『スレイン法国・巫女の私室』『シャルティア』『デメテルを夜な夜なこっそり調教』のお題目を元に作られました。
sugarmaple様、お題目ありがとうですよ!
「キィル、今宵はもういいですわ」
いつもの部屋。いつもの自室。スレイン法国にある神殿の、特別上位の者にしか許されぬ区域にある私の部屋。それは私が、それだけ重要な位置に居る事を示している。私には、まるせ狭い牢獄のようなこの部屋がとても窮屈で嫌だった。
でも今は──
「そうでございますか。では失礼いたします、巫女デメテル」
そう微笑む侍従のキィル・エンリカは嫋やかに一礼すると、音もなく扉を閉める。なんと女性的な人であろうか。と、いつもそう思う。このスレイン法国でも彼女ほどの美貌を持つ女性はそうそう居ないだろう。何しろあの御方の初恋の方であり、はじめての──
「──そんな事を考えている場合ではありませんね」
素早く、音を立てないようにしながら扉に耳を当てる。予想に違わずゆっくりと遠くなっていく足音。それが途切れるまで私はじっと聞き耳を立て続けた。
「もう、大丈夫の様ですわね」
少しだけ気が抜けて、ほっと胸を撫で下ろす。勘の良い彼女の事だ。最近の私を見て何かを感じて居るかもしれない。そう思えたからこその行動だ。
いけないことをしている。それは理解している。
あの方を騙している。それも分かっている。
でも──
「いけない娘でありんすね、そんなに待てなかったでありんすかぇ?」
誰もいない部屋に私ではない声が響く。全身を熔かす熱く、冷たい声が。その声が私の耳に、ただ届いただけ。ただそれだけで私の身体は歓喜に打ち震えていた。
「あぁ、あぁ。お待ちしておりました、一日千秋の思いで。あれは泡沫の夢だったのではないかと、恐怖に打ち震えながら」
とろりと流れ落ちる涎を拭きもせず、ゆっくりと声の主へと近づく。きっとだらしない顔をしているのだろう。きっとはしたない顔をしているのだろう。でもそれを止められる精神など、とうに私には残ってなどいない。
「ほほ、可愛い娘でありんす。今宵も、たっぷりと楽しませてあげるでありんす」
まるで欠けた月を彷彿とさせる彼女の笑み。魅惑的──否、蠱惑的なその笑みは私の心を掴んで離さない。いや、そうではない。もっと自分に正直になろう。そう決めたのに、彼女の手に納まる黒光りしたそれを直視することはまだ出来そうになかった。
「あぁ、お願いいたします。お願いいたします。貴方様のそれを──それを──」
彼女の前で力なく崩れ落ち、それでもなお彼女のスカートを掴みながら膝立ちで懇願する。顎を伝う涎など気にする余裕もなく。だらしなく舌を伸ばしながら。
「そんなに待ちきれないでありんすかぇ?仕方ない娘でありんす。ほら、頬張ってみせるが良いでありんす」
「んっ──んんっ──っっ!!」
彼女は嗜虐的に笑むと、私の身体を荒々しく抱きしめた。私を逃がさぬように。これから訪れる、至福の時から逃れられぬように。
逃げなどしない。逃げられるわけがない。荒々しく私の口へと突き立てられたそれを、私は歯を当てぬように気を付けながら受け入れた。
「おやおや、少々入れ過ぎたでありんす。お前があまりに物欲しそうにするからいけないでありんす」
「っはぁ──っと──もっとぉ──」
突き入れられたそれは瞬く間に私の口から抜き取られた。ぬらぬらと私の唾液を纏ったそれが怪しく光る。私を魅了して已まないそれが。
「先に言っておくでありんすが、今宵は中途半端で止める気はありんせん。お前の『ハラ』の限界を超えてもなお、止める気は無いでありんす。それでも──続けてほしいでありんすかぇ?」
「はい──ぃ──下さいませ。たっぷりと、たくさん。下さいませ──後生でございます。最後まで、お願いいたし──んむぅっっ──っっ!!」
あぁ、止まらない。止められない。その結果、皆を絶望させるやもしれないとしても。皆が悲しむかもしれないとしても。もうそれを拒絶することなど出来はしない。
私に突き入れられた名も分からぬ魅惑的なそれを、全身を突き抜ける甘い快感を。私は嬉々として受け入れることしか出来ないのだ。
「ほう、お前が──」
あの御方に出あったのは今から凡そ一か月前ほどだっただろうか。今宵と全く同じように、私しかいないはずの部屋にあの御方の声が響いていたのだ。
「だ、誰でございますっ!!」
あの頃の私はまだ何も知らぬただの子娘だった。あのような素晴らしいモノを下さる方など思いも依らず、誰か来てくれる。誰か助けてくれる事に一縷の望みを掛けて声を荒げるしかできない、ただの子娘でしかなかった。
しかし私は巫女だ。寝所に誰も近づくことは無い。侍従であるキィルですら私は寝た後は、起床の時間まで近づかないほどだ。それが裏目に出ていた。否、好い方向へ傾いたというべきなのだろうか。
「今日はお前にプレゼントを持ってきてあげたでありんす」
とん、と優しく押される。そう思った時には私はベッドに倒れ、視界には天井しか映って──否、私の上に跨ってきた彼女の嗜虐的な笑みしか映っていなかった。
「お、おやめ下さい!私は巫女デメテル。かの大神に純潔を捧げし者。あ、貴方様な──ひっ──」
薄暗い部屋であっても雄々しく主張したそれ。彼女の右手に納まった、蝋燭の光に照らされ黒光りしたそれが視界に映り、小さく悲鳴を上げてしまう。それが何かは分からない。でも決して一度も妄想したことがなかったわけではない。あの御方のそれを、いつかはその身に受け、子を授かるようにと育てられた私だ。巫女になった今ですら、その記憶がなくなったわけではない。否、巫女になったからこそ。この身に受ける事が出来なくなった今だからこそ、強く想う事が増えて来たとも言える。
そして男子禁制たるこの区域では、あのように黒光りするモノで懸想し合う二人にて使用すると。そう耳にする事も少なく無かった。
「お、お願いいたします──わたっ──わたしっ──ひぅっ!!」
「おやおや、そんなに震えて──食べてしまいたくなってしまうでありんすぇ」
彼女が覆い被さってくる。彼女の熱く冷たい吐息が私の耳を擽ってくる。それでもなお私の視線は、私の目の前をちらちらと揺らされる黒光りするそれに捕らえられていた。
「今宵は泡沫の夢。起きて朝になれば全て元通り。何も変わらぬ日常が始まるでありんす。だから──ほらっ!」
「やっ──んんっ!!」
黒光りしたモノが口に押し付けられる。すると、先端の割れている所からドロリとした白い何かが出てきた。それを舌で味わってしまった。それからは、もう抵抗など出来なくなってしまったのだ。
「んっ──んんっ──はぁ──んぁ──」
「おやおや、そんなに美味しそうに頬張って──もっと突っ込んであげるでありんす!」
あんなものに抵抗できる女などいない。私は少女だ。私は巫女だ。でも、どうしようもなく女だったのだろう。ただただ、甘い魅惑的な快感に溺れる事しか出来なくなってしまっていたのだった。
「もっとぉ──もっと下さいませ──シャルティア様ぁ──」
それからほぼ毎日彼女──シャルティア様は足気く私の寝所へといらっしゃっていた。彼女の言う通り、私を楽しませるために。私を魅惑的な快感の渦へと誘う為に。
「もうこんなにぷっくりと膨らんでしまっているというのに、まだ足りないでありんすかぇ?ほんとうにはしたない娘でありんす。ほら、もっと開くでありんす。奥の奥まで、一つ残らず突っ込んであげるでありんすっ!」
そう笑みながらも、彼女は私の望む通りに突き入れてくる。もう入らぬと言う私の『ハラ』など気にせぬとばかりに。
あぁ、戻れない。もう、私は──二度と──
「はっ──ぁ──ぁさ──朝?」
それからどれほどの時が流れたのだろうか。気付けばカーテンから漏れる朝日が私の頬を優しく撫でていた。既に彼女の姿はない。部屋に充満していたあの濃厚な香りもない。まるで泡沫の夢であったかのように。でも、それが夢ではなかった事は身体が示していた。
「身体が──重い──」
それはそうだ。あれだけされたのだ。身体とて無事ではないだろう。
「あ──あぁっ──っ!!」
気怠い体を起こして見えるは歪に膨らんだ私のお腹。私は──私は──
「おはようございます、巫女デメテル──どうなされたのですか!?」
「き、キィル──わたっ──私──にんっ──うぷっ──」
何れはこうなることは予測して然るべきだった。私は彼女の子を身籠ってしまったのだ。あれだけされて出来ない筈はなかったのだ。それが当然とばかりに、悪阻が襲い掛かり、私は吐瀉物を部屋に撒き散らしていた。大きな後悔と共に。
「食べ過ぎでございますなぁ──お腹の限界以上まで食べられたご様子。昨晩、何をお食べになられましたか、巫女デメテル?」
「──はぇ?たべ──すぎ──?」
それから神殿がひっくり返るほどの騒動となっていた。それはそうだ。現在唯一ケイ・ケセ・コゥクの巫女である私が妊娠したと私自身が告白し、悪阻で吐いたのだから。
それで相手は誰なのか、いつ出来たのかなど憶測が飛び交った。私はその騒動の中、お腹の子の診察に来たのだが、その結果は悲惨なものだったのだ。
まさかただの食べ過ぎと言われるは。
「え、でも私沢山のモノを──精をこの身に受けたのです。食べ過ぎなどとは──」
「では聞きますが、その精とやら──どんな味でございましたか?」
「それはもう、とても甘露でございました!それで──」
これはいけない。単に夜こっそりと菓子を食べただけの子供扱いになってしまう。そう思い、事細かに説明していく。だというのに──話す毎に、周囲の目が冷たくなる。何と言うのか、居た堪れなくなる雰囲気になって行くのは何故なのか。
「巫女様、貴方様には必要ないと性知識につきましてお教えしなかった我らの落ち度でございます。しかしながら、流石に菓子と精を間違えるというのは些か行き過ぎでございます。そもそも──」
「うぐぅ──」
それから主治医の説明という建前の説教は、まるで泡沫の夢だったのように私のお腹から消え失せて『お腹空いた』と自己主張するまで続いたのであった。
「巫女様、最近随分とお太りになられたようです。暫く、菓子を口にすることは禁じます。よろしいですね?」
「そんなぁ──」
そして決して可愛くない自己主張で打ち切られた説教は、菓子禁止の令が発令することで閉められたのであった。
「はぁっ? エクレアが全部なくなった!?」
ナザリック地下大墳墓の執務室で仕事をしていた私の耳に飛び込んできたのはあまりに凄まじい報告だった。
それは、先月行った下位従者たちの慰労にと褒美を上げた時、トイレ掃除を頑張っていたエクレア──エクレア・エクレール・エイクレアーの報酬として上げたものだ。
その数999個。所謂1スタック分というやつだ。どうやら配下として使っている男性使用人たちに食べさせたいと思ったのか、単なる自虐ネタなのかよく分からない報酬だったが彼の望んだものということで、同じ創造主である餡ころもっちもちさんの子のペストーニャ・S・ワンコに作るように指示したものだったはずだ。しかしナザリックの素材を使うのではなくこの世界の素材を使ったからなのか、あまり日持ちしないことが発覚。上手くストレージに入れて保管する他ないという、何とも言えない状態になっていたのだ。そのためエクレアの管理はパンドラズ・アクターが行っていたはずだ。
「誰かが盗んだという可能性は?」
「あり得ません。と言うより、持っていった者は分かっておりますので」
パンドラズ・アクターが管理している。つまりナザリックに居る者の中で『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を持って居る者に限定されることになる。食べ物であるために宝物庫の浅部に保管はしてあるため、入ることさえできれば持っていく事は容易いはずだ。そういう意味でも誰かが盗んで(摘み食い)いったのかと思ったのだが、どうやら違ったらしい。
「ふむ、では誰が持って行ったというのだ、そんなに沢山」
「はい、シャルティア・ブラッドフォールンでございます」
「──シャルティアが?」
シャルティアは俺と同じアンデッドだ。つまり食事を必要としない。食べられなくはないだろうが消化は出来るかどうか怪しい。そんなシャルティアが一体何に使ったというのか。
「はい、エクレア・エクレール・エクレイアーが『まるで自分を食べるようだ』とエクレアを食べるのを拒否したのが始まりでございます」
「あぁ、それは私も聞いて居る」
だから下位メイド達に食べさせようかとしたのだが、エクレアは下位メイド達に嫌われているらしく食事のデザートに出しても食べようとしなかったらしい。単にダイエットしていただけなのか、それ程にエクレアは嫌われているのか。しかし少しづつとは言え消費ないわけにもいかず、俺の世話をしてくれている(今も後ろで控えて居る)メイドのおやつにと食べさせていたのである。で、今日もおやつにと持って来させようと思っていたのだが、もう無くなってしまっていたわけだ。
女性型であるため甘味は好きなのは変わらないのだろう。後ろに控えるメイド──リュミエールの表情はあまり動いてないが、何となくがっかりしているように俺には見えた。
「私が使ったのは精々数十個位だったと思うが」
「はい、私もそのように記憶しております」
「つまり──残りは全てシャルティアが食べたのか──?」
「後はアルベド、デミウルゴス、アウラ・ベラ・フィオーラ、マーレ・ベロ・フィオーレ。それとプイレアデスの面々が各1つづつ。セバス・チャンが10個持って行っておりますね」
意外と甘党だったらしいセバスと、甘味そのものを食べないコキュートスを除き守護者達とプレイアデスが一つづつ。それでも100に届かない。900個程度をシャルティア1人が消費したことになるわけである。
「ふぅむ、今度の褒美に甘味を入れるのも悪くはないかもしれないな」
「それは実に素晴らしい案かと」
そしてそれからしばらくの間、シャルティアは重度の甘味中毒であるという噂が実しやかにナザリック内に流れるのであった──
噂の出どころは皆の主たるアインズ・ウール・ゴウン。当の本人たるシャルティアも、ちょっと気に入っていた人間の娘の餌付けに使っていたと言うわけにもいかず、その噂を粛々と受け入れていたらしい。
というわけでエクレアネタでございました。
ただエクレアを食べさせるだけなのに、どれだけエロっぽく書けるかだけを重視してみました。
えぇ、非常に遅くなりました。次の作品はもっと早くお送りしますのでお待ちくださいませっ