日本人資産家、スペースXで月へ 民間人として初
起業家イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発会社スペースXは17日、同社が計画する月の周回旅行について、民間人として初めて月へ向かう人物を発表した。日本の通販サイト「ゾゾタウン」の前澤友作氏(42)だ。
前澤氏は同日、「月に行くことにしました」とツイートした。
前澤氏は、マスク氏が2016年に発表した発射システム「ビッグ・ファルコン・ロケット」(BFR)で打ち上げられるとみられている。
月旅行は2023年に予定されており、実現すれば1972年に米航空宇宙局(NASA)のアポロ17号が月面着陸して以来の、人類の月訪問となる。
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ただし、必要なロケットはまだ建造されていないため、マスク氏は「飛行を実現できるか、まだ100%確実ではない」と述べた。
発表にあたってマスク氏は、「発表前に(前澤氏と)一緒にいる」と写真をツイートした。
スペースXは、この月旅行が「宇宙旅行を夢見る普通の人にとっても可能になる重要な一歩」を象徴すると述べた。
マスク氏は前もって、乗客は日本人だとほのめかすツイートをしていた。
前澤氏は昨年、ニューヨークのオークションで故ジャン=ミシェル・バスキアの絵画を1億1050万ドル(約123億円)で落札して話題となった。
熱心な芸術愛好家の前澤氏は17日、2023年にスペースXのロケットで宇宙飛行に飛び立つ際には、世界的な画家や音楽家、映画作家などアーティスト6〜8人を招きたいと計画を明らかにした。
前澤氏は記者会見で、同行したアーティストには地球帰還後、作品を作ってもらうつもりだと話した。
これまで月を訪れた人はわずか24人で、全員が米国人。月面に着陸したのは12人。アポロ計画の一部は、月面着陸せずに周回にしたにとどまった。前澤氏の月面旅行も周回のみの予定だ。
前澤氏は、「アーティストたちと月に行くことにしました」とツイートした。
マスク氏は2017年、有料で乗客2人を月の周回に送り出すと発表しており、早ければ今年打ち上げの予定にだった。
スペースXは当時、最大積載量が大きいロケット、ファルコン・ヘビーと、既存の宇宙船ドラゴンの有人型を使う方針を示していた。。
しかしマスク氏は今年2月、スペースXは将来的な有人ミッションに向けてBFRに専念するとの意向を明らかにしていた。
BFRはまだ飛行したことはないが、マスク氏は技術的な詳細を公表している。ロケットは高さ118メートル、直径9メートルになるとみられている。
これに対して、ファルコン・ヘビーは高さ70メートルで、ロケット中央の機体(センター・コア)は2基のブースター(直径3.66メートル)を備えている。
マスク氏は17日、BFRと月の周回旅行で乗客を乗せる宇宙船のイメージ図を複数公開した。
後方の大型フィン(安定板)3枚や、宇宙船上部の黒い遮熱材など、宇宙船の設計にいくつか変更が加えられた様子が確認できる。
BFRは最終的には、アポロ宇宙船を打ち上げたサターンV型ロケットの最大積載量より重い150トンもの重量を地球低軌道に打ち上げられるようになるはずだ。
スペースX創始者のマスク氏はこのところ、好ましくない話題でニュースになっている。先日も、米国人コメディアンとインターネット・テレビに出演した際、番組中に大麻を吸い(カリフォルニア州では合法)、話題になったばかりだ。
また8月には、テスラの株式を非公開化したいとしたマスク氏のツイートを受け、同社株価は大幅に値を下げた。2週間後、マスク氏は発言を撤回している。
マスク氏はさらに17日には、英国人ダイバーから名誉毀損で訴えられた。提訴したのはバーノン・アンズワース氏で、7月に豪雨で浸水したタイの洞窟からサッカー少年ら13人を救出する活動に協力した人物だ。マスク氏は、アンズワース氏が児童虐待をしていると繰り返し主張していた。アンズワース氏はマスク氏に対し、賠償金7万5000ドル(約840万円)と、これ以上の言い掛かりをつけないよう求めている。
(英語記事 Elon Musk unveils first tourist for SpaceX 'Moon loop')