「いてまえの血」が煮えたぎっていた。突然、打線がつながった4回。表のヒーローがビシエドなら、裏のヒーローは村上打撃コーチだと思っている。
「ぶつけといて『肘を出しただろ』みたいな感じだったんで、それは違うだろと」。先頭の平田に死球を与えた西は、当たりにきたと言いたかったのだろう。審判に向け、アピールした。その瞬間に村上コーチの湯は沸点に達していた。「自分自身に怒ったというか・・・」と取り繕おうとはしたものの、テレビ画面に映った姿はとてもそうは見えなかった。
「(テレビに)抜かれてたらしいですね。周りに言われました。まあ、そういう態度を取っていたし(直前の攻撃でも西は)打席を外してヘラヘラしてましたから。なめられっぱなしでいいのかってことですね」
4回の攻撃前に円陣を組んだ。以前に書いたが円陣招集は5回では遅い。3イニング完全。二回り目に入るところで動いた。「(就任から)初めてかな。気合を入れたのは」。西には前回(14日、7イニング2得点)もやられている。シュートとスライダーを両サイドに散らすのが西の真骨頂だ。
「コーナーだから見るのか、コーナーだけど振るのか。考えるんじゃなく、打者が仕掛ける。ああいう投手は気持ちよく投げさせちゃダメ。振らないと」。円陣で打者に発破を掛けた直後の死球と西の態度に我慢できず・・・。豪快なチームカラーの近鉄で、奔放に振った村上コーチの気迫が、あるいはひょうひょうとした西に狂いを生じさせたのかもしれない。
「生きるか死ぬかの覚悟をもって戦うということです。中日はおとなしい選手が多いから」。死球から3連打。野村、大瀬良、西と攻められ続けた内角球を、ビシエドがついに打ち砕いた。逆転してももう一度満塁をつくり、試合の流れを一変させた。村上コーチの思いが、しっかりと選手に伝わったということだ。