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【首都スポ】

[テコンドー]国内無敵の山田美諭 夢は東京五輪で金メダル

2019年5月3日 紙面から

東京五輪の代表入りを目指すテコンドー女子49キロ級の山田美諭は柔軟性抜群! 

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 令和元年最初の首都スポは、日本テコンドー界のマドンナを紹介! 格闘技とは全く無縁に見える容姿と内に秘めた強烈な闘争本能を兼ね備える、2018年ジャカルタ・アジア大会49キロ級銅メダリストの山田美諭(25)=城北信用金庫=がその人だ。今年2月の全日本選手権(千葉)同級で3連覇を飾り、国内では天下無敵。東京五輪で金メダル獲得を最大の目標に掲げ、その晴れ舞台に向けて突き進む。 (フリージャーナリスト・辛仁夏)

 左前足を使っての押し蹴り(カット)を繰り出し、中段蹴りからの上段蹴りの連続攻撃。正確で華麗な足技を駆使しながら、積極果敢で強気な戦いは迫力満点だった。2月の全日本選手権で、国内敵なしの山田は初戦から3試合とも圧勝で3連覇を飾り、他階級を含めて通算8度目となる日本一に輝いた。

 「優勝することは絶対と自分の中では思っていました。東京オリンピックで金メダルを取るのに、ここで負けるのはあり得ない話。(国内大会で)しっかり勝つことは当たり前だと思います」

 五輪代表の座を誰にも譲らないという第一人者のプライドがのぞく。それもそのはずだ。「自分が出る」と自信を持って目指したリオデジャネイロ五輪を前に、アクシデントに見舞われた。2016年1月、五輪大陸予選の日本代表最終選考会。準決勝の試合中に右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂した。

 2カ月後の手術後、約9カ月にも及んだ過酷なリハビリ生活を経験。一度は「辞めよう」と思ったこともあるというが、「すごく悔しくて、絶対に復活したら活躍してやる」と誓い、周囲の支えもあって続行を決めた。4年越しの五輪出場に向けて着実に歩を進め、自国開催の晴れ舞台で頂点を狙う覚悟を持つ。

 空手を始めたのは3歳。実家が空手道場で、父親が師範だった。しかし、成長とともに空手向きでない細身の体格となった。

 「父が勧めたテコンドーを先に兄(仁川アジア大会58キロ級銅の勇磨さん)が始め、(のちにテコンドー道場を開く)父ものめり込んだので、カットという足技が得意な私も中1の時に転向しました。(空手との)一番の違いは痛くなかったこと。ポイントが見えるし、わかりやすい。スポーツですけど、ゲーム感覚で駆け引きがあって、すごく楽しいところが魅力です」

 全日本優勝で、令和最初の世界選手権(15日開幕、英・マンチェスター)の代表になり、東京五輪代表レースの第一関門に挑む。自身4度目の大舞台だ。

 「大学1年でシニアの日本代表になってから、いままで公式大会でメダルを取ったことがなかったんです。一番大きなきっかけは(昨年の)アジア大会。銅メダルを取って自信になり、メダルは当たり前と思うようになりました。今が一番、トップ選手ともやりあえる自信がついています。今まではイメージが湧かなかった決勝の舞台に絶対に立てると思えるし、銅メダルもありえません」

 穏やかな口調ながら、芯の強さをうかがわせる強気な発言をさらりと言って自身を鼓舞する。その裏にあるのは、膝の故障。モチベーションを高く持つ契機となり、リハビリの過程で強靱(きょうじん)な体づくりに取り組むことにもつながった。まさに、けがの功名と言えるだろう。

 笑顔がチャームポイントのほんわか女子の最終目標は「東京五輪の金メダル」。リオ五輪に行けなかった悔しさをバネに、次こそは自分の出番だと意欲満々だ。「アジア大会やグランプリ大会で銅メダルを取り、一気に自分の中でオリンピックで金メダルを取ることが明確な目標になりました」と前を見据えている。

<大東文化大テコンドー部・金井洋監督(大学時代から山田を指導)> 「身体が柔軟で、足が長いので、高得点となる上段への攻撃が得意。素直で非常に優しいし、穏やかで人間味あふれる応援したくなる選手で、彼女を悪く言う人はいない」

◆美諭アラカルト

笑顔もキュート=大東文化大板橋キャンパスで(いずれも北田美和子撮影)

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 ●マイブーム「映画がすごく好きです。映画館の雰囲気が好きで、オフの日は映画を見に行きます。今年一番良かったのは、やっぱり『ボヘミアン・ラプソディ』。すごく感動して泣きましたし、燃えてやる気が出ました!(笑)」

 ●元気の源「音楽は大好きです。朝から音楽をかけてずっと聴いていますし、試合前もけっこう聴きます。絢香さんやサンボマスターとか」

 ●好きなタイプ 男女にかかわらず「さっぱりした人。自分の性格は、嫌なことがあってもすぐに忘れるタイプ」。

 ●大好物はエビ「愛知県の実家に帰ると、絶対におばあちゃんにエビフライを作ってもらいます!(満面の笑み)」

 ●憧れは伊調馨「ぶれない人で、自分の芯を持って戦っているイメージがすごくあるので、アスリートとして格好いい。アジア大会でご一緒したんですけど、お話はしたことがないので、東京五輪でお会いして、お話ししたいですね」

<全日本選手権VTR> 山田の全3試合のスコアは42-2、54-9、59-5。1試合約20発以上の蹴りで圧倒した(蹴り技による得点は胴が2点、頭部が3点)。

<東京五輪への道> 男女とも4階級(女子は49キロ、57キロ、67キロ、67キロ超)のうち2階級で派遣。派遣階級は、今月の世界選手権3位入賞などの条件で決定。例えば、49キロ級の山田が3位以内に入ると、49キロ級が派遣階級の一つとなる(入賞=代表ではない)。選考会は3段階で、最終選考会は来年1月予定。なお、今年12月発表の五輪ランク5位以内-などの条件で個人での出場資格を得ることもある。

<山田美諭(やまだ・みゆ)> 1993(平成5)年12月13日生まれの25歳。愛知県瀬戸市出身。168センチ。愛知・聖霊高から大東文化大を経て、城北信用金庫所属。3歳から空手を習い、中1からテコンドーに転向。13年に初出場の世界選手権で8強。18年アジア大会で国際大会初の銅メダル。19年全日本選手権49キロ級3連覇(他階級を含め8度目の優勝)。家族は両親と兄、祖母。

練習で気合満点の山田(右)

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 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。

 

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