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(なつ)じいちゃんに何も感じてもらえんかったら私の負けだから。(泰樹)ん?
(雪次郎)勝農演劇部!(一同)そ~れ~!
私が この芝居 見したいのはじいちゃんだけだから。
(一同)ペチカ様!
そして 川では オショロコマがたくさん取れるでしょう。
それを分け合って川下の村と仲よくなって下さい。
そして 平和に暮らして下さい。
(雪次郎)待ってくれ!
なつたちの表現が泰樹さんの心に響きました。
わしは 決めた。(拍手)
泰樹さんは 早速組合員に 団結を呼びかけたのです。
十勝の酪農は新たな一歩を踏み出しました。
(門倉)次!
♪~
こうしてなつたちの演劇は終わったのです。
(門倉)次!
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
♪~
(雪次郎)したけど もったいねえな大作だったのにな。
(天陽)背景だけ 取っておいたってしょうがないべ。
何日もかけて描き上げたのに消えちゃうんだね。
それは みんなの舞台も おんなじだべさ。
そだね。
じゃあ 2年生 来年 頼んだぞ。
勝農演劇部は 地区大会で負けました。
誰も 口にはしなかったけどあの歌が 敗因ではないかと思います。
♪「みのる稲穂に富士と鳩」
♪「エフ エフ ジェイ エフ エフ ジェイ」
俺たちは 試合に負けて勝負に勝ったんだよな?
(良子)え? あんたが それ言うのかい?
おい 奥原!えっ?
俺は… この舞台が成功したら言うべと思ってたんだ。
何さ?
言っていいか?どうぞ。
奥原!
言うぞ。
どうぞ。
卒業したら 俺の… 嫁になってくれ!
♪~
答えは もちろん 今すぐじゃなくていい。
いつか… そのうち… 気が向いたら…。
ごめんなさい。 それは できない。
(良子)即答だったね。
番長… 舞台は 決して成功してねえべよ。
うん…。
そだな… それじゃ しかたない。
よし 分かった!
今のは きっぱり忘れてくれや!
うん 男らしい。
よし! ハッ… 忘れた!
ハハハハハ…。
あ~! あ~!
番長!
追わないのが 思いやりだわ。
ごめんね 番長…。
だけど びっくりした~。
私もです。
私も きっぱり忘れます。
なつ! 私の嫁になってくれ~!
よっちゃん やめてよ!
番長 かわいそうだべ。(笑い声)
ちょっと…。
8月に入り なつたちは夏場の牧場には欠かせない草刈りをしました。
3日続けて晴れる日をねらい刈った草を乾燥させて干し草を作るのです。
それを分けてもらうため天陽君の家族も手伝いました。
♪~
(富士子 なつ)お帰んなさい。(照男)腹減った~。
ご苦労さんです。
お邪魔します。(悠吉)お~ いい匂いだ。
さあさあ 入って…。おっ これ 照男君の好物でねえか?
あっ トマト?おむすび… トマト? トマトか…。
・(一同)頂きま~す。
(おなかが鳴る音)
(夕見子)う~ん…。
♪~
もう! 私も ごはん呼んで!
勉強中 悪いべや。(菊介)食ったら眠くなっぞ。
何だ この野郎。ハハハ…。
おう…。(富士子)はい。
(タミ)はい。
はい。
はいよ。はい。
干し草にするのって大変なことなんだねえ。
お天気まで読んで。
じいちゃんは 天気を読むのが名人だから。
牛飼いにとって 草刈りは大事だも。
(タミ)そだね。
なっちゃん これ。
なしたの?なっちゃんに あげるわ。
えっ?うちは 柴田さんには何も お返しなんてできないからせめて なっちゃんに。
いいよ そんなの!
困るよね? じいちゃん。うん…。
いや そでない。
別に うちが無理して買ったわけじゃない。
東京の兄ちゃんから送られてきた。陽平さんから?
うん。そうなの。なっちゃんにって。
ふ~ん… 本当にいいの?
いいんだよ。
♪~
なつは… 絵を描きたかったのか?
うん…天陽君みたいに うまくはないけど。
舞台で見たしょ? 天陽君の絵。ああ。
私も 絵を描くことは好きなんだわ。
天陽君みたいに 絵で 自由に何かを表現できたらどんなにいいだろうって思うさ。
うれしい…!
ハハハ…。
♪~
おい なつ。何? じいちゃん。
言ってもいいか?
えっ… じいちゃんまで…?
どうぞ。
お前を 天陽とは一緒にさせられん言ったら どうする?
えっ?
何なの? 突然。
天陽が うちの婿になるんなら別だが…。
なつには 将来わしの牧場を継いでもらいたい。
うちには 照男兄ちゃんいるし…。
照男だけでは支えきれん。
いずれ バター工場も造りたいしな。
バターか…。
それが嫌なら はっきり言ってほしい。
お前の意思を 無視する気はない。
無理強いはせん。
急に そんなこと言われても…。
じいちゃん 私と天陽君はそんな仲じゃないから。
そうか。
それなら 安心した。
♪~
私 北大を目指すことにしたから。
(剛男)ほく… 北大って北海道大学のことか!?
ほかにあるの? 北大って。
大学行って 何するのさ?
大学は 勉強するとこでしょや。
女の子が 大学に行って どうするのさ?
はあ?まあ 北大は もともと農業学校だしな。
農業とは関係ないさ。
私が目指すのは文学部だし。
文学って… 十勝に帰ったら国語の先生にでもなるのかい?
母さん 視野が狭すぎるよ。
どうするかなんて学んでから考えることだべさ。
いや 考えてるうちに年取っちゃうよ。
年取ったっていいじゃない 別に。
4年も 大学に行ってたらいい縁談だって少なくなるかもしれないんだから 女は。
つまんない!
母さんが そんなに つまんない人だと思わなかったわ!
えっ?おい 夕見子。
母さんは お前のためを思ってつまんないことを言ってんだ。
つまんないの?あ… いや…。
母さんは つまんないことをつまんないと自覚できないんだわ。
それは 結局この町でしか生きてないからね。
私は 努力してこの町から出ていきたいの。
何になるとかじゃなくて自由になるために。
ここには 自由がないって言うのかい?
もっと 広い世界を見たいってことよ。
いいしょや。ここには なつだって いるんだから。
土地に縛るのは なつだけにしてよね。
えっ?夕見子。
(明美)あれっ?なつ姉ちゃん どこ行った?
えっ?なつ姉ちゃんに お客さんが来てるわ。
(信哉)初めまして。佐々岡信哉と申します。
あっ はい…。佐々岡信哉さん?
もしかして…。東京から参りました。
東京…?
こちらに なつさんという方がお世話になっていないでしょうか?
どした?
♪~
なつよ のんびり絵を描いてる時では ないかもよ。