漆黒の英雄譚   作:焼きプリンにキャラメル水
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アインズ・ウール・ゴウンの正体

「またか・・・・・」目を覚ましたモモンの視界に広がっていたのは天井だった。見覚えがある景観でカルネ村の家であることだけは分かった。どうやらまた眠ってしまっていたようだ。

 

「大丈夫ですか?モモンさん」モモンの視界に入る様にナーベが覗き込んでくる。

 

「あぁ大丈夫だ。ナーベ」モモンは心配そうな顔をするナーベに心配をかけまいと手で制するとベッドから起き上がる。

 

 

 

 

「ふむ・・・・・初めて見たが、興味深いな。預言書(エメラルドタブレット)を触れて、過去の記憶を映像を・・いやこの場合追体験といった方が正しいのか?」何やらアインズは考え事をしていた。

 

「ご迷惑をおかけしました。アインズ殿」モモンは頭を下げる。

 

「・・あぁ、気にするな。それよりも・・・話してもらっていいか?預言書(エメラルドタブレット)を通して何を見たか」

 

「えぇ・・・えーと」(どこから話せばいいのだろうか?最初から?そてとも今回のことか?)

 

「?・・あぁ。今回の一件だけでいい。君が最初に触れた時の記憶の話はミータッチから連絡を受けているのでな」

 

「分かりました。それでは・・・」

 

モモンはアインズに全てを話すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)』、『人間種と亜人種の差別と争い』、『人工神人計画』・・そして『スルシャーナの暴走』と『エリュエンティウ』か」

 

「随分と情報量が多いですね。気になったのですが預言書(エメラルドタブレット)は『預言書』であるはずなのに、何故『過去の記憶』を映し出すのでしょうか?」

 

「ふむ・・・私にも分からない。これについては詳しく調べてみよう」(最初の一枚には『過去と未来を繋ぎ、永遠を造る者』と書かれていた。そこから続く文章から察するに『預言者』とは・・)

 

 

 

 

 

 

「感謝致します。しかしこの預言書は一体何を伝えたいんでしょうか?」

 

「記憶に過去、まるで・・・・・・・・・」

 

「アインズ殿?何か思い当たるものがあるのですか?」

 

「あぁ。多くの者は眠っている間に『夢』を見るそうではないか。それに近いと思ってな」

 

「『夢』?」(その言い方だとまるでアインズ殿は夢を見ない・・・睡眠を取らないように聞こえるが・・)

 

「あぁ。君が見たものは『眠っている誰か』の『夢』かもしれない」

 

「だとするならその者は600年は生きていたことになりますね」

 

「あぁ。その点は間違いないだろう。問題はその『夢』を見ている者がどのような者かだ」

 

「『六大神』、『スレイン法国』についてよく知る人物・・・これだけで考えた場合、危険な存在である可能性もあるが・・」

 

「その答えもこの石板を集めていけばいずれは分かるのでしょうか?」

 

「恐らくはそうだろう」

 

 

 

 

 

預言書(エメラルドタブレット)が『真実の歴史書』だとするなら・・・まだ『続き』があるはずだ」

 

「スルシャーナのその後ですか・・・」

 

「・・あぁ。彼のその後、スレイン法国では『放逐』あるいは『殺害』されたと伝えられているが・・」

 

「実際はスルシャーナ自身がスレイン法国を見限った・・・これが本当に真実なのでしょうか?」

 

「・・・分からない。だがそれも石板を集めていけば分かるだろう」

 

「その言い方だと他にも預言書(エメラルドタブレット)があるのですか?」

 

「あぁ。私が解読した限りでは最低でも七つはある様だ」

 

「七つ?・・残り五つは一体どこに?」

 

「場所は分からない。だが石板にはこう書かれている」

 

 

 

 

 

究極の門を求める者よ

虹の橋を渡り究極の門に進め

砕かれた「虹の欠片」を集めよ

さすれば究極の門への道は現れるであろう

 

 

 

 

 

 

「?今回は短いですね」

 

「あぁ。理由は分からんが今回は半分ほどの預言しか書かれていない」

 

「ですが『虹の欠片』とは恐らく預言書(エメラルドタブレット)のことですね。そして『虹』とは七色で構成されてるはずですね」

 

「あぁ。だから私とミータッチは預言書(エメラルドタブレット)は七つあるだろうと推測を立てた」

 

モモンとアインズの議論は終わった。少しの間の沈黙が流れた。

 

「モモン・・」沈黙の中で口を開いたのはアインズだった。

 

「どうかしましたか?アインズ殿」

 

「お前やナーベには言っておかねばな」

 

「?」

 

「今まで隠してきてすまないな」そう言ってアインズは鉄のガントレットを装備した左手で仮面を外した。そこから現れた姿は・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

骸骨だった。

 

 

「「アンデッド!!!???」」

 

一瞬スルシャーナと見間違える。しかしよく見ると容姿も雰囲気も全く異なっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モモンとナーベは驚きのあまり言葉を失う。

 

そんな二人を見ながらアインズはガントレットを外した。そこから現れたのは骨の手であった。

 

「言葉を失う程・・驚いたか?」

 

「・・・人間離れした方・・・人間ではないと思ってはいましたが、まさかアンデッドだとは・・」

 

「フハハハハ、そうかそこに驚いてくれるか。少しだけ嬉しいぞ」愉快に笑うアインズにモモンはただただ戸惑うだけだった。

 

「えっ、何故ですか?」

 

「陽光聖典の奴らは私の素顔を見た途端『スルシャーナ様、我々を導き下され』などと言い出したからな。奴らは自分たちの神と私の見分けもつかなかったからな。流石にあの反応は・・・不快だったな」そう言って言葉に怒気を込めるアインズにモモンは戸惑った。

 

(こうして話してみれば分かるが・・・アンデッドのイメージとは全く異なるな。アンデッドは基本的に生者を憎むと聞くことが多かったが・・アインズ殿が例外なのだろうか?)

 

 

 

 

 

「さて・・・もういいだろう」

 

「?」何がいいのかモモンにはまるで分からなかった。

 

「コキュートス、姿を現してくれ」

 

「ハッ。畏マリマシタ」

 

モモンとナーベの耳に初めて聞く声があった。アインズが何やら何もない空間に手をかざして「解除」と唱えるとライトブルーな昆虫と人を足した様な存在がモモンたちの前に現れる。腕は六本あり、それぞれに武器を持っていた。

 

「モモン、ナーベ、紹介しよう。私の直属の部下『守護者(しゅごしゃ)』のコキュートスだ」

 

「初メテ会ウナ。モモントナーベ、ダガアインズ様カラ話ハ聞イテイルゾ」コキュートスの声は音の塊を無理やり言葉にした様な声だった。

 

「初めましてだな。コキュートス殿」

 

「初めましてですね。コキュートス殿」

 

「アァ・・・宜シク頼ム」

 

 

 

 

 

「アインズ殿、一つお聞かせ下さい」アインズに尋ねたのはナーベであった。

 

「どうした?」

 

「コキュートス殿を紹介するのは分かりますが、何故魔法で姿を隠されていらっしゃったのですか?」

 

「・・あぁ。簡単な話だ。君たち二人に私が正体を見せた際に『敵』と見なして攻撃すれば、コキュートスに君たちの首を刎ねさせるためだ」

 

「!!?」この時二人は同じことを思った。『随分あっさりと凄いことを言ってくれる方だ』と。

 

「成程・・確かにコキュートス殿なら私たち二人の首を刎ねるのは簡単でしょう」モモンはコキュートスの強さを気配で察知した。かなり強い。戦えば間違いなく負けると言える。

 

「私の最も信頼する部下の一人だからな。当然だ」

 

「ソウ言ッテ頂キ光栄デゴザイマス」

 

 

 

二人のやり取りを眺めていた二人に目線を向けるとコキュートスが口を開いた。

 

「モモン、ナーベヨ。勘違イスルデナイ。アインズ様ハオマエタチ二人信用シテイタ。今回私ヲ護衛ヲシテイルノハ私ト同ジ『守護者』ノ一人ガソウ提案シタカラダ」

 

「守護者は他にもいらっしゃるのですか?」ナーベがそう尋ねてコキュートスが答えようとした時であった。

 

「アウラ殿やマーレ殿ももしや守護者ですか?」モモンはアインズにそう尋ねた。

 

「あぁ。コキュートス、アウラ、マーレ・・・他にも守護者はいる。今回コキュートスを護衛にと提案したのは他の守護者だ。」

 

「応えて頂きありがとうございます。アインズ殿」(となると最低でも倍の人数はいると考えるべきか・・・守護者は六人という所か)

 

「さてと・・コキュートス、先に行っててくれ」

 

「ハッ。ソレデハ後ホド」

 

「あぁ。<転移門(ゲート)>」そう言ってアインズが唱えると空間に渦の様なものが現れる。そこにコキュートスが入っていく。

 

(アレは10位階魔法の<転移門(ゲート)>か。効果は確か距離関係なく成功率100%の転移魔法)

 

 

 

 

 

「さてと今から話すことは大事なことだ。よく考えた上で答えてほしい」

 

「何でしょうか?」

 

「私は『国』を造る」

 

「えっ!?」モモンとナーベはそれを聞いて驚く。話のスケールとテンポが自分たちでは追いつけない。

 

「モモン、ナーベ。私はな『種族』による戦争や差別など下らないと考えている」

 

「・・・・」(同感です)

 

「ゆえに異業種、亜人種、人間種、全ての種族が平穏に暮らせるそんな理想郷を築こうと思っている。無論私や私の配下たちの元でだが」

 

「・・・・」(ギルメン村の様な・・・そんな素晴らしい国か)

 

 

「私は平穏と静寂を愛している。しかし誰もが差別しあい争い傷つけあう・・・・悲しいことだ」

 

「・・・・」

 

 

「少し前に私はリ・エスティーゼ王国にカルネ村の個人所有を認めさせた。分かってはいると思うが君たちがいるこの村のことだ。次に先日私たちはビーストマンに襲撃されて窮地の竜王国に協力することを約束し、領土と引き換えにビーストマンを殲滅することを約束した。そして既に国単位の数年間分の食料を供給できる状況まで作り上げた。私には優秀な部下が大勢いてね。後は私がビーストマンを殲滅すれば『魔導国(まどうこく)』いや『アインズ・ウール。ゴウン魔導国(まどうこく)』の誕生だ」

 

「そこまでのことを」口を開いていたのはナーベだ。モモンはその様子を見てアインズに尋ねた。

 

「何故それを私たちに?アインズ殿」

 

「決まっているだろう、モモン、ナーベ。国には優秀な人材はが欲しい。つまり私の部下になり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちと共に『アインズ・ウール・ゴウン魔導国』を『建国』しないか?」

 

 

 

 


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