軍歌・懐メロから盗用されたフレーズ
以前、松本零士の「銀河鉄道999」のなかのセリフを槇原敬之が盗作したという、疑惑報道がなされ、両者の間で争う動きがあった。その後、10月下旬一旦和解に向ったというが、11月には再燃しており、一体どうなったのか、良く分からないが、最近は報道がないことから収束したのかも。本件、松本零士の側が「無断使用と指摘したのは、歌詞の『夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」とのサビの部分。これが『銀河鉄道-』の名セリフ「時間は夢を裏切らない、夢も時間を裏切ってはならない」に合致すると主張。(以下省略)この騒動は、ネット上でも話題になり、掲示板やブログでたくさん取り上げられたが、どちらかというと槇原支持が多いようだ。『短い文章だけに、似てしまうこともある』『2つの文は意味が異なる』『大御所なのに小さいことを気にしている』 」(J-CASTニュース、2006年11月9日)と報じられた。
「短い文章だけに、似てしまうこともある」という槇原支持の声に対し、小生疑問を感じる。短くても印象的なフレーズは、インパクトがあり、盗作もされやすい。かくいう小生、「夜霧の古城」とは「夜霧の慕情」のタイトルをパクったのではという疑惑を持たれても仕方がない。一時は「夜霧の第二古城」という、明らかに「夜霧の第二国道」をパクったブログもあり、「薔薇の古城」と改名した。
したがって、そんな小生が言っても、あまり説得力がないが、結構歌謡曲のタイトルや決めゼリフのようなフレーズが、古い歌、それも軍歌や何らかの事情で著作権が放棄されたような懐メロの類から剽窃されているのに、最近気付いた。
<陸軍四式戦闘機「疾風」>
例えば、「燃える闘魂」、これはアントニオ猪木の専売特許のようになっている。もっとも、アントニオ猪木の発案ではなく、NET(現テレビ朝日)のアナウンサーの命名だという。
ところが、「燃える闘魂」というフレーズは、「特幹の歌」という軍歌の歌詞に出てくるのである。もちろん、「特幹の歌」は陸軍特別幹部候補生を歌った、戦時中の歌であるから、アントニオ猪木の方が新しい。
「特幹の歌」では、
「翼輝く 日の丸に 燃える闘魂 眼にも見よ 今日もさからう 雲切れば 風も静まる 太刀洗 ああ特幹の 太刀洗」
というように歌われている。この「太刀洗」とは陸軍の太刀洗航空隊のことで、陸軍特別幹部候補生とは、海軍の予科練にあたる少年航空兵たちのことである。
<陸軍一式戦闘機「隼」>
それから、軍歌、「皇軍大捷の歌」。この中のフレーズが武田鉄矢、海援隊の歌の題名になっていることを、最近ある人から教えてもらった。その人のブログ(http://blogs.yahoo.co.jp/jyo_takuya/folder/946233.html)を引用すると、
「実は、小生、新たな疑惑を発見した。それは軍歌のあるフレーズに、海援隊の有名な歌のフレーズ、というか題名がそっくりなのである。
その軍歌とは『皇軍大捷の歌』。知らない人は知らないだろうが、割と有名な軍歌である。
皇軍大捷の歌
作詞 福田米三郎 作曲 堀内敬三
一番 国を発つ日の万歳に しびれるほどの感激を こめてふったもこの腕ぞ
今その腕に長城を こえてはためく日章旗
二番 焦りつく雲に弾丸の音 敵せん滅の野にむすぶ 露営の夢は短夜に
ああぬかるみの追撃の 汗を洗えと大黄河
三番 地平か空か内蒙の 砂塵に勝利の眼が痛む 思えば遠く来たものぞ
朔風すでに吹き巻いて 北支の山野敵もなし (以下、省略)
海援隊の歌とは、『思えば遠くへ来たもんだ』である。
思えば遠くへ来たもんだ
作詞 武田鉄矢 作曲 山本康世 歌 海援隊
タイトルだけでなく、このなかで『レールの響き聞きながら 遙かな旅路夢見てた 思えば遠くへ来たもんだ』というフレーズがある。
『皇軍大捷の歌』の『思えば遠く来たものぞ』と『思えば遠くへ来たもんだ』、そっくりではないか。文語体を口語体に直し、『遠く』を『遠くへ』に替えただけ。(以下省略)」
なお、JYOさんの説はユニークなものであるが、中原中也の詩の盗作という説もある。
「道楽親父の独り言」(http://himajin-nobu.at.webry.info/200511/article_15.html)というブログでも、「 思えば遠くへ来たもんだ ☆ 海援隊と中原中也」という記事のなかで、 「ところで、このタイトルはどこかで聞いたことがある。中原中也の『頑是ない歌』の冒頭のフレーズだ。紹介すれば次のとおりだ。
思えば遠く来たもんだ 十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた 汽笛の湯気は今いずこ
(詩集「在りし日の歌」所収)
盗作だとかパクリなんて野暮は言いたくない。似てるけど内容はちょっぴり違う。私もそうだが気に入ったフレーズが詩を作ると思わずにじんでくるときもある。」と書かれている。
軍歌か詩か、いずれにせよ、パクリであることは間違いなさそうである。
<「思えば遠く来たものぞ」~中国南部に侵攻した日本軍>
また、JYOさんによれば、あきれたぼういず、後の川田義雄とミルクブラザースの「地球の上に朝が来る」も、やはり軍歌の「日の丸行進曲」の歌詞の確信犯的盗用、「浪花節だよ 人生は」は、竹腰ひろ子が歌っていた「東京流れ者」の歌詞からの盗用だそうだ。
そういえば、最近氷川きよしが歌っていた「白雲の城」は、昔三橋美智也が歌っていた「古城」と曲の感じがよく似ている。やはり、盗作だと騒がれた。但し、歌の出来は、三橋美智也の「古城」の方が数百倍良い。
<犬山城>
なぜ、こういう他人の歌、それも作詞、作曲者が明確な新しい歌ではなく、著作権が消滅、あるいは当事者が死んでしまって権利者が名乗って出てこないような歌がターゲットにされるかといえば、やはり著作権の問題があるのだろう。相手がはっきりしていると、訴えられる可能性も高いが、そうでなければ、使い得という感覚があるのである。まあ、あきれたぼういずの「地球の上に朝が来る」は、洒落であろうが、あとの例は余り潔いとはいえませんな。
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