複数の関係者によれば、始球式を終えた直後の鈴木さんは通路で「鈴木奈々をよろしくお願いします!」と意気揚々と自己PRしていたという。しかも「ボールが(捕手に)届かなかったので、家に帰って旦那さんとの愛のキャッチボールで、もう1回リベンジをしたいです」などとのろけながらコメントし、結果として遅延行為につながったことには反省の色をまったく見せなかった。
どちらかと言えば〝天然キャラ〟として定着しているだけに本人としても、そのイメージを貫こうと必死のアピールをした結果が、もしかするとあのような茶番劇につながってしまったのかもしれない。ただ、それは見当違いも甚だしく余りにも1人の大人として自覚が足りなさ過ぎる。プロ野球、いやプロスポーツ全体をも冒涜していると言わざるを得ないだろう。
前出の球団関係者は自責の念にもかられながら、次のように続ける。
「鈴木さん側には『KY』『炎上』というワードが自らのセールスポイントと考えているフシがあるが、世に中にはやっていいことと悪いことがある。しかし、まさか真剣勝負の場であのような行為を起こすとは想像もできなかった。今回の一件はネット上でダチョウ倶楽部さんや柳沢慎吾さんの過去の始球式が比較対象にされているが、あの方々のケースはすべて『お約束』でちゃんとシナリオ通り。両軍ベンチにも通達済みで尺が延びることは一切なく、試合開始が遅れることも当然ない。そういう意味でも鈴木さん側はさすがに最低限の分別ぐらい、わきまえていると思っていたが…」
日本球界の始球式を見直す時期に来ているのではないか
今回の騒動ぼっ発は、球界全体に大きな波紋を呼び起こしている。「日本球界の始球式を見直す時期に来ているのではないか」という問題提起にもつながり始めているからだ。
セ・リーグの主力野手は鈴木さんの始球式での遅延行為について「他人事とは思えない」と口にし、このように述べている。
「最近、始球式でタレントの人たちがたくさん投げているでしょう。正直に言って、そこで〝ヘンな投球〟をされると迷惑ですよ。普通に投げてくれるならば何の問題もない。でもワケの分からないことをされれば、これから自分たち選手は『さあ、やるぞ』という気持ちになっている時なのに一気に冷めてしまう。切り替えが難しくなりますね。だから、出来る事ならばマウンドに上がらないでほしいです」
確かに近年、日本プロ野球界での始球式にはタレントやモデル、俳優や、コメディアン、ミュージシャンらが起用されるケースが非常に増えている、同じ始球式でも格式の高い米国のメジャーリーグとは違い、NPB(日本野球機構)独自のショーアップされたイベントとして定着しているのが現状だ。その裏側ではスポンサーはもちろん、テレビ局の〝番宣〟によって始球式のキャスティングが決められているパターンも多い。
「あまりにもショーマンシップが強過ぎる始球式に関して見直さなければいけないタイミングに来ていることは確か。NPBとしても今季『3時間10分以内』の試合時間の短縮を目指しているように『時短』は最大のテーマ。確かに始球式は試合時間にカウントされないが、今回のように間延びすればそれだけ終了時間も遅れるということ。ファン離れにつながる危険性も出てくるし、看過する訳にはいかない」とNPB関係者も今回の騒動を受け、目を光らせ始めている。
今後、日本プロ野球界全体が人選面も含め始球式のイベントそのものをもう一度、再考する必要性がありそうだ。
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