提督の憂鬱 作:sognathus
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相変わらず第3司令部の中将は暇そうです。
~大本営海軍本部第3司令室
中将「……」
信濃「さっきから何を見てるの?」
中将「いやぁ、ちょっとね」
信濃「何それ、グラフ?」
中将「うん。まぁ」
信濃「何の数値かしら?」
中将「……」
信濃「司令?」
中将「信濃さん」
信濃「なに?」
中将「好き」
信濃「は?」ピシッ
空気が痛い、多分凍ってる。
信濃さんの顔が怖い、そんなあからさまに嫌な顔しなくてもいいのに。
中将「ごめんなさい。仕事します」
信濃「全く何を言ってるよ……」
中将「でも、ちょっとドキッとしたでしょ?」
信濃「……ドキッとさせてあげましょうか?」
中将「遠慮します。なんか信濃さんのそれ、心臓止められそうだし」
信濃「そうね。よく分ってるじゃない」
中将「……」(恋愛感情にもあの装置は働くのかな。だとしたらやはり管理し易く……か?)
トコトコ
朝日「終わりました」
中将「おうっ、ご苦労さん。じゃ、お礼に煙草でも……」
信濃「司令?」
中将「やっ、よくやったよくやった」グワングワン
中将は無造作に朝日の頭を掴むとそのまま頭を軽く揺らす様に撫でた。
振り子のように頭を振られ朝日は目をくるくると回した。
朝日「あ……んぅ……」
信濃「ちょっと、駄目よそれじゃ。加減しなさい」
中将「……はい」
朝日「……」クラクラ
信濃「大丈夫?」
朝日「ふぁ……?」
コシコシ
朝日「はい」
信濃「そう。なら、休憩に入ってもいいわよ」
朝日「分かりました。失礼します」
バタン
中将「……」
信濃「どうかしたの?」
中将「ん?」
信濃「さっきから何処となく上の空じゃない?」
中将「んー……」
信濃「そのグラフが関係あるの?」
中将「まぁね」
信濃「そう」
中将「訊かないの?」
信濃「それの事?」
中将「そう」
信濃「待つわ」
中将「そっか」
やれやれ、できた同僚が近くにいると肩身が狭く感じるから困ね。
中将「そういやさ」
信濃「ん?」
中将「ついこの前までやってた作戦」
信濃「第二次AL・MIの事?」
中将「そう。久しぶりに大きな作戦だったよね」
信濃「そうね」
中将「総帥は何か大きな動きにでも出るつもりかな」
信濃「それは判らないけど。でも、それとつい最近あった本部への奇襲は関係あるのかもね」
中将「ああ、あの時のか。いやぁ強かったねお嬢ちゃん」
信濃「そうね。あの若さで大したものだわ。敵の戦力も油断ならないものだったのに自分の艦隊だけで退けたものね」
中将「俺は何もやらなかったから申し訳なかったよ」
信濃「あんな精密な後方支援しててよく言うわよ」
中将「それはまぁ信濃さん達の力だよ。俺はただ命令してただけだし」
信濃「はいはい。そうね」
中将「でも、もし本当にこれからもっと大きな動きがあるのだとしたら」
信濃「私達の出番かしら」
中将「本部の実動部隊は実質お嬢ちゃんの第四艦隊のみと言われてるからね。俺たちが動くっていうのはそういう事なんだろうさ」
信濃「自信あるの?」
中将「ありません」
信濃「……」
中将「嘘です。多少あります」
信濃「よろしい」
中将「……まぁ、そんな事がない事を祈るけどね」
信濃「そうね」
~第4司令室
彼女「はぁ? もっと改造しろ?」
武蔵「そうだ! 前の戦い快勝したとは言え、満足のいく結果ではなかったからな」
彼女「だからもっと強くしろっての?」
武蔵「そうだ」フンス
彼女「武蔵……あなた、ただでさえ武蔵の素体で妹(複製)達よ5割増し以上の力を持っているのに、まだそれ以上必要だと言うの?」
武蔵「大和の奴だって改二の改造を受けてるじゃないか。私も受けたい!」
彼女「あれは大和だから耐えれたような改造なの。まだ大和型の実質的な上位改造の技術は完成していないのよ?」
武蔵「大和が耐えれて私も耐えれないわけないだろう!」
彼女「いいえ。これだけは言わせてもらうわ、絶対とは言わないけどやめておきなさい」
武蔵「……なんで?」ジトッ
彼女「拗ねないの。あの改造はね、本当に危険なものだったの。成功したとしても感情を失うとか副作用の可能性だって示唆されていのよ?」
武蔵「……怖くないとは言わないが、なら何故大和はその改造を受けたんだ?」
彼女「中将の為よ」
武蔵「……む」
彼女「あの人が求めたわけでもない。あれは大和自身の意思で、自分を改造の実験体としてデータを提供する提案までして行ったものだったの」
武蔵「どうしてそこまで……」
彼女「愛して欲しいからよ。第3司令部の中将は分からないけど、それ以上の提督、つまり今の海軍の体制を作った創設時のメンバーである中将、大将、元帥は何故かケッコンシステムを使った艦娘の能力の向上を計っていない」
彼女「武蔵、あなたはそれがどういう意味か解る?」
武蔵「絆……か?」
彼女「そう。中将達は何故かあなた達と強い絆を結ぶことを拒んでいるの。嫌っているわけでもない、寧ろ長い時間苦楽を共にした戦友であるにも関わらずよ?」
武蔵「それは何故だ?」
彼女「分からない。どうやら軍事機密に関わる事らしいから。その内知る事にはなると思うけど」
武蔵「……」
彼女「武蔵、あたはそんな状況でも中将の事を好きな大和の気持ち、理解できる?」
武蔵「……ああ」
彼女「そう、なら私が言っている事も分かるでしょ?私はあなたにわざわざ危険な事をして欲しくないの。だってこんなに私達はこんなに強い絆で結ばれているんだから」
武蔵「……そう、だな。悪かった」
彼女「分かってくれればいいのよ」
武蔵「なぁ」
彼女「ん?」
武蔵「今夜……」
彼女「ダメよ」
武蔵「そんなっ」ガーン
彼女「今日はちょっと遅くまでかかっても終わらせないといけない仕事があるの」
武蔵「な、なら私も手伝うぞ」
彼女「あなた事務処理全くできないでしょ」
武蔵「 」
彼女「もう補助は霧島や鳥海に頼んであるから大丈夫よ」
武蔵「わ、私は……」
彼女「あなた今日は非番じゃない。寝てれば?」
武蔵「あまりにも扱いがぞんざいだ!」ガーン
彼女「愚図らないの。暇だったら何処かに出かけてきたらいいじゃない」
武蔵「む、何処……か?」ピク
彼女「そう。何処か面白そうな所か誰かに会いにでも……」
武蔵「……」
彼女「武蔵? 聞いてる? むさ――」
シーン
彼女「あら?」
武蔵が何処に行ったのかは予想は容易だと思います。
問題はこの武蔵が問題を起こさない事を祈るだけです。