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 東京電力が、福島第一原発3号機の使用済み燃料プールにある核燃料の取り出しを始めた。

 8年前の事故でメルトダウンした1~3号機には、溶け落ちた燃料デブリがいまも炉心に残る。これとは別に、それぞれの建屋内の燃料プールには、多数の燃料が保管されたままだ。

 再び大きな地震や津波に襲われた場合、プールの設備が壊れる恐れがある。燃料を安全なプールに移して事故を防ぐことは、廃炉全体を円滑に進めるうえで重要なステップだ。

 メルトダウンがなかった4号機では、2014年末に1535体の燃料の移動を終えた。人が現場に立ち入れたため、通常と同様に作業ができた。

 対照的に、3号機のプール周辺は放射線量が高く、500メートルほど離れたところから遠隔操作で機器を操らねばならない。水中で燃料を容器に入れ、クレーンで地上におろして敷地内の安全なプールに移す。モニターを見ながらの難しい作業で、慎重に進める必要がある。

 当初、3号機の燃料の取り出しは、14年末に始める予定だった。がれきの撤去や除染に手間取ったほか、機器の不具合やトラブルもあって繰り返し延期され、4年以上も遅れての作業開始である。

 東電は、3号機のプールにある566体の燃料すべてを、20年度内に移し終えることにしている。

 地震や津波の際のリスクを小さくするには、速やかに移動させることが望ましい。しかし、急ぐあまりにトラブルを起こすようでは困る。日程ばかりを優先してはならない。

 3号機での経験は、23年度にも始まる1号機と2号機の燃料取り出しに生かされる。

 1号機はがれきの散乱がひどく、2号機は建屋内の放射線量が高い。より難しい場面も想定されており、3号機でしっかりとノウハウを得ることが欠かせない。東電は関連メーカーなどとの情報共有を密にして、着実に作業を進めてもらいたい。

 一方、移し終えた燃料をどうするのかは決まっていない。増え続ける汚染水と並び、すぐには結論を出せない難問である。

 21年には、1~3号機のいずれかで、溶け落ちた燃料デブリを取り出すという困難な作業が始まる。

 安倍首相は5年半ぶりに福島第一原発を訪れ、廃炉汚染水の対策について、「国が前面に立って取り組んでいく」と述べた。その言葉通り、政府がしっかり主導してもらいたい。

 地元との対話に努め、地元の理解を得ながら廃炉を進めていく。それが政府と東電に課せられた責務である。

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