き込む。流れる前髪の下から、ちらと向けられた視線はすぐ逸らされた。
「さ、行きましょう」
 小さく上下した旋毛を見下ろして、愛おしい人のあたたかな背中をそっと押した。
 願わくば。一年後の今日もまた、この人とともに過ごせますように――


 終


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青木&薪(秘密-the top secret-)

pixiv投稿した、薪さんのお誕生日に寄せたSSです。

昨年の薪誕SS「タイムリミット」の一年後な設定です。
前回と同じく福岡で迎える誕生日。
コタツで青木にみかんの皮を剥いてもらってる薪さんが見たくて、
でも薪さん宅にはコタツなさそうなので青木宅が舞台になりました。
 

081.「ほどけた髪」  (青薪)

 
 羽を休める蝶のように、伏せた睫毛が時折ゆっくりと上下を繰り返す。
 隣の人のその様を、青木が盗み見始めて数分が経つ。
 久しぶりに二人で過ごす休日の昼下がり。ソファに並び座り読書を始めたものの、先に読み終えた青木が時間を持て余し、最初は薪の邪魔にならないようそっと様子を窺うだけのつもりが、いつしか時間を忘れてその横顔に見とれていた。

 人形のように整った顔が、ふいに青木の方を向いた。
 長らく異国の書に注がれていた琥珀色の瞳が、今は青木だけを映している。心なしか体の距離も縮められ、本から離れた色白い手が、まっすぐ自分の顔へと伸びてきたから。
 くちづけを貰えるのかと思った。だから青木も応えるように頭を下げる。
 けれど。与えられたのは期待とは裏腹に、皮膚の上に走る痛みと、ぺちんという小気味よい音。

「痛てっ」
 わけがわからぬまま反射的に悲鳴をあげると、謝罪どころか小さな舌打ちが返ってきた。
「なっ、何ですか!?」
 生え際の辺りをおさえながら青木は当然の抗議をするが、薪は渋い顔で自分の手のひらを見つめている。
「……逃げたか」
「はい!? 思いっきり命中しましたけど!?」
「違う、おまえの頭に蚊がとまってたんだ」
 薪の表情を見るに、それは嘘でも冗談でもないようだ。だからってわざわざ人の顔の上で退治しなくても、と青木は溜息をもらす。
「前から思ってましたけど、薪さんちょっと俺の頭を安易にぺんぺん叩きすぎです」
「おまえが刺されないように助けてやろうとしたのに」
 青木が聞いても白々しい口ぶりで言って、薪は閉じた本をテーブルに置いている。

 まったくもう……ひとの頭だと思って。
 仕事でも私生活でも薪から度々手を上げられてきた青木にしてみれば、今の一撃などそれこそ虫に刺されたようなものだ。
 とはいえ遠慮なしに前髪ごとはたかれたため、ばらばらと額に落ちた髪を手でかきあげる。
 手ぐしでせっせと髪型を整える様子を眺めながら、薪が呆れたような声を出した。
「職場じゃないんだ、そのままでいいだろ」
「いやぁ、あんまり……」
 口ごもる青木を見上げて、この男が前髪をおろした顔を、そういえば特定の場面でしか目にしていない事実に思い当たる。
 それは主に入浴後、就寝時。昼日中でも、稀にふざけて戯れあって――差し入れた薪の手指が黒髪を梳き、かき崩した時。そんな時は髪をどう扱われようが気にも留めないくせに。

「休日ぐらい、たまには髪型変えてみたらどうだ」
「いえ、お構いなく」
 やけに拒むものだから何となく癇に障り、ようやく整いかけた前髪へと乱暴に指を差し込んだ。そのまま無造作にわしゃわしゃと掻き回す。
「わっ、なにするんですかっ」
「だから、おろしておけって」
「えー……」
 それでもなお頷こうとはしない。今や渋い顔をしているのは青木の方だ。
 どうして、と追及しようとした口を薪がつぐむ。
 どうして、そんなに嫌がるのか。
 心当たりなら――ひとつだけ、無いわけでも無い。

「青木」
 低い声で名を呼ばれ、青木が髪をなおす手をとめて薪を見る。
「……言っておくが」
 首を傾げる男を見返して、薪は一旦切った言葉を続ける。
「髪をおろしたところで、おまえは鈴木には似てない」
 ぱちりと、青木がひとつ瞬きをした。息を呑む気配が薪にも伝わる。
「全然似てない。鈴木は、そんな小さな目じゃなかった」
「えぇ……」
 過去にあれだけ名前を呼び間違えておきながら、今更そんなことを言われても。青木の眉尻が困惑したように下がる。
「だから、前髪をおろしたぐらいで似やしない」
 わかったか、と有無を言わせぬ圧を込めた声で念を押され、「はい」以外の答えを返せるはずがない。

 自分は、そんなにわかりやすいだろうか。
 隣の人に尋ねても、きっと答えはもらえずに鼻で笑われるだけだろう。
「えーと。でも、じゃあ」
 まだ屁理屈を言うつもりかと眉をひそめた薪の視線の先で、男の顔がにへら、と緩む。
「鈴木さんより、俺の方がいい男ってことですか?」
 ほどけておりた前髪の下で、細められた双眸が優しく、そして図々しく笑んでいる。
「…………」
「あれ? あっ、ちょっと無視しないでくださいよ」
 冗談ですよと慌てた声は、すいと伸びてきた手に遮られた。唇の前にたてられた人差し指は、触れずして青木の言葉を封じた後、滑るように頬へと流れる。
 薪の瞳は静かに青木をうつしていて、そこには怒りも苛立ちも見当たらない。
 一度目ははたかれ、二度目は髪を乱され。今度こそ、三度目の正直か。
 ねだるように両の瞼をおろすと、青木の耳に届いたのは、ほんの少しの甘さと呆れを含んだ声。 
「調子にのるな」
 閉じた瞼の上の方で、ぺちっと軽い音がした。


 終


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青木&薪(秘密-the top secret-)

このお題、青薪では無理だろ……困った時の舞ちゃん頼みでいくか…
と悩みましたが、無理やり青木の前髪を下ろす方向にこじつけてみました。
 

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

071.「報われない努力」  (青薪)

 
 眼下に広がる夜の街は、散らばる光の粒をまとって静かに煌めいている。
 昼間は冷たくよそよそしいビル群が今はその姿を一変させ、何もかもを深く呑みこむような輝きに満ちて束の間現実を忘れさせてくれる。
「いつまで辛気くさい顔してるんだ」
 それはワインと同じくらいの芳香を含む声。青木は躊躇いがちに、視線を夜景から声の主へと移す。
「……落ち込んでるんです。せっかく薪さんが誘ってくださったのに……」
「気にしなくていいって言ったろ」
「いえ、自分で自分を許せなくて」
 申し訳なさに沈んだ声を遮るように、青木の前にグラスが差し出された。まだ口をつけていないグラスには、なみなみとワインが注がれたままだ。
「いいから飲め。ここの白ワインは美味いんだ」
 黄金色の液体から眼前の人へと視線を戻せば、その色を淡く映したような瞳がじっと青木を見つめている。睨むでもなく、微笑むでもなく。
「……はい」
 逡巡を捨て、薪の手からグラスを受け取りひとくち含む。華やかな香りが鼻へ抜けるのと同時に、まろやかな味が舌に広がる。
「美味しいです」
 素直に零れた感想に、ようやく薪が少し微笑んだように見えた。


 ◇


「おまえ、オペラは興味あるか」
 立春を過ぎてもまだ寒さの残る街を通り抜け、第三管区を訪れた青木が上司に挨拶を終えた途端、そう問われた。
 質問の意図を図りかねながら、あまり詳しくはありませんが、と正直に答える。ふいに眼前で翻った上司の指先には二枚の紙切れが挟まれていた。
「今夜、都内でオペラコンサートがあるんだ。チケットが余ってるんだが」
「行きます、興味あります」
 食い気味に即答した。
「そうか」
 ふと浮かべられた薪の笑みが、嬉しげに見えたのは気のせいではないと青木は思う。
「じゃあ今夜18時に、劇場前で」
 現地集合を言い渡され、受け取ったチケットに落とした目を思わず見開いた。そこに記されていた出演者は、世界的に名高い指揮者とオペラ歌手。オペラ界に疎い青木ですら、その名を耳にしたことはある。確か両名とも、来日公演は十数年ぶりだったはず。間違いなくプラチナチケットだ。
 聞けば、薪が昨日本庁へ出向いた際に警備部長から譲り受けたらしい。夫婦で観賞予定だったが急遽都合が悪くなり、せめて空席にはしたくないと譲り先を探していたという。青木としては、さすが上層部のお偉いさんがたはツテが違うと感心するしかない。
 もとより今夜は薪の家に泊まるつもりでいたし、明日は休日だ、時間を気にする必要もない。こんなお誘いなら大歓迎である。

 逸る気持ちを抑えながら仕事をこなし、青木はトンボ返りの体を装って薪より一足早く第三管区を出た。灯りはじめた街灯の明かりを半身に受けながら、劇場エントランスに続く階段の下に佇む。ほどなくして待ち人も到着し、彼に連れられるようにして青木が着いたのはボックス席の最前列。舞台に向かって右方向に位置しているが視界は良好で、オーケストラピットまで見える。
「ここって、めちゃくちゃ良い席じゃないですか?」
 落ち着かない気分で尋ねるも、薪は特に感動した様子もなく平然と「そうだな」と頷くだけ。しかし自分のような大男が最前列に着席して、ひんしゅくを買わないものかと今度は不安に駆られてくる。やはり慣れない場所に気軽に足を踏み入れるものではない。
 薪に倣って、先程ロビーでもらったリーフレットを眺めているうちに開演時刻となった。厳かな調べとともに舞台が始まり、やがて世界最高のディーヴァが舞台に姿を現し、美しい歌声を響かせる。

 そこから先は、青木はあまりよく覚えていない。
 必死の抵抗むなしく、いつしか落ちてしまった瞼を開くことができたのは、場内が割れんばかりの拍手に包まれている真っ只中であった。
 はたと右隣に顔を向けると、隣の人は微笑を浮かべ舞台上へ拍手をおくっている。気づかれていない……はずがない。
 幾度となく繰り返されたカーテンコールの後、「混む前に出るぞ」と告げるやいなや颯爽と立ち上がった薪の後を慌てて追う。熱気冷めやらぬ会場から外へ出た途端に言われた言葉が、
「よく寝てたな」
 顔色をなくした青木が謝罪の言葉にも詰まっていると「まあ予想はしてた、気にするな」と薄く笑い、薪は止めた歩を再び進めはじめる。
「いびきをかかずに静かに寝てただけ及第点だ」
 慰めなのか嫌味なのか不明だが、今の青木にとっては追い打ちでしかない。立ち直る暇さえ与えられず、すたすたと前を行く薪の背を追うのがやっとだ。

 己の失態に落ち込む青木が薪に連れて行かれた先は、劇場に隣接するホテルだった。青木は利用したことはないがハイクラスの部類に属するホテルであるのは知っている。
 最上階に着いたエレベーターを降りると目の前にはレストランのエントランスがあり、迎えてくれたウェイターへ薪が何かを告げると、通常のホール席ではなく個室へと通された。柔らかなライティングと、落ち着いた色調の装飾。壁の一面はガラス張りになっており、街の灯りが一望できる。
 青木とて鑑賞後の予定を何も考えていなかったわけではない。近くのバーに誘おうか、あるいは家でゆっくり食事をとった方がいいだろうか、などと呑気に構えていたのだが、まさかこのような場所に連れてこられるとは夢にも思わなかった。


 ◇


 これは初めて薪から誘ってくれたデートだ。薪は否定するかも知れないが、青木はそう信じて疑わない。
 なのに、寝落ちしてしまうなんて。一生の不覚と言ってもいい。どうやら薪は本当に気にしていないようだが、はなから寝ると思われていたなら、それはそれで情けなさが倍増する。
 今週は第八管区に泊まりこむ日もあり、疲れと睡眠不足を引きずっていたのは否めない。しかしデートの最中に寝るなど以ての外と、睡魔に抗う努力はしたのだ、一応。その甲斐なくたっぷり二時間は熟睡してしまったわけだが。
 先ほど目が覚めた時に背後の様子も伺ったが、後ろの二列とも全席空席で、どうやらボックス席は貸切状態だったらしい。そうと知っていれば、手を繋いだり肩を寄せたり――まあ拒まれるかも知れないが、狭い空間に二人きりだと意識することで睡魔につけいる隙など与えなかったのに。

 努力は報われず、正義は滅びる――とは誰の言葉だったろうとぼんやり考えながら含んだワインは、薪が薦めるだけあって確かに美味である。つい二口、三口と飲み進めてしまう。
 ふ、と微かに息を吐く音が聞こえ、青木が視線だけを上げた先で、さらりと流れる前髪の下の大きな瞳が面白そうに揺れていた。
「何ですか?」
「いや、美味そうに飲むなと思って」
 食事も熱いうちに食べろよと、まるで親が子に促すような調子で言ってグラスを仰ぐ。
 ――そうだ、せっかく薪が誘ってくれた二人きりのディナーなのに。
 彼は一度も怒っていないし、責める言葉も口にしていない。気にするなと、食事とワインを楽しめと言ってくれているではないか。いつまでもしょげた顔をしていては失礼だ。
 気落ちするあまり食事の手も止まりがちになっていた青木は、我に返って姿勢を正す。そういう薪こそ食事よりもワインが進んでいるようだが、まあ小鳥のような胃袋の人だから仕方ないかと思いつつ、ポワソンを口に運び舌鼓をうつ。ワイン同様に料理も一級品だ。つい先刻までは味も何もわからない状態だったが。

「薪さんは、ああいう作品がお好きなんですか」
「ん?」
「さっきの……」
「『トゥーランドット』?」
「はい」
「まあ……」
 答えかけた薪が言葉を止める。く、と喉の奥で小さく笑う気配がした。
「青木。あの作品の、最も有名なアリアを知ってるか?」
「? は? いえ……」
「Nessun Dorma. 『誰も寝てはならぬ』だ」
 薄く弧を描いた唇から与えられた正解に、青木の表情が止まる。
「舞台で『寝てはならぬ』と歌いあげられている最中に、おまえときたら隣で気持ちよさそうにぐーすかと……」
 薪は拳を口許にあてて俯き、くっくっと笑いを漏らす。薪が笑ってくれるのは嬉しいが、もう二度とオペラには行くまいと青木は固く心に誓った。さりとて彼の誘いを拒めるはずもなく、オペラだろうが歌舞伎だろうがまたカルガモの子よろしく付いていってしまうに決まってる。そんな惚気じみた諦観を抱いた後、ふと「あ、そうだ」と呟くと脇に置いていた鞄へと手を伸ばした。中を探って取り出したものを、そっとテーブルにのせる。
「どうぞ」
 テーブルの真ん中に鎮座しているのは、青木の手のひらに収まるほどの小さな直方体。シックな黒い紙箱にアイスブルーのリボンが掛かっている。
「? 気を遣わなくていい。あのチケットは貰いものだし」
「いえ。これはもともと薪さんに今日お渡しするつもりで」
 不思議そうな顔つきの薪に、青木がクスリと笑って告げた。
「今日、バレンタインですから」
 思いもよらぬ言葉を耳にしたかのように、薪がぱちりと大きく瞬きをする。

「薪さんちに戻ってからと思ってたんですが、何だかほろ酔い気分で忘れちゃいそうなので今のうちに。チョコじゃなくてクッキーですけど、甘さ控えめの珈琲クッキーです。今夜でも、小腹が空いた時につまんでください」
 青木は照れ隠しのように言葉を続け、テーブルの上に彷徨わせていた視線を最後は薪の顔に戻すとはにかんだ笑顔を見せた。

「そうだな……いや、今夜はいい」
「あ、じゃあ明日に」  
「今夜は、おまえを食べるから」
 「に」の形に口を開いたまま、青木はぱちぱちと瞬きをして軽く首を傾げる。
「俺、食べられちゃうんですか」
「嫌か?」
 ふるふると首を横に振り、その口許に困ったような甘い笑みをのせた。
「骨が硬くて不味いですよ?」
「やわらかくて美味いところだけ食べるから問題ない」
 本気か冗談かわからないやり取りを続けながら、薪はすました顔でまたグラスを傾けている。
「薪さん、少し酔ってるでしょう?」
「ワイン四杯程度で酔えるか」
「いやじゅうぶんですよ。この白、結構強いですよ?」
「おまえこそ、もっと飲め。ワインを飲むと肉質が良くなって、柔らかく美味くなるって言うだろ」
「俺は牛や豚じゃありません……」
「ああ悪い。犬だっけ」
「もう……」
 やっぱり酔ってるでしょ、と呟いてみると、グラスから離れた唇が微かに綻んだ。
 まあいい、もう少しぐらいワインが染みていた方が、身体はともかく口中ぐらいは味わい深くなるだろう。この努力は報われるだろうか。彼に美味しく食べてもらえるならば、それはそれで本望だ。
 だってそれは、食べたいぐらい俺のことを好きってことでしょう?

「なにニヤけてるんだ、急に」
 別に、と濡羽色の瞳をやわらかに細めて、青木はグラスに残ったワインを喉に滑らせた。
 帰ったら伝えようか、バレンタインの夜にあなたに食べられながら。
 俺だって。
 食べてほしいぐらい、あなたのことが大好きなんですよ?


 終


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青木&薪(秘密 -the top secret-)

700拍手のキリリクSSです。
700拍手目を踏んでくださった、よし乃さんからのリクエストは「アフター5デートな青薪」。
あの二人ならアフター5どころかアフター10じゃないの?と思いつつ笑
田舎者が一生懸命想像力を働かせて、都会の大人の(?)アフター5デートを妄想してみました。
オペラも高級ホテルのレストランも行ったことないので色々と適当です。すみません。
 

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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