2016年6月第2回定例議会総括質問(1、県都前橋創生プランと総合管理計画について 2、市役所周辺整備に係る基本方針について 3、市有資産活用基本方針について 4、公共施設等の管理における民間活力の導入について)長谷川薫議員 【2016/6/9】 2016年6月第2回定例議会総括質問(長谷川薫) 1、県都前橋創生プランと総合管理計画について ①最初に、前橋創生プランと公共施設等総合管理計画について質問します。 本市は、昨年の8月に総合管理計画を策定しております。今後40年間の市内のすべての公共施設について、人件費や光熱水道費などを除く維持修繕・改修・建替えに必要な事業費の見込み額を示しています。 国の指示通り、30年で大規模改修、60年で建替えとして計算した結果、今後40年間で5011億円かかると試算し、毎年の維持管理費用は過去5年間の実績と比較して、2.1倍の127億円かかるとし示しています。 この計画を市民が見ると、現状の公共施設を維持していくことが著しく困難だと市民は受け止めるのではないでしょうか。 私は、この計画は今後のまちづくりや住民へのサービス提供にも影響するだけに、単純に更新費用の総事業費を示すのではなく各公共施設の改修などに手当てされる国庫補助金や市債発行による償還額などを明らかにして、市の一般財源を正確に市民に示す必要があるのではないでしょうか。答弁を求めます。 【反論】 本市の公共建物の6割を占める学校や公営住宅の改修や建替えは国庫補助対象なので、必要な市の一般財源は管理計画で示した総事業費の数分の1程度ではないでしょうか。 さらに平成25年度に本市が策定した公共施設白書の161ページには大規模改修を40年、建替えを80年に延命させると、更新費は過去5年間の1.2倍程度に削減できるとの試算もされています。一般財源と市債の償還額の年度ごとの負担見込みをできるだけ正確にするとともに、最新の技術を駆使した長寿命化の努力などをきちんと示した上で再度試算して公表すべきです。 ※国は、しばしば夕張市の例を示しています。10年前に予算額の約6年分の600億円以上の借金を抱えて、事実上財政破し財政管理団体になりましたが、観光で街づくりをしようとして過剰な公共施設をつくりすぎて破たんした例外事例です。国は公共施設の整理統合の促進を求めていますが、本市も含めて地方財政が苦しくなったのは今から15年前の小泉内閣時代以降に進められた税源移譲を十分行わないまま「三位一体改革」で地方交付税を一方的に削減する地方財政計画が原因であります。したがって、公共施設の管理計画も国の言われるままの推計ではなく、市民の意見要望を十分取り入れながら、市の財政負担能力があるのかどうかを明確に判断する財政指標を示すべきです。 ②次に地方創生と公共施設の管理計画との整合性について質問します。 政府は、アベノミクスの効果が地方に波及しないことに危機感をもって、いま「地方創生」事業を強力に推進しています。政府が示す人口ビジョンや総合戦略では、全体として地方への財政支出を抑制しながら、中核市などを連携中枢都市として施策を集中しようとしています。首都圏のグローバル大企業やそのグループ企業の集積はこれまで以上に進めつつ、地方の中核的なエリアに高齢者などを移住させる政策も示しています。さらに立地適正化計画でコンパクトシティ化を進めるために公共施設の再編を求めています。 本市では、このような国の地方創生事業のメニューに沿って、前橋版CCRC構想、北関東で最大規模の4カ所目の道の駅・LRT(低床式路面電車)などの事業を推進しています。 面積や事業費の面で公共施設の総量を抑える、再編するという資産管理の基本方針を脇に置いて、国の誘導する計画に安易に手を上げないように、現在は所管部門別で行っている事業推進や公共施設の縦割り管理体制を改めて、事業選択の是非の判断や公共施設の維持管理を横断的に統括し、調整を行う、恒常的な組織体制を直ちに構築すべきです。見解を。 【反論】 道の駅や前橋版CCRC、そしてLRT構想等は、全市民に共通する切実な要望にはなっていないのではないでしょうか。市民は、市当局が十分な検討をせずに国の地域創生メニューに追随したと感じるのではないでしょうか。公共施設は増やさず総量を維持するという方針を掲げながら、国のメニューには安易に手を上げ、建設後の維持管理にかかる財政問題も十分検討しないまま事業の実施をを掲げる進めるなどの問題点を改めるためにも、総合調整機能を持つ恒常的な庁内体制を確立すべきです。 ③政府は「管理計画」にもとづく自治体の公共施設の解体撤去に対する交付税措置や地方債特例措置などの優遇制度をつくり公共施設の再編を進めています。本市も、ファシリティーマネージメントを今年から初めて3年後の2018年度には公共施設の存廃の方向性を具体的に決めようとしています。しかし、今必要なことは、公共施設の「設置目的」に立ち戻って行政と住民とが対等な立場で議論することが大事だと思います。少子高齢化社会の確実な到来を前にして、「それぞれの公共施設をどのように利活用すれば、コミュニティが活性化するか」などを住民参加で十分議論し、住民の納得のうえで方向性を決めることが大事だと思います。行政主導ではなく住民の意思を尊重して検討するための新たな協議組織を直ちに立ち上げるべきべきではないでしょうか。見解を。 【提言】 小中学校の統廃合などを見ていると、子どものよりよい教育という視点よりも教育予算の削減など財政効率を重視した動機のほうが強いと思います。もちろん各学校の適正規模適正配置・地区委員会及び合同地区委員会での協議によって統合方針が決められていますが、やはり行政側の問題点の提起に住民が誘導された側面が強いと思います。総務常任委員会が先日視察した神奈川県秦野市では、義務教育学校については地域コミュニティーの中心的な施設となっているので統廃合せずに残して、老人施設などを学校に統合して複合施設にしています。さらに本市も、30人学級制度化を前提とすれば、小規模校も適正規模になることなどは保護者などの検討も住民の協議にはそもそもなされておりません。学校も市営住宅などのも該当する地区住民との協議に限定せず、全市域のまちづくりの課題として市民参加で検討する協議組織を作るべきです。 2、 市役所周辺整備に係る基本方針について このほど発表された市役所周辺整備に係る基本方針は、「図書館は国の合同庁舎跡地に移転新築し、議会庁舎は現在の図書館の建物を生かして整備することを基本とする」となっています。市議会の特別委員会の提言を尊重した方針となっていることは理解できますが、今回の熊本地方の地震災害で宇土市などの行政庁舎が大きな被害を受けて、被災者支援や災害復旧のための拠点としての機能を発揮できなかったという事態を踏まえて、行政庁舎や公共建物の機能強化・地震対策を急ぐべきという世論が強まっています。そこで基本方針の再検討を提案させていただきます。 首都直下型の地震も近いかもしれないという状況を踏まえれば、建築後50年を経過し、耐震強度が著しく低い議会庁舎の建て替えをできる限り急ぐ必要があると考えております。最も早く建替えるとすれば、すでに更地になっている合同庁舎跡地に図書館と合築することを検討すべきではないでしょうか。現図書館は、大規模改修して市民や職員向けの憩いのスペースやレストランや喫茶店や市民ボランティア向けの事務室や本庁の行政事務スペース不足などを補う整備を提案します。基本構想の策定に着手する前に、官民共同で再度検討すべきと思います。見解を。 【提案】 図書館や議会庁舎の建設は東京オリンピック以降となれば少なくとも5年後になります。図書館完成後に旧図書館を改修して議会棟建設となればさらに遅れることとなります。財政的にも、現図書館は大規模改修程度にして、議会棟と図書館を合築すれば財政的にも節約できて、建設も早めることができると思います。地震災害に備えて、再検討を求めておきます。 3、市有資産活用基本方針について 前橋市資産活用基本方針が平成26年に5月に策定され、長寿命化の推進、保有総量の縮減、効率的利活用の推進が強調されています。2年が経過し、この間、総合運動公園の拡張、旧嶺小学校の減額貸し付けやローズタウン東地区の減額売却や旧前工跡地の貸し付けなどが具体化され、今後も、前橋駅北口の市有地の再開発や旧2中や中央小学校や天神小学校跡地の活用、日赤病院跡地活用などの検討が求められています。 個別具体的な土地や建物の方向性を決定する対象資産が次々と出てきているだけに、減額して売約したり貸す場合に、どのような判断をするかについて具体的な判断基準を明悪にすることが必要だと思います。 神奈川県の秦野市は住民参加で次のような具体的な基本方針を策定しています。 原則として、①新規の公共施設は建設しない。建設する場合は、存続予定の公共施設の同面積あるいは同コスト分を減らす。②現在ある公共施設の更新は、できる限り機能を維持する方策を講じながら圧縮する。③義務教育・子育て支援・行政事務施設は最優先して維持し、優先度の低い施設は、統廃合の対象にして、跡地は賃貸、売却によって優先する施設整備のための財源に充てる。市街化区域内の土地は売却せず、社会福祉法人などに貸し出す。④現在の公共施設は一元的なマネジメントを行ない管理するなどです。 本市においても、住民参加の推進体制を積極的に機能させて、一般方針だけではなく、新規整備や拡張の判断基準、さらには売却や貸し出しの際の減額基準なども含めてさらに踏み込んだ方針を策定すべきだと考えますが、見解を。 【反論】 不動産鑑定評価や市場取引価格の調査価格を大幅に下回る減額売却や貸し付けが増えてくると、行財政運営への市民の信頼が揺らぐ影響が出るのではないでしょうか。いま、税収納行政では、生活を脅かすほどの年間1万件の滞納整理が行われており、延滞金だけでも預貯金債権の差押えを行うなどの厳しい徴収を行っています。その一方で、旧嶺小跡地は月額賃貸借料を92万3千円を5万円に、ローズタウンE地区は8憶5700万円を3億7000万円に6割も減額する等、が続いております。もちろん、維持管理費の支出減や売却による固定資産税収入などがありますが、市民が納得できるわかりやすい資産活用方針をさらに類型化して要綱を具体化するよう求めておきます。 4、公共施設等の管理における民間活力の導入について 今、政府は、地方交付税では、新たに「トップランナー方式」として、民間委託や指定管理者制度などのアウトソーシングを全国で「先進的」に進めている自治体をモデルにして地方交付税の算定を行うとしています。地方交付税の基準需要額算定に職員の削減など「行革」努力を反映させています。同時に、政府は、公共分野を「経済成長の新たなエンジン」と位置付けて公的サービスの産業化を進めようとしています。公務公共サービスを儲けの場に誘導するために、地方交付交付税に差をつけてアウトソーシングに取り組む自治体を増やそうとすることは、地方自治に対する介入です。 この間、本市が進めてきた市立保育園・水道事業・市営住宅管理・図書館窓口業務などの民営化、民間委託、指定管理者制度導入などのアウトソーシングによって2010年には2,868人だった市の正規職員が2015年には2638人となり、5年間で230人も削減されました。 そもそも行政が住民のために行う施策は憲法や地方自治法にもとづいて、住民の福祉の向上を目的に行われるものです。利益を追求するものではありません。いま、委託先では、不安定な身分と低賃金などが原因で、専門性や継続性が保障されにくくなっています。特に保育園などでは、日常的に職員不足が深刻になっています。自治体事業の民営化はますます問題が広がり、サービスの低下を招いています。市民の安心・安全のためにも職員の削減はやめて、アウトソーシングは抑制すべきです。お答えください。 【反論】 総務省が民間委託や指定管理者制度の「モデル」として紹介している事例の中には、偽装請負で民間委託を一部直営に戻した足立区の戸籍事務、指定管理者が不適正な図書購入を行っていた佐賀県武雄市の市立図書館、委託業者が突然撤退して給食の提供が中止になった静岡県浜松市の学校給食調理業務など、重大な問題が発生しています。「トップランナー方式」や「行革」努力の基準需要額への反映は、地方交付税の目的・趣旨に違反し、地方自治に介入して「行革」を押し付け、公共サービスの低下を招くものです。国の言いなりにならず、アウトソーシングを進めないよう強く求めます。 国がやるべきことは、国民が全国のどの地域に住んでいても憲法に基づく健康で文化的な生活が営めるようにナショナルミニマムを保障し、地方自治体の財源格差を是正して、地方財政を拡充させることです。民間委託を誘導する国の言いなりにならず、地方自治体が憲法に基づき「住民の福祉の増進」(地方自治法)を図る役割を発揮するために、国に責任を持って地方財源を保障することを要求するとともに地方交付税については「三位一体改革」で大幅に減らされた額を元に戻し、地方財源格差を是正し、財源保障の機能を果たすよう、制度の拡充を図ることを求めるべきです。民間委託やPF1など、営利企業の利潤追求のために公共の場を提供するのではなく、公共サービスを支える地方財政を拡充させるために、引き続き、住民とともに国に財源の保障を国に求めるべき。
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