助っ人が日本で活躍するためには…外国人のボクが思う“待ち受けるさまざな壁”
阪神は先週の試合で4勝1敗と調子が良さそうに見えるが、チーム本塁打「20」という数字はリーグワーストタイ。特にさみしいのはファーストを守る野手の成績で、実は本塁打はまだ出ていない。でもその虚しい数字に希望は残っているよ。ジェフリー・マルテ(27)がウエスタンで1本塁打を含む4安打の3割5分7厘とアピールし、満を持して29日に1軍昇格した。マルテこそ貧打に苦しむ阪神打線の起爆剤、虎の救世主になってくれるんじゃないかと楽しみで仕方ない。
しかし、近年の助っ人野手は期待に応えられていないのがほとんどで、晒し者になることも多々あった。阪神ファンは「バースの再来」を待っている間にグリーンウェルの二の舞を経験することが多いでしょう。外国人野手は結果的に救世主(マートン、アリアスなど)になるかダメ外国人になるか2パターンと言って過言ではないかもしれない。
よく考えてみると、新しい助っ人野手が活躍するには高いハードルが待ち受ける。そもそもプロスポーツでもっとも技術的に難しいのは野球の球を打ち返すことだと言われている。実に3割の確率で打っていれば成功者と認められる世界だ。つまり、7割失敗して当然。助っ人に求められているのは3割も欲しいけど、ホームランの量産という更なる高い理想。その期待に応える前に、助っ人野手はたくさんの壁に直面し、全てをぶち倒さないとうまく行きそうにない。
まずは文化の壁。いくら和食が最高だと言っても、慣れるには時間がかかる。時折、自分のソウルフードが食べたくなるのに日本に存在しない。天候も慣れないといけない。言葉で説明できないけどやっぱり日本は独特でアメリカと違う。そして何よりも言葉の壁は大きい。阪神には素晴らしい通訳さんがいるのはありがたいことだけど、やっぱりコミュニケーションギャップ、誤解、勘違い、難しいときが多くあるでしょう。
野球自体もメジャーと異なる部分が多い。一番大きなのは投手の攻め方かもしれない。「このカウントに絶対ストレートが来る」と思いきや変化球で追い込まれる。球威はメジャーに劣っているかもしれないけど制球力や球種の多さで打者はお手上げ。そういったところに慣れる時間が必要だ。その前からトレーニングのやり方、球場の特徴、ミーティングやコーチの指導、ベンチやロッカーの雰囲気などを考えれば、野球は同じ野球じゃないと感じるでしょう。
そればかりではなく、野球から離れても家庭のことで慣れなきゃいけない部分がある。子供がいる場合、奥さんは1人で自分の母国語が通用しない日本で子育てをしないといけなくて、友達作りに苦しんでいる可能性がある。
助っ人野手は来日するにあたって大きな覚悟を持たないといけない。その中ですぐに活躍しなかったら野次を浴びることもあれば、2軍降格もある。確かに野球は結果を出してナンボの甘くない世界。外国人は打てなければ例外なくスタメンから外して当然だ。
だけど、同じ外国人である僕は、阪神の助っ人、特に野手の心境を理解してあげたい。マルテが1軍に合流した時に、もし結果がすぐに出なくても、長い目で見て、日本の生活、日本の野球に慣れてチームの勝利に大きく貢献する日が来ることを信じて応援したい。
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。98年初めて来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」(http://www.thehanshintigers.com)で阪神情報を配信中。
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