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【政治】

自民改憲条文案後 憲法審議論ゼロ 急ぐ首相 与野党分断

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 三日、新元号「令和」で初めての憲法記念日を迎えた。国会での憲法論議は、自民党が昨年三月に四項目の改憲条文案をまとめて以降、衆参両院の憲法審査会で一回も議論が行われていない。改憲を性急に進める安倍晋三首相(自民党総裁)の姿勢が、静かに議論する環境を失わせ、与野党協調の上に成り立つ憲法論議の土台を壊している。 (清水俊介)

 「いよいよ結党以来の課題である憲法改正に取り組む時が来た」

 昨年三月二十五日、東京都内のホテルで開かれた自民党大会で、首相はこう宣言した。

 その三日前、党憲法改正推進本部は、自衛隊の存在明記など四項目の改憲条文案の意見集約を終えていた。二階俊博幹事長は大会で「この案をもとに憲法審で議論を深め、原案を策定し、発議を目指す」と強調。改憲勢力は衆参両院で、改憲発議に必要な議席を占めており、二〇二〇年の新憲法施行を目指す首相は、一八年中にも発議することを目指した。

 ところがその後、幹事の選任手続きなどを除いて、両院の憲法審は開かれていない。特に衆院憲法審は、一八年の通常国会と臨時国会、今国会と、現時点まで三国会にわたって議論ゼロ。今月九日、約一年半ぶりに議論を行う予定だが、国民投票時のCM規制をテーマにした参考人招致であり、自民党が目指す改憲条文案の提示はない見通し。

 自民党が条文案をまとめる前は、両院の憲法審では普通に議論が行われ、テーマ別に参考人質疑や自由討議が行われていた。議論が止まったのは、森友、加計(かけ)問題で与野党の対立が激化した影響もあるが、自民党が、目指す改憲像を具体的に決めた事実が大きい。従来は一般論の枠内だった憲法論議が党派性を帯び、与野党が落ち着いて議論できる環境ではなくなった。

 条文案の決定後、首相は憲法審での提示に再三意欲を示し、党の推進本部長には側近の下村博文氏を起用した。野党側は「『憲法は公権力を縛るルール』という定義を理解していない方と議論しても仕方ない」(立憲民主党の枝野幸男代表)と、憲法で縛られている首相が改憲を推し進めることに反発を強めていった。

 二〇〇〇年に設置された衆院憲法調査会で会長を務めた中山太郎元外相は、本紙の書面インタビューに応じ、今の憲法論議は与野党が分断されていると懸念。「与野党の合意形成に粘り強く努力すべきだ」と訴える。「国会は期限を設けることなく熟議してほしい」と、日程ありきの改憲も戒めている。

<改憲勢力の議席> 2016年参院選の結果、自民、公明両党と、改憲に前向きなおおさか維新の会(当時)、日本のこころを大切にする党(同)に一部無所属議員を加えた改憲勢力は、衆参両院で、改憲発議に必要な3分の2以上の議席を超えた。今も自公と日本維新の会、保守系議員でつくる希望の党、一部無所属議員を合わせ、3分の2以上を維持している。

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