「金曜8時のプロレスコラム」(毎週金曜午前8時配信)は、令和になっても昭和プロレスにこだわっていきます。
4月27日に70歳の誕生日を迎えた“昭和のテロリスト”で“関節技の鬼”の藤原喜明が、東京・新宿区のリーガロイヤルホテルで「古希祝フルスイングトーク」を開催し、昭和のプロレスファン320人に健在をアピールした。
プロレスグッズを展開するチームフルスイングの演出で、藤原の弟子である前田日明氏(60)と船木誠勝(50)がトークショーを展開し、さらに特別ゲストとして師匠のアントニオ猪木参院議員(76)が登壇し、豪華な古希パーティーとなった。
これまで藤原組長のバースデートークショーは、同じくチームフルスイング主催で2年連続でキラー・カーンの「居酒屋カンちゃん」(新宿区)で少人数で開催されていたが、このメンバーが集まるとなると、ホテル開催は当然だろう。
猪木氏は藤原が1972年に新日本プロレスに入門した時からの師匠。弟子の前田氏とは84年、89年と新旧UWFで合流した同志でもあり、船木は91年の藤原組旗揚げまで付いてきた弟子で、まさに藤原組長の歴史が体現される顔合わせだった。
主催したチームフルスイングの利根川亘代表(47)に感謝するしかない。利根川さんは、後楽園ホールのグッズ売り場で、大きな声でレジェンド系選手のTシャツを売っていることで有名。これについては、あらためて書くとしよう。
藤原組長はいつものように出番前からバーボンをあおっている。「本日は、こんな大雪の中、ざっと見て1万5000人の方々にご来場いただきまして本当にありがとうございます。ただ70歳のじじいになった、それだけの話でございます」
猪木氏は「本当は休みでゆっくりしたかったけど、とにかく藤原に呼ばれたらしょうがない。やっぱり、組長だもんね」と言い「藤原は天才でした。浪曲をやったり、芸達者というか、変な器(陶芸)も作るんですね。絵もうまいし」とかつての付き人を称賛。恐縮しながらも“酒気帯び組長”は強い。「猪木さん、ちょっと滑舌悪いですよ」と突っ込んで笑わせた。猪木氏は「日本がよくなりますように。1、2、3、ダァーッ!」で締め、おいしい所を持って行ったが、今回ばかりはUWF同窓会がメインテーマだろう。
猪木氏登場前後に、3人によるトークがタレントの「東京ダイナマイト」ハチミツ二郎(44)の進行で展開された。前田氏は「気がついたら自分が60歳、藤原さんが70歳、船木がもう50歳。何かタイムマシンに乗ってぴょっと連れてこられたみたいで。UWF時代が昨日のことのように思い出されます」と振り返った。
船木が15歳で新日本プロレスに入門した1984年にUWFが旗揚げされ、前田氏と藤原が出て行った。「藤原さんがUWFに行くとき、さみしくて泣いちゃったんです。藤原さんは『俺はUWFへ行く。前田の所に行って、キックと投げと関節技の試合をするんだ』と言っていた。すごいことになるんじゃないかなと、ちょっと怖くなりました」
88年に前田氏が旗揚げした新生UWFに89年に藤原と船木が合流した話になって、前田氏の述懐を船木が「違います」と言って食い違いが生じた。そこで副産物が生まれる。招待客として観客席にいた元UWFの山崎一夫氏(56)が「黙ってられない」と飛び入り参加したのだ。
山崎氏は藤原にとって初のチャンピオンベルトとなったIWGPタッグ選手権のパートナーでもあった。高田延彦氏(57)が不在であることを考えると、山崎氏が来場した意義は大きい。新星UWFから3派に分裂したリングス(前田氏)、UWFインターナショナル(山崎氏)、藤原組(藤原)、さらに藤原組から派生したパンクラス(船木)の歴史が凝縮された形となったのだ。これに猪木氏となると、旧UWF誕生の歴史を考えれば、恩讐を超えた大団円ということになる。
トークショーでは、それぞれの記憶違いは多々あったが、藤原は「覚えてないよ。俺はもう70歳だよ。頭、半分ぐらいぼーっとしてる。今、昭和何年だっけ」と言って笑わせた。ハチミツ二郎は「昭和で言えば94年です」とまじめに返していた。
藤原は前田氏と船木に対して「俺もバカだから、バカが好きなんだよ。当時は要領のいいヤツはスターになったけど、要領の悪い奴はみんな俺の弟子になった」と苦笑。そして「誰でも年は取る。でも年寄りになる必要はない」と共通の師匠である“プロレスの神様”カール・ゴッチさん(2007年に82歳で没)の名言を紹介した。50歳、60歳、70歳…青春に年齢制限はない。令和になっても、昭和のプロレスファンでいてもいいと強く思った。(酒井 隆之)
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