企業で働くということ

僕は今エムスリーという企業でアルバイトをしている。

この企業をご存知ない人もいるかもしれない。医療従事者向けのサービスを主体としているからだ。だから医師はほとんどが知っている。

調べてみるとこの企業、東証一部に上場しておりグループ全体の従業員数が5000人、四半期の売上が800億円くらいあるかなり巨大な企業だ。

僕は(これでも)医学生なので企業の名前は知っていたが特に興味関心があるわけではなかった。

ある日 Twitterを見ているとエムスリーで機械学習をやっているエンジニアが採用募集のツイートをしていたので「インターン行ってもいいですか」と軽いノリでDMを送ったら軽いノリで承諾が返ってきた。以降業務内容は企業の機密上書けないがインターン採用までとインターン期間、インターン期間が終わった後のアルバイト期間について思ったことを書いていこうと思う。


採用まで

まず「機械学習チームに限らずインターン全員に受けてもらっている」というSPIの試験と機械学習チームで課しているプログラミングテストを受けるように言われた。後から知ったことだがSPIはともかくプログラミングテストの結果をチームの人はよく見ている。

SPIはみなさんご存知あのSPIである。中学入試の問題と大差ない。大学4年生にもなってこんな問題を解くのかと悲しくなった。願わくば学歴があれば免除にして欲しい。そもそも学歴というのはそのような能力の証明のためにあるのではないか。

プログラミングテストは思ったより簡単だった。多分これも詳細は書かない方がいいやつなので詳細は伏せるが、AtCoderで緑色くらいの人なら難なく解けると思う。よくある感じの問題だった。

後日機械学習チームの人に「あのレベルのプログラミングテストじゃ優秀な人だけを選抜することができないのでは」と尋ねたことがある。この記事を書いている現在Preferred Networksというこれもまた大きい企業のインターン選考課題を解いているが、こちらは本当に難しかった。本気で選抜しにきている。しかしエムスリーのチームの人の回答はこうだった。「あれ以上難しくすると優秀なのに落ちる人が出てくる、あれくらいがちょうどいい」。おそらくPFNは企業が求める能力像が具体的に存在して、それに特化した人材が欲しい、エムスリーはある程度以上の能力を持った人を広くインターンとして受け入れ、企業側があまり予想もしていなかったような能力を持つ人を探すという感じなのだろう。ここは企業の風潮の差だと思う。

もちろんインターンは簡単に行けるようになっているが、新卒採用はインターン経験者でないと受け入れていないらしい。インターンでしっかりその人固有の能力を見極めて年単位で投資する価値があるか判断するのだと思う。

オンラインテストが終わると普通はエンジニアとの面接があるらしいのだが、なぜか僕はパスになった。理由はよくわからない。


採用後 - インターン期間

無事インターンきてもいいですよとの通知をもらった。

3時間ほどの研修を受ける必要があるという。めんどくさいなあと思いながら参加した。

しかし蓋を開けてみると企業理念を長々と説明されたりすることはなく、大半の時間が情報セキュリティの話に費やされた。多分これの詳細も書かない方がいいやつなので書かないが、セキュリティ上の規則を一つ一つ丁寧に説明されたので割と覚えた。業務上結構必要な規則が多かったのでまあ虚無な時間ではなかった。

研修が終わるとインターン期間。

机と椅子とキャビネットmacbook proが貸与された。勤怠管理はよくあるwebで出勤ボタン押すやつ(会社のPC開いたらHeadlessでブラウザ起動してログインして出勤ボタン押すようにしたい、ちょくちょく忘れるので)。チーム内での連絡はほぼSlackで行われている。普通だと思う。初日の午前中にチームリーダーと話して課題となる論文を与えられ、作業を始めていった。

メンターはチームリーダー。結構チャラそうな雰囲気を出しているが頭の回転が速すぎて追いつけない。博士持ってるらしい。プログラミングと数学だけじゃなくて経営の観点とかとか意思決定に関しても色々アドバイスをもらえるので嬉しい。ただ僕が自発的に何かに気づいてアクションするまで何も言わずに観察している節もあってちょっと怖い。思っていることはバシバシ言う。結果だけ出せばあとは自由。そんな感じだ。

僕がこのチーム好きだなと思った理由の一つに人間関係がいい意味で非常にドライなことがある。みんな自分の体調とかプライベートを優先するし思ったことは率直に言う。忖度が渦巻いている(と思っている)医学部界隈とは大きな違いだと思っている。

もう一つ重要なことに出勤退勤時間が指定されていないと言うことがある。これはインターンの僕に限らない話で、毎日7時台にくる人もいれば毎日10時台にくる人もいる。僕は規則的な生活が非常に苦手なので7時台に行ったり13時に行ったりしている(「出社時間の分散がすごい」と評された)。僕は定時に何かをすると言うのが非常に苦手だ。いつも早すぎる行動をしたり遅刻したりしてしまう。大変なストレスになっている。今回のインターンではこれがないのが非常に大きかった。おかげでかなりストレスフリーに作業ができた。

あ、ちなみに時給は2000円。まあ普通だと思う。


アルバイト期間

インターンが結構楽しかったので継続的になんかしてもいいですかって聞いたら数日待ってくれとは言われたが無事OKをもらった。2ヶ月更新と言うことで同意している。5月末、7月末に継続の意思を聞くとのこと。「結果にはコミットしてもらいます」とは言われたが、やることは頼まれたことをやるだけなのでまあやるだけ。英語が読めてGoogleの使い方がわかってPythonが書ければできる。チームの他のメンバーは微分方程式の話題で盛り上がっていたりするが(僕だけ専門が違うのでついていけない)、僕の業務には必要ない。

仮にPFNのインターンに合格したら8月からそちらに行くのでエムスリーはそこまでにするつもり。できれば複数の企業を見ておきたいので。


今まで僕はアカデミアか臨床のどちらかに行くものだと思っていた。最近色々あって僕は最終的に企業に行く可能性が高いと思う。

企業で働くときの目標は判断基準で、お金になるかならないかだ。即物的な感じだがお金にならないとそもそも会社が回らない。

それはそれでドライでいいのだが、僕はそこにいささかの迷いを感じる。僕は一慢性疾患の患者として、一医学生として、医療の質の向上に貢献したいと言う気持ちが少なからずある。企業でお金を追い求めるという姿勢が必ずしもこの目標と合致するわけではない。また、医療の質の向上によって幸福をもたらしたいのは第一に患者、第二に医療従事者である。この点エムスリーは医療従事者に焦点を当てているので医療従事者を介して患者に貢献する感じになる。できれば僕は患者に直接にアプローチしたい(医療従事者が好きになれないと言うのもある)。そこをどうするかが目下の課題になっている。

僕は自分の好きなことを曲げたくない。僕はものを組み立てるのが好きだし医療を介してみんなが幸せになる世界を目指すのが好きだ。そのことと現実世界の折り合いをつけること(諦めることではない)、今からやっていきたい。大学卒業まであと3年ある。

自分の能力、自分の興味、組織の利益、社会全体の利益を考えて全てのベクトルがだいたい同じ方向を向くような良い解法を探していきたい。