[ザ・プロジェクト]
ビッグデータで生産現場のPDCAをいかに早く回すかを考える―東レ
2017年1月10日(火)佃 均(ITジャーナリスト)
東レが日本を代表する総合化学メーカーであることは誰もが知っている。しかしITをフル活用した臨機応変・柔軟な事業運営に取り組んでいることは、意外に知られていない。「この10年はその準備。ビッグデータを使って生産現場のPDCAを少しでも早く回すことを考えてきました」と語るのは情報システム企画部長の大橋陽子氏だ。合言葉「Innovation by IT」は、まさに「業務改革はまず現場から」を意味している。その実際を取材した。
25年目の「情報システム白書」
東レの情報システム部は社内向けに「情報システム白書」を発行している。1992年から毎年発行しているもので、2005年度版から利用部署向けの本編、ITエンジニア向けの詳細編、経営トップ向けのエグゼクティブ・サマリーを作っている。今年は25年目(25冊目)の節目となる。
「2016年版のエグゼクティブ・サマリーには、付録として社外の情報システム技術の動向をまとめました。役員の方々に少しでもITに関心を持っていただく、理解していただくのがねらいです」
情報システム企画部長・大橋陽子氏は言う。最近でこそアニュアルレポートのIT版を発行する企業が増えてきたが、25年前からというのは例を見ない。
東レは、繊維製造からアパレルまで一貫する繊維メーカーとして広く知られる。一方でポリエステルフィルム、電子素材、炭素繊維でも世界トップクラス、海水淡水化システムや家庭用浄水装置など環境関連分野、多用途透析装置や手術用手袋など医療・ライフサイエンス分野でも存在感を示している。
事業が多角的に展開されると、企業ポリシーはあっても建前に終始しがちだ。ところが東レの場合、コーポレート・スローガン「Innovation by Chemistry」(化学による革新と創造)が周知徹底されている。それを受けたのが「Innovation by IT」だ。
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