声無しアイドルを担当していて、中間発表までずっと粛々と担当に票を投じ続けていた。
中間発表以降は夢見りあむに投じている。
担当はTOP10入りはおろか、属性別の最終順位にも、中間発表にも入ったことのない声無しのアイドルだ。
下手するとデレステしかしたことのない人には名前すら認識されていないかもしれない。それでも好きなので、黙々と票を投じていた。
ここまで来ると総選挙なんて単なる自己満足だった。自分だけでも彼女に票を入れないといけないような気がして、ランクインするかどうかなんて考えないようにして、ただ票を入れていた。
ダイマをした年もあったが結果は何も変わらなかった。なにか大きな波が来ない限り担当は日の目を見られないだろう。
総選挙がステ合同になってますます声付きのアイドルが強くなっていく風潮を感じながら、それでも投票行為は辞められず漫然とポチポチし続ける日々。
運営には不満だらけだった。ボイスと曲を最初から手にした新アイドルの実装。いつまで経っても来ない担当のSSR。だんだんしょぼくなる衣装、進化しないMV、挙句の果てにはモバの方にステのSSRを使い回すといったことまで始まった。
今後に一切の期待が持てなくなった時、目に入ったのが夢見りあむ中間3位の速報。
笑った。まさかここまで上位にくい込むとは思わなかった。
正直、夢見りあむのことが嫌いだった。ネット上にいそうなサブカルメンヘラ女子の悪い所を煮詰めたような彼女はシンデレラガールズという世界にふさわしくないとすら思った。
けれどなんだかんだ彼女は必死だ。自分の承認欲求を満たすという浅ましさを隠そうともせず取り繕わず、アイドルをやろうとしている。
担当になるまではないにしろ、まあそこまで悪いやつじゃなさそうだ。少なくとも声もなければSSRもないし。
実はそれが一番重要だった。運営からの推され方が、あの4人とは違う。要は私にとってあの4人の方がよっぽど夢見りあむより許せなかった。彼女たちは最初から、私が担当に与えてあげたくても絶対に与えられないものを持っていた。
正直あの4人がいなければ夢見りあむのことは許せないままだっただろう。
けれどもう私は許してしまったし、夢見りあむは中間3位の座を勝ち取った。
おおよそアイドルらしからぬアイドルである。まだバックボーンも十分でない。エピソードもない。見た目と設定だけの産まれたばかりのアイドル。
そんな彼女が1位になったらどうだろうか。なんにも持たない、運営に推されもしていない、そんな彼女が1位になってしまったら。
結局、いいエピソードがもらえたり出番が多かったりと、運営の匙加減ひとつで人気は決まる。
プロデューサーがいくらダイマに精を出したところでたかが知れている。夢見りあむはそれを別方向から証明したと言えないだろうか。まだ彼女にはダイマするための材料なんてほんの僅かしかない。
プロデューサーであるお前の頑張りが足りないから、お前の担当アイドルは7年間も声がつかないんだと、そう言われることにもう疲れた。
夢見りあむにシンデレラガールになってほしい。総選挙丸ごと茶番にして欲しい。
あの上位の子達の中で、シンデレラガールになることで、総選挙自体に大きくヒビを入れられるのは夢見りあむだけだろう。
私は彼女を神輿に使っている。シンデレラガールになったら運営に持て余されて雑な扱いをされて1年後には忘れ去られてしまうかもしれない。
それでもいい。彼女がこのコンテンツで長く息づいていくことを望んでいるプロデューサーが一体どれだけいるだろう。きっとそこまでいない。彼女はまだ産まれたばかりだから。
そしてガラスの靴に価値を見出すことなく粉々にして、シンデレラガールなんてチョロいって笑ってくれ。
そのために票という薪をくべる。
夢見りあむには悪いけど、こんな私の感情すら飲み込んでしまう素体の強さがあるのだしいいかと思っている。