「東映まんがまつり」29年ぶり復活の意外な背景

映像配信の進化がオムニバス作品の需要生む

30年近く間が空いてしまった「東映まんがまつり」だが、「本当の子ども向けの映画を、映画館という空間で、子どもたちみんなで楽しんでいただきたい」との思いから復活したという。

ドラゴンボールシリーズなど、多くのアニメ作品を手掛けた森下孝三東映アニメーション会長にとって「東映まんがまつり」は特別な思い入れがある (撮影:梅谷秀司)

東映アニメーションの森下孝三会長は、その復活の背景として、子どもたちが映画を観る視聴環境の変化があると指摘する。

「僕の孫なんかも、動画配信でアニメなどを観ているが、すぐに飽きてしまい、次の動画を探し始めてしまう。ましてや90分や100分の長編を子どもに見せるのはなかなか難しい。

そこで昔のことを思い出した。バリエーション豊かな作品をそろえて、子どもたちに選んで観てもらうようにしたらどうかと。ちょうど『おしりたんてい』という人気の作品も出てきた。30年近くたって、考え方が昔に戻ったような気がします」(森下会長)

動画配信世代には長編よりバリエーション

東映アニメーションは、1948(昭和23)年に日本動画株式会社として設立。1956年(昭和31)年に、映画会社の東映株式会社が買収し、東映動画株式会社へ商号変更したという歴史がある。

「東映アニメーションができたのは、戦争に負けてすぐのこと。まわりは焼け野原で、食べ物がなかった時代。だからこそ、子どもたちにアニメーションで夢を与えようという思想があるんだと思います」(森下会長)

『月刊コロコロコミック』で連載中の『爆釣バーハンター』も映画に ©2019東映まんがまつり製作委員会 ©鈴木サバ缶/小学館・爆釣団・テレビ東京

ディズニーアニメなどに比べると予算の少ない日本のアニメだが、アニメーターが描くセル画の枚数を極力減らしたり、使い回したり、といった創意工夫によって、大量生産が可能になった。そして動きが少ないからこそキャラクター性が重要になってきた、という側面もある。「キャラクターを生かすことこそ東映イズム」と森下会長が語るとおり、東映アニメは人気キャラクターの宝庫であるため、このようなオムニバス上映会も成立するというわけだ。

ビデオデッキが家庭に普及したのは1980年代半ばあたりのことであったが、それ以前の1960年代や1970年代などは、テレビで放送される番組も、再放送がなければなかなか見返す機会がなかった。それゆえに、映画館で人気の作品が上映されるということは、子どもたちが大好きなキャラクターと再びスクリーンで会える貴重な機会でもあった。

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  • NO NAME1b6cdeed7684
    「動画配信世代には長編よりバリエーション」
    配信世代は好きな動画を好きな時に見れるから好まれる。興味がない映像を見せられるのは修行に近いと思います。
    評価されるオムニバス映画は必ずテーマがあります。そのテーマに引かれて人が見るのだと思います。
    up2
    down0
    2019/4/28 10:36
  • NO NAMEf1b8972a744c
    「ヤマザキ春のパン祭り」と「花王ヘアケア祭り」とならぶ日本裏三大祭りの一つだったこの祭りにはぜひ復活してもらいたい気はするのだが、このロングテールの時代には難しいのではないかと。
    up1
    down0
    2019/4/28 07:08
  • NO NAMEd616569e6c12
    某週刊少年誌作品が無いのは時代の変化でしょうが、前知識が無くても問題ない作品が大多数を占めているなという印象です。
    劇場に行っても「なんとなく楽しく」見続けることができるラインナップと言うものを意識しているのだなと感じますし、
    何よりオタク受けしないコンテンツを意識していないことが東映側の「狙い」を浮き彫りにしています。
    ここにプリキュア、ワンピースなどが入ってくると親御さんが安心して連れてこられなくなりますしね。
    総じて、後年ファンの語り草にはならないしイノベーションは起こせないものの、「狙い通りによくまとまった企画」という評価に落ち着くことでしょう。
    up0
    down0
    2019/4/28 15:57
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