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 冷戦時代からの後ろ盾に歩み寄っても、いまの孤立から抜け出せるわけではない。非核化の行動でしか道は開けない。

 北朝鮮金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長がきのう、ロシア極東のウラジオストクでプーチン大統領と初めて会談した。

 指導者に就いて7年半。中国へは昨年から幾度も訪問していたが、もう一つの友邦ロシアへはこれが初訪問だった。

 やっと実現したのは、物別れに終わった2月の米朝首脳会談が影響している。核の放棄なしには制裁も解かないとするトランプ米大統領の主張に、金氏は頭を悩ませている。

 米国相手に手詰まり感が強まるなかで、ロシアとの関係を誇示し、目先の状況を変えたいと考えたのだろう。

 しかし実際には外交的な演出の域を出ず、北朝鮮が望むような効果は期待できまい。核放棄への具体的な行動がない限り、国連安保理は制裁を緩める合意はできないからだ。

 北朝鮮はすでに開発した核弾頭や施設を保持したままとされる。プーチン氏は会談後、米ロともに朝鮮半島の完全な非核化を求めていると言明。「核の脅威を低減させることは私たち共通の優先課題だ」とした。

 ならば、ロシアもそのための責任ある対応をとるべきだ。

 ロシアは昨年秋の安保理で、事実上の制裁の緩和を呼びかけた。プーチン氏は、北朝鮮の核開発について理解を示すかのような発言をしたこともある。

 今回の会談を通じ、北朝鮮に一定の影響力があることを国内外に示したいようだが、北朝鮮の核は地域の安定を乱し、ロシアの利益にもならない。

 度重なる北朝鮮の核・ミサイル実験への対応として、国際社会は厳しい制裁を科した。その結束があったからこそ、金正恩氏をいまの対話外交に導き出した流れを忘れてはならない。

 ロ朝首脳会談がおこなわれたことにより、かつての6者協議参加国の中で金正恩氏とトップ会談ができていないのは日本の安倍首相だけとなった。

 日本政府も複数のルートを使い、首脳会談の開催を議題に含めた接触を試みているが、北朝鮮側の反応は乏しい。

 「最大限の圧力」に固執した一方、米国が対話に転じると、ただちに追随する。そんな日和見的な姿勢を見透かされている側面は否めない。

 焦らず、かつ、機会を逃さず、日本も直接対話に臨む道を探らねばならない。米国だけでなく、6月のG20首脳会合に向けて、中国、ロシア、韓国との接触の機会も増えるだけに、北朝鮮問題での日本の主体的な取り組みを強めるべきだ。

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