『生きるための選択』(パク・ヨンミ著、満園真木訳、辰巳出版)
北朝鮮で父親が生きるために密貿易を行い、銅に手を出し国内にいることができなくなり、時間をおいて家族全員で脱北した女性の物語。苦難の行軍の時代、配給制は崩壊し、生きるために人々は密貿易、賄賂の授受などに手を染めなくてはならなくなった。著者の父は商売の才覚があったが、それは国家に認められた才能ではなかった。最後は銅の密貿易がばれ、国家犯罪者となり、投獄される。身の危険を感じた家族は姉が先に、次いで主人公と母親が脱北する。しかし、人の足元を見る中国人は彼女たちの貞操を奪い、ある意味奴隷以下の扱いをする。そんな中、ホンウェイという不思議なブローカーの人間臭さは、少し救いなのかも知れない。ホンウェイの活躍もあり、一旦別れた母と主人公は再会し、キリスト教会の援助もあって中国からモンゴルに逃れ、韓国に渡る。韓国では自由に戸惑いと苦しみを感じながらも、北朝鮮の非人道、反人権の状況を世界に知らしめるために法律、語学の勉強に打ち込み、今や世界で最も有名な脱北者である。
北朝鮮国内にいた頃、餓死者がいても「おいら基本的に他人のことはどうでもいいの」(by 李信恵)という態度だった著者が、自由を得てから他者のために生きることを選ぶ後半は感動的である。
北朝鮮の悲惨な人権状況は、拉致被害者や帰国者運動で渡った9万3千人の配偶者の問題の背景にある。この本が広く読まれ、世論が高まることを願う。
では、以下思いつくまま。
・「鳥やネズミが聞いている」。北朝鮮には自由がないことを象徴する言葉。
・金日成が火病で死んだことを夫の親戚(中国から来た)から聞き、「酷いデマだ」と友人に言っただけで党の幹部に尋問される母親。
・そもそもはしらす干しなどの密売を開始した父親。この商売はおめこぼしされていたようだ。
・一九九五年の大洪水で北朝鮮経済は壊滅。国家は危機を無視することで応じる。なお、公設市場(チャンダマン)を容認。商売仇が増えた父は平壌の金属を扱うことにする。これは危険なことだった。母は最初反対したが、協力するようになる。
・金正日は三年間で千五百冊の本を書き、天気を自在に操ると学校で教えられる。テレビは金一族への崇拝のためにある。
・夢に金正日が出てきて、抱きしめてくれて飴をくれたらしい。一番幸せな記憶、と。チャン・ジンソンはそれを「感性独裁」という。
・十大原則――第一条:偉大な首領・金正日同志の革命思想によって全社会を一色化するために身を捧げて闘わなくてはならない――など。これが初等の学校教育である。教科書はアメリカ兵が朝鮮の市民を殺す絵や朝鮮の子どもたちが槍や銃剣で成敗するような絵。算数もプロパガンダ。「あなたがアメリカ野郎をひとり殺し、あなたの同志がふたり殺したら、アメリカ野郎の死体はいくつになりますか」。
・「アメリカ人」と言うと「敵に甘すぎる」と非難される。「ヤンキーの悪魔」など。
・チャンダマンで資本主義化は進む。また、闇の品物は夜取引される。ばれたら見せしめで処刑される。
・飢えから牛を殺して食べた若者が、国家の財産を毀損したとして公開処刑された。人の生命は動物よりも軽い。見せしめの処刑は他にも、海外のビデオ鑑賞などでも。人々は警察の気配がしたら機械ごとビデオデッキを取り換えた。逆に言えば、多くの人がビデオデッキ二台所有できる程度には豊かになった時代があった。
・チャンネル固定は有名だが、中国国境付近では封印を解く人も多い。中国のCMで外側の豊かさを知る人も多い。
・筆者はおじの家でシンデレラや007を見ていた。人生を変えたのはディカプリオのタイタニック。指導者を崇めるプロパガンダでない映画、愛のために死のうとする映画。北朝鮮では考えられないこと。
・でも「二重思考」で他国をうらやむことはないと信じつつ、海外の人々の生活に憧れるという矛盾が両立する。北朝鮮人は自分自身にさえも嘘をつく名人。飢えたコッチェビを見て「おかしい」と思いつつも見なかったことにする。見ると辛いからだ。
・北朝鮮では結核が多い。
・著者の家が豊かな時代、スーパーマリオブラザーズをしていたとのこと。
・北朝鮮社会は粗野で暴力的で、暴力を制する法律がないらしい。また、何においても男性のほうが上とされる。DVも当たり前。「横」がない国だからなあ。
・北朝鮮の人の夢は「平壌を一度でも見ること」。著者は八歳で叶える。バス、地下鉄、ソーダ、塵一つない道、ネオン、柳京ホテル。そして「金正日と同じ空気を吸っていると思うだけで、誇らしく特別な気分になれた」。
・平壌ではラジオのスイッチを切ることは許されず、朝は鳴り響く国家で目をさます。
・銅の密売が発覚した著者の父は労働教養所に送られる。母親は尋問される。親戚による扱いも変わる。母親は腕時計などの商売をし、家を空けざるを得なくなる。著者らは学校に行けなくなる。建前とは違い、金がないと北朝鮮の学校へは通えないのだ。酷い貧乏生活で、ナイアシン欠乏による赤い発疹が出る。春が怖い。餓死の季節。トンボなどを捕まえて食べる。
・病院には薬もない。闇市で手配するしかないが、田舎では大変。医者は自家製の伝統薬を作っているようだ。ガーゼ用の綿花の栽培も。そして使いまわし。
・でも著者はいとこを頼って移り住んだ田舎の松南里の素朴な暮らしに懐かしさを感じる。祖母が話した朝鮮王朝時代の暮らしと感じたようだ。
・母子で住むために移り住んだ高原は分け合う美風が生きていた。が、共産主義国家独特の「自己批判」の時間は猛烈だった。国への忠誠心も強かった。
・北朝鮮では子供達は国家の労働力の一部。集団農場で働く。鼠の巣穴には食料がある。
・ウサギは皮と肉を得るために飼う。学期ごとに五枚学校に納める必要があった。学校の責任者はチャンダマンで売る。
・著者は十一歳で柿を市場で売る仕事を始める。そこで自分で考えることを始める。
・母は賄賂と親戚のコネのおかげで本来の住所(恵山)と違うところに住んでいたが、賄賂が滞るようになり高原の警察に目をつけられる。そんなころ(二〇〇五年)、父が戻ってくる。病気療養の名目と、刑務所長をだまして出てきた。
・母は出頭し、労働鍛錬隊(強制労働施設)に入る。囚人に食料はまともに与えられないので、姉妹は弁当を作って持っていく。
・父母は警察の監視を緩めるために二〇〇六年四月に離婚する。とはいえ、恵山で一緒に住む。
・父は刑務所に入れられるとき、公民証を破棄されてしまっていた。「囚人は人間以下」ということで。これで行動が制限され、商売が出来ない。そこで母親が商売を引き継ぐ。
・恵山の友人たちは韓国を含む外国のビデオを見ていた。中国からのDVDである。チャンダマン世代と呼ばれる。
・そして、異性を意識するようになる。初恋の相手はチュウグンという医師志望のエリートの若者。
・列車が来なくなり、商売が出来なくなる。
・貧乏が再び押し寄せる。中国にもう逃げるしかないと家族は相談する。中国人が豊かなのはみんな知っていた。
・女性が中国に逃げても、政府はそれほど腹を立てないし、普通は親戚が罰せられることもない。男はそうはいかない。
・チュングンは「八年待ってくれたら結婚する」と言った。が、著者は脱北で心が決まったようだ。チュングンは著者が手術の時も見舞った。
・病院の中庭は死体置き場。こんな国とは早くおさらばしなければならないと著者は意志を固める。
・川の氷が融ける前に脱北しなくてはならない。姉は一足先に脱北する。
・著者と母もブローカーと接触して脱北。ブローカーは姉に会えると信じ込ませるために嘘をつく。「北朝鮮人はみんな同じ地域に住んでいるから、お姉さんともそこで会えるはずよ」
・町の外まで誘導されたら、若い男が誘導する。「川を渡ったら本当の歳を言うな、親子であることも言うな」と言う。中国に渡ると服を交換する。
・著者の身代わりに母はブローカーにレイプされる。その後、車に乗って国境を離れる。国境の向こう側は、父の住む団地が見えるくらいに近い。なお、ブローカーは女性を売る前にかならずレイプする。
・「中国にとどまりたいなら、売られて結婚しなきゃいけないのよ」とブローカーの妻に著者は言われる。
・飢えている人は食欲に勝てない(涙)。
・脱北者の男は奴隷状況、女性は売られた花嫁。中国は国権を人権の上に置く共産主義国家。
・今の中国は地方でも物が溢れている。筆者は売られたころ、水洗トイレを知らなかったり、要は文明の利器を十分に知らなかった。
・「売られる花嫁」とは言うが、無理強いはしない。恐らく無理強いすると逃げるからだろう。
・ブローカーのホンウェイは著者を何度もレイプしようとするが、著者は必死で抵抗。
・脱北者に騙されて売り飛ばされようとしたが、ホンウェイが助ける。ホンウェイは人間臭いね。
・結局、著者はホンウェイに体を開くことになる。「心が体から離れる」と俗にレイプについて言われるが、それを綴っている。
・ともあれ、その後、著者はホンウェイから取引を申しだされ、ホンウェイの仕事を手伝う。脱北者の教育係だ。条件は母の買い戻し。そして、そうなる。
・ホンウェイは朝陽の西の農村で生まれ、朝陽にやってきてギャングの仲間となり、才覚を発揮してのし上がった人物。有能だと思う。で、彼は父を探すために中国製の携帯電話の密輸をするブローカーを雇う。
・著者は父と電話が出来た。父は弱っていた。脱北を勧める。本当に脱北するまでに時間を要した。
・著者は売春婦として売ってくれ、とホンウェイに頼んだら、ホンウェイは平手打ちをして止めた。やっぱり人間臭い。
・脱北者が韓国に行こうとすると、北朝鮮に送還されたら処刑される。
・著者の父は二〇〇七年の一〇月に脱北するが、ホンウェイがショックを受けるほど衰弱していた。高い金を使って脱北させ、その後働かせようというホンウェイの目論見は崩れた。そして、姉を除く著者一家は再会する。
・著者の脱北後、チュングンが家を訪ねてきたが、父は何も答えるわけにいかなかったのは悲しい。
・著者の父は末期の大腸がんであった。父は北朝鮮で死にたいというが、それは出来ない話だった。
・二〇〇八年のオリンピックに向けて締め付けが厳しくなる。ホンウェイは商売がしにくくなり、いらだちを強める。
・「朝鮮では、人が目を閉じられずに死ぬときは、この世でまだやり残したことがあるからだと言われる。」(P203)
・灰と骨は羊山鎮という小さな町の山の頂上に埋めた。
・北朝鮮には避妊はない。
・ホンウェイは荒れ、母は足手まといが嫌だから自分を売ってくれと娘に言う。著者は働き口を他に求め、偽造身分証を求めることからホワンという冷酷な人間と出会い、連れていかれる。ホンウェイは「戦争だ」とホワンに怒り、著者を取り戻す。(話はちょっとややこしいので略)
・ホンウェイは父の亡霊に悩まされる。著者と母はホンウェイのところを離れようと決心し、瀋陽に行く。そして、アダルトチャットの仕事をする。そのうち脱北者のミョンオクの下でその仕事をする。同時に6,7人相手にするほどの売れっ子になる。
・こんな生活がずっと続くと思っていた頃、母がヘスンという女性と出会い、「韓国へ行けば、脱北者は国民として迎いいれられ、仕事も住むところも世話してもらえる」と教えられる。その為には青島のキリスト教の宣教会に行かなくてはならない。いわゆるモンゴルルートである。
・青島への旅費は足りなかったが、アダルトチャットの客がわざわざ瀋陽まで来て与えてくれた。孤独で親切な人。
・青島では聖書の勉強。「神さまを金日成、イエスさまを金正日だと思えば、わかりやすいわよ」。讃美歌や福音書の内容に心を奪われる。
・牧師にアダルトチャットのことを懺悔すると、牧師はイザヤ書の一節を読み上げる。「論じあおうではないか、と主は言われる」のところ。
・モンゴルへの出発の前にホンウェイに電話した。砂漠で死んでもホンウェイだけは覚えてくれているように。また、父や自分がホンウェイを許せるように祈って。
・国境への宣教会で働く漢族の男性が付き添う。鉄道、そしてバス。エレンホトに到着、夜を待って徒歩。引率は国境そばまで。明かりはモンゴル側のほうが明るいらしい。懐中電灯と地図とコンパスがあるが、最後は北斗七星。懐中電灯を使うと中国に見つかる恐れがある。コンパスを懐中電灯で照らす間、回りを全員が囲む。
・国境では時折サーチライトが光る。恐怖。孤独。金正日への憎しみ。
・凍えそうになった時、国境の塀に気づく。有刺鉄線にひっかかるが、母が外すのを手伝い、越える。父の誕生日の夜明けに脱北成功。
・モンゴルの兵士は中国へ帰れと言う。著者らは戻るくらいならここで死ぬと言う。そして「わかった。ソウルへ行こう」と兵士が言う。
・一週間以上の取り調べ後、ウランバートルへ。二十人以上の脱北者がいて、一部が出ていったあとに何人かが入ってくる。モンゴルと韓国の間に秘密の協定があるようだった。
・モンゴルルートは国際情勢により危険になったので、東南アジアルートがメインとなったようだ。
・青島の宣教会は直後閉鎖され、案内人は刑務所へ。これが自称「人権大国」の実態である。
・二〇〇九年四月二十日、韓国の職員が偽名パスポートを渡し、空港へ。空港では朝鮮語を話すなと言われる。飛行機では悪酔い。到着時は国家情報院の職員たちが案内。著者はまばゆい照明に照らされた真っ白な広い通路、動く歩道などに驚いたようだ。最新式の水洗トイレを見て「落ちこぼれの気分を味わった」。検尿コップが綺麗で、「そんな目的で使いたくない。」
・著者らは難民センター?へ。スパイ排除施設でもあるので、色々と厳重。
・尋問の間、ディスカバリー・チャネルを見、はじめてカレーを食べる。
・「タトゥーはあるか」という尋問は「売春はしていたか」ということらしい。
・ここの職員は脱北者を犯罪者とみているようだ。
・その後、定着支援施設(ハナ院)へ。ここは競争の激しいデジタル化された現代韓国で生活するための「ブートキャンプ」。南北統一後、巨大なハナ院が必要になると著者は言う。
・北朝鮮の嘘、特に朝鮮戦争開戦に至る嘘を克服するのには時間を要したようだ。
・著者にとって、暴力行為が違法行為であるという社会のルールは驚きだった。中国や北朝鮮ではそんな法律はないとのこと。(だが、実はある。社会に定着していないということだろう。)
・自己紹介が一番大変。北朝鮮では国や政権を喜ばせるためだけに人民はいるので、そういう習慣はなかった。「北朝鮮に〝私”はない」(p259)
・韓国の過度の競争社会の実相を習い、絶望する。「自由がこんなに残酷で大変なものだとは知らなかった」。(実は、これが理由で北朝鮮に戻る人もいる。)
・著者は脱北する瞬間の悪夢を見る。PTSDである。「過去の苦しみと将来への不安」(P263)
・2009年の韓国への脱北者は2914人。
・定着支援金は母と著者で五年で約2万5千ドル。平均所帯の年収を5年で。ソウルに住みより支援金の多い牙山に著者らは住むこととする。脱北者は世間知らずなので、政府は一度には振り込まない。(詐欺師やブローカーから守るため)家賃は政府が支援。
・韓国では果物が安いとのこと。北朝鮮では贅沢品。
・脱北者に冷たい韓国人は多そうだ。最初に入ったネットカフェでは「外国人お断り」、入学した中学の校長は将来退学すると予想する、同級生は「あの子ってスパイか何かなの」。
・著者は引きこもっていたが、反骨心で勉強し、医者を目指す。「民主的な社会では、努力すれば報われる」とハナ院で聞いた言葉を信じて。
・脱北者向けのキリスト教系の学校に著者は入学し、大学進学を目指す。「勉強マシン」と呼ばれる。その頃、母は中国のブローカーに連絡して姉のウンミを探そうとしたが消息は不明。母はパスポートを得て中国に入国、姉の消息はやはり分からなかったが、父の遺品や写真を持って帰る。
・その後著者は牙山に戻り、「本のほうが食べ物より大事」という生活を送る。それは北朝鮮に関することの脱洗脳のようにも小生には感じる。特にオーウェルの『動物農場』は転機となる。
・母に家で本ばかり読んでいたら体に悪いと言われ、別の学校に著者は入り、二〇一一年四月に高校の学歴認定試験に合格する。
・そんな頃、母はDV男に引っ掛かる。その顛末を見て、著者は警察の仕事を決意する。警察行政については東国(ドングック)大学が良いらしい。
・成績の良い脱北者には学費の心配はないようだ。が、合格のためには噂の厳しい試験ではなく、面接を乗り越える必要がある。そこで強い意志を示し、合格する。
・バイトや入学準備で忙しい中、姉を探すためにも脱北者のインタビューのTVに出ないかと持ち掛けられる。悩んだ末、出ることにする。
・大学入学後は知識を吸収。「図書館に住んでいた」。インターネットもある。プレゼンでは苦労したようだ。
・北朝鮮を客観的に見る授業は「難しい」ようだ。食糧難以前には毎日一人あたり700グラムの食事があったこと、金日成が一六〇万人も処刑や粛清したこと。
・<いま会いにゆきます>というCATVの新番組に出てほしいと言われる。脱北者によるバラエティー番組である。脱北者の人間臭さを表に出し、暗くてつまらないというイメージを変えようという意図の番組。最初は拒否していたが、姉のことを考え、顔バレのリスクを考えても出演を決意する。「特権階級出身」ということに脚色されたW
・共演者たちは著者より悲惨な境遇から脱北し、金政権を糾弾する。「かつて私が神のようにあがめた金一族は犯罪者だった。犯罪者は罰を受けなければならない」(P291)
・大学での著者は体育についていけず、法執行の分野に進むことは諦めるが法律の勉強は続ける。そのためには、韓国では英語の勉強が必要。TVの出演料をあててフィリピンへ。
・二〇一三年の夏、著者はTV出演も大学も休むことにする。母はDV男と縁が切れた。アメリカに五カ月のボランティア活動をする。んで、コスタリカへ。スペイン語が必要となる。そこで初めて他人のために祈る。人を思いやる気持ちがあることを知る。「私の傷は癒えはじめていた」(P298)
・アメリカのホームレスに話すことで話の持つ力に気づく。「誰にも砂漠はある。(中略)誰もが人生の目的を見つけて自由になるためには、その砂漠を越えなければならない」(P300)
・アメリカの感謝祭の数日前、母から電話があり姉が見つかったという連絡が入る。国家情報センターにいる、と。姉と短い電話をした後、飛行機を乗り継いで帰宅。
・姉は自力で東南アジアルートで脱北していた。
・二〇一四年、大学卒業を目指す。渡米で英語力は格段にアップしたが、アメリカ訛り、八〇年代のスラングが身についたようだ。二月、北朝鮮についてのスピーチを英語でするように誘われ、実施。その頃、国連で三百人の証言者による北朝鮮の人権侵害の実態をまとめた報告書が出される。そんな状況で、英語が出来る脱北者という、北朝鮮人民の代弁者が世界的に必要となる。
・そして一〇月、世界的に有名となる演説をダブリンで行う。それから一か月後から、この本を書き始める。
・それから数カ月、北朝鮮が著者を監視していることを示す動画がYOUTIBEにアップされる。<汚物の山にはえた毒キノコ>と。後は北朝鮮お定まりの嘘にまみれたプロパガンダ。
・幼馴染のヨンジャも脱北。最後はチュングンも自由になるとの願い、そして祖国統一(但し自由朝鮮として)の願い。

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