2019年5月1日に予約受付が開始され、5月21日に発売予定の一体型VRヘッドマウントディスプレイト“Oculus Quest”。発売を前に、本製粉の検証機が編集部に到着。さっそく開封しての商品構成と使用感をチェックしてみた。

スタンドアローンで楽しめる新型VRデバイス“Oculus Quest”をチェック

 Oculus VRが今春にリリースする“Oculus Quest”は、PCなどを必要とせず、ヘッドセット(+コントローラ)のみで動作する、一体型VRヘッドマウントディスプレイとなっている。

 同社はいまより約1年ほど前、スタンドアローン型VRデバイスの“Oculus Go”をリリースしているが、これはスマートフォンなどを装着して利用する簡易的なVRヘッドセットと同様、3DoF(Degree of Freedom=自由度)のみにしか対応していない製品であった。

 3DoFとは、頭部の動き(頭の上下、左右、傾き)の3軸の動きにしか対応していないため、プレイヤーが自立した位置から、頭を傾けて確認できる範囲のVR体験は行えるが、VR空間内を移動するといった動作には対応していなかった。

 今回登場する“Oculus Quest”は、頭部の動きに加え、装着者の前後、左右、上下の動きにも追随する6DoFに対応。VR空間内を自由に動き回る体験が可能になっている。

上記がVR方式の概念図。左が3DoFは、一定の位置から360度方向を楽しめる3軸に対応したシステム。右の6DoFは3DoFの動作に加え、移動にも対応することで物体に近づいたり離れたりといった、3軸+3方向の移動も可能になる。両方の仕組みをクルマを見ている状態に置き換えて説明すると、3DoFはシートに座った状態で360度方向を自由に眺めることができる方式。6DoFは3DoFと同じ体験ができることに加え、シートを立って車外に出て、クルマを好きな方向から見ていくことができるというように、VR体験そのものが大きく変わってくることになる。

 3DoF方式は、デバイスに内蔵しているモーションセンサーのみで対応することができるため、スマートフォンを装着するタイプのように簡易的なVRデバイスに用いられることが多かったが、6DoF方式に対応するとなると、ヘッドセットの位置を特定するポジショントラッキングが必要になる。

 これまでに登場しているOculus RiftやHTC Viveといったアウトサイドイン方式のモデルは、ヘッドセットの動きを検出するための外部センサーを別途、設置しなければならないというわけだ。さらに、ヘッドセットにもPCと繋がるケーブルが繋がっているため、移動に対応するとはいってもコードが絡まないように注意する必要もあった。

 しかし、今回登場する“Oculus Quest”は、外部センサーを用いずに、ヘッドセット部に搭載したセンサーやカメラを利用してポジショントラッキングするインサイドアウト方式を採用。外部センサーを用意・設置する必要もなく、さらに別途ハイエンドPCの用意やヘッドセットに繋がるケーブルもないため、本格的にVR空間内を自由に動き回るVR体験が実現することになる。

VR空間内を自由に動き回れると言っても、室内空間であれば設置物や壁などといった障害が存在する。VR体験中、これらの障害に接触してしまわないよう、“Oculus Quest”ではあらかじめ、行動エリアを指定することが可能。“Oculus Quest”では、このエリア外枠のラインを“ガーディアン境界線”と呼んでおり、これに近づくと画面内にエリア外を示す境界線が表示され、注意を促してくれる。

さっそく開封しながら、“Oculus Quest”の商品構成などをじっくり観察

 というわけで、さっそく本機を受け取ってみたのだが、パッケージが思った以上にコンパクトなことにまず驚いた。Oculus Questのパッケージサイズは横幅:370mm×高さ:228mm×奥行:125mmと、人によってサイズの印象は異なるかもしれないが、6DoFのVRデバイスとコントローラが収まっているパッケージとしては、かなり小さくまとまっている印象を受けた。

“Oculus Quest”は弊社の手提げ紙袋(高さ:445mm×横幅:320mm×奥行き:110mmと一般的なサイズ)にもスッポリと入る大きさ。持ち運ぶのにさほど苦労しないサイズ感と言えるだろう。
本体前面は、“Oculus Quest”本体とコントローラをプリント。背面には、全面の画像を後ろから見た画像とともに、対応アプリの一部を表示。対象年齢が13歳以上であることもパッケージ上に記載されている。
パッケージの外装を外すと、中からブラックボックスが登場。中央部分に、同じく黒色で“Oculus”のロゴが記されている。
参考までに、Nintendo Switchのパッケージ(横幅:350mm×横幅:197mm×奥行:93mm)と比較。縦横奥行きともに、“Oculus Quest”がひと回り程度大きなサイズといったところだろうか。

 ひととおり外観をチェックしたところで、いよいよ開封に突入。ガジェットや電子デバイス好きの筆者にとっては、パッケージを開けて商品と対面する瞬間はワクワクするものだが、“Oculus Quest”はどのような高揚感をもたらせてくれるのだろうか。

 ブラックボックスの上蓋を開けると、いきなり商品がお披露目する形で登場した。パッケージの中にはVRヘッドセットのほか、ふたつのコントローラ、付属品が収まるボックスが無駄なスペースなく収まっており、外箱だけでなく、中身も全体的に黒基調で統一されたいた。余計な小箱や仕切りがなく、いきなり商品に出会えるパッケージングは個人的に好ましいポイントだ。

ブラックボックスの蓋を取った状態。ヘッドセットとコントローラがまとまりよく収まっている。
こちらが中身を取り出した状態。本体+コントローラ+付属品という非常にシンプルな構成となっている。

 付属品ボックスの中には、本体充電用アダプタ、グラススペーサー、USBケーブル、コントローラ用電池(単三サイズ×2)、リファレンスガイド、マニュアルを収納。

 同梱されているケーブルが充電用のUSB1本のみということも、商品構成が非常にスッキリしている要因のひとつだろう。

こちらは付属ボックスの中身。中央にあるグラススペーサーは、眼鏡の上からヘッドセットを装着する際に用いるアダプタ。スペーサーをヘッドセットとクッションの間に挟み込むことで、装着面からレンズまでの距離を広く撮ることができる。リファレンスガイドとマニュアルは多言語対応。
USBケーブルの端子部分は両端がType-C(片側はL字タイプ)を採用。充電用アダプタとヘッドセットの充電端子も、USB Type-Cとなっている。

 Oculus Questのヘッドセットの重量は約450g程度と、これまでに登場している他機種と比べて若干軽めと言えるところだが、さらにファブリック地を利用した本体素材の効果もあってか、思った以上に軽快な印象を受ける。

 ヘッドセットの固定には、頭頂部&左右をホールドするバンドタイプを採用。調整はマジックテープ式だが、左右バンド部にスプリング式のテンション機構が用いられているので、一度サイズを固定したら、2回目以降の使用時はヘッドセット本体を目に当て、帽子を被るようにバンドを後方に引っ張るだけで簡単に装着することができる。

 ちなみに、前述したように本ヘッドセットはケーブルレスで、外部映像出力端子も用意されていないが、スマホなどの外部デバイスにミラーリングで(ヘッドセットに映し出されている映像を)映し出せるので、装着者がどのような映像を見ているのか、ほかの人間もいっしょに見ることも可能だ。

ヘッドセット本体は、前面こそプラスチック素材となっているが、本体部分はファブリック地となっており、軽快感が感じられるデザイン。
本体前面の四隅には、ポジショントラッキング用のカメラが搭載されている。
※正面の下部に貼ってある注意書きのシールは剥がすことができます。
本体前面の左側には充電用のUSB Type-C端子、右側にはスリープボタンを搭載。両サイドのヘッドバンド付け根の下側にヘッドホンジャックが設けられている。
本体下部には、左右レンズの位置の調整レバーと、ボリュームボタンが用意されている。
ヘッドバンドの裏側に、技術基準適合認定の技適マークをプリント。また、バンドの付け根付近に見える縦型のスリットはスピーカーとなっており、両サイドに搭載。本機だけで映像だけでなくサウンドも楽しめる。
レンズ部の回りは、クッション性の高いスポンジで取り囲まれており、密閉性は高め。外側のスポンジ部はグラススペーサーを用いる際やクリーニングのために取り外すことも可能だ。
参考用に、プレイステーション VRとサイズを比較。ディスプレイ部分のサイズはそれほど大きな違いは見られないが、本体素材の違いとバンド部分の作りが大きく異なっていることから、“Oculus Quest”のほうがコンパクトな印象を受ける。

 コントローラは右手用、左手用ともに専用設計で、本体上部にはセンサーを搭載したリング型のデザインを採用。それぞれ単三電池1本で作動するようになっており、充電用の端子などはとくに用意されていない。

 VR用コントローラなので、基本的な操作はモーションセンサーと各種ボタンを併用する形で行うことになる。アナログスティックは押し込み動作にも対応しており、さらにトリガーボタンとグリップボタンはストロークのあるアナログボタンとなっている。また、各ボタンのトップ部分はタッチセンサーが搭載されているのか、ボタンの上に指を置いた状態とボタンから指を離した状態をソフトウェアで認識することも可能。ゲーム内で何かに触れた感触などは、内蔵する振動機能で伝えられる。

コントローラのリングの内側部分には、アナログスティックひとつと操作ボタンを配置。人差し指で操作するトリガーボタン、中指で操作するグリップボタンなど、指が届きやすい位置にも各種ボタンが用意されている。また、左右それぞれの専用ボタンとして、左手にはメニューボタンが、右手にはOculusボタンも設けられている。
コントローラは非常にコンパクトなサイズで、トリガー&グリップボタンを含めて、各種ボタン類が自然な位置にくるデザインとなっている。
それぞれのグリップ部をスライドして開けると、電池の収納部が現れる。グリップ部の蓋の装着法がよくあるツメを引っかけるものではなく、マグネットを採用している点はおもしろいポイントだ。

驚くほど簡単なセットアップを済ませ、さっそく使用感を確認

 本機を使用するにはまず、最初にスマートフォンに専用アプリ『Oculus』をインストール。その後、スマホとペアリングさせることで、“Oculus Quest”の使用が可能になる。『Oculus』はソフトの購入や管理、細かな設定などが行えるアプリとなっているが、ペアリング後はスマホがなくても“Oculus Quest”単体で使用できる。

 今回は発売前の機種のため、標準で用意されている『Oculus Browser』と、基本的な操作方法を学べるチュートリアルソフト『First Steps』をプレイ。

 『Oculus Browser』は、いわゆるインターネットブラウザソフト。仮想空間内に浮かび上がった大画面を通してネットブラウジングが行えるものだが、YouTubeやTwichなどといった動画サービスも、これまでにない大画面で楽しむことが可能。

 YouTubeの3Dコンテンツなどもきちんと立体視で視聴もできるうえ、全画面表示にすると視界ギリギリの範囲までスクリーンが拡大。個人専用のプライベートシアターで映像を楽しんでいるような感覚を味わうことができる。

 『First Steps』は、おもにふたつのコントローラの使い方を習熟するためのアプリ。VR空間内に置かれているアイテムを使ったトレーニングや、簡単なゲームを通じてコントローラの利用法を学ぶことができる。

ブラウザも、このように目の前に広がる仮想巨大スクリーンで閲覧可能。スクリーンサイズは個人によって受け取り方は変わるかもしれないが、筆者の個人的な感覚では2メートル先にある200インチ程度のスクリーンを見ているような印象。YouTubeなどで全画面表示にすると、さらに巨大なスクリーンで視聴することもできる。
『First Steps』では、VR空間内でのコントローラの基本的な使い方を教えてくれる。画面上に映し出されるコントローラの追従性はかなり良好。
簡単なガンシューティングゲームも用意されているので、VRの楽しさを味わいながら操作法を学んでいける。

 本機を使用してみてのファーストインプレッションは、何よりもケーブルレスによる快適なVR体験に尽きる。3DoFでのVR体験であれば装着者が動き回ることはほとんどないため、ケーブルが繋がっているというデメリットはあまり気にしなくてもいいが、それでも頭の向きを変える際、首元にあるケーブルが気になったりすることも度々あるのではないだろうか。

 それが、“Oculus Quest”では頭をどのように動かしても、体にまとわりつくケーブルを感じることはない。さらに、本機は6DoFに対応しているので、自由に動き回るという点におけるケーブルレス環境は、これ以上ないVR体験をもたらせてくれるだろう。

 今回、短時間ではあったが使用している限りではインサイドアウト方式によるポジショントラッキングも正確なうえ、コントローラの表示や動作もすこぶる快適で、これといったストレスを感じることがなかった点は◎。

 ディスプレイ部には解像度1600×1440の有機ELパネルを左右2枚使用するなど、現在市場に出ているVRデバイスと比較しても高解像度のパネルが用いられおり、頭部の動きとディスプレイ表示の誤差もさほど感じられなかったことは、VR酔いの低減にも有効なはずだ。

 さらに、内蔵スピーカーのサウンドも想像以上のもので、音の広がりも自然に感じられたほか、『First Steps』プレイ時には音の定位も頭の向きに合わせて移動するなど、快適なプレイに貢献していたことを付け加えておきたい。

※頭部や体の動きと視界に表示される映像にズレが発生すると、VR酔いと呼ばれる乗り物酔いに近い状態に陥ることがある。

動き回るVRにおいて、ケーブル接続はあらぬトラブルを起こすこともあるので、ケーブルレスは理想的な状態と言える。

 VR元年と呼ばれた2016年から約3年が経ち、VRの技術は年々進化を遂げてきているが、コンシューマーレベルで見てみると、まだまだ普及しているとは言いがたい状況が続いている。

 VRがさらに普及するには、ヘッドセット部の高解像度化、軽量化、低価格化といった要素に加え、使いやすさの面でもさらに進化する必要がある。“Oculus Quest”は、これまでの6DoF方式のVR機器と比較すると購入しやすい価格帯になっており、さらに使いやすさの面でもケーブルレスといった進化ぶりを見せてくれている。

 現在、公式サイトで告知されている価格は本体容量が64GBモデルが49800円、128GBモデルが62800円となっているが、これ以外に(スマートフォンと無線LAN環境は必要なものの)機器の用意や配線の必要もなく、購入後すぐに本格的な(6DoF方式の)VR体験ができるというのは、本機ならではの大きなメリットと言えるだろう。

 とくに、VRを体験するための敷居の低さは、スマートフォンを入手して使用するまでとさほど変わらないくらいの容易さで、今後も手軽に楽しめるアトラクションのようなゲームコンテンツが多数登場するとのことなので、これまでVRは気になっていたけど、高価&めんどくさいなどの理由で敬遠していた人にもオススメしたいところだ。

 “Oculus Quest”は2019年5月21日発売予定で、現在公式サイトにて予約受付中。配線の束縛もなく自由に動き回れるというVR体験は、これまでのVRとは異なる感動体験をもたらしてくれる。VRの魅力は画像や文章、動画ですら伝えることは難しいが、“Oculus Quest”は本格的なVRの世界に簡単に入ることができるデバイスに仕上がっているので、その手軽さと凄さをぜひ一度体験してもらいたい。